産業保健師向け
2022年7月7日 更新 / 2021年10月28日 公開

【後半】現役産業医が考える優秀な産業看護職とは?

【後半】現役産業医が考える優秀な産業看護職とは?

株式会社iCAREの代表取締役CEO兼 現役産業医としても活動中の山田洋太が『現役産業医が考える優秀な産業看護職とは?』をテーマに対談を行いました。後半は「学ぶべき業務遂行スキル」「産業看護職の今後の展望」をテーマに語ります。

業務遂行スキルを高めて自らの価値を最大化

山田さん
山田さん
私は業務遂行スキルは自らの価値を最大化して、実績/成果を残すために必ず求められるものだと考えています。iCAREの皆にも思うことですが、業務遂行スキルを磨くことを怠ってほしくない。例えば、以下に挙げた業務遂行スキルを磨いてほしいです。

①PCスキル
・タイピングスピード、ショートカットキー
・Microsoft Office、Googleドキュメント、Googleスプレッドシート、Googleスライド

②システムスキル
・e-mail、SNS、slackなどのチャット、ZOOMやTeamsなどの会議ツール
・各システムの連携

③マネジメントスキル
・PDCAサイクルを回して業務フローの見直し:時間の意識
・5人のマネジメント:交渉・進捗

PCスキルを高めて生産性を高める

さんぽむら
さんぽむら
ではまず「PCスキル」についてからお願いします。
山田さん
山田さん
パソコンのタイピングスピードや、ショートカットキーは磨けば磨くほど自身の業務を遂行するスピードが速くなります。皆さん、お仕事でパソコンを使う方が非常に多いかと思います。PCスキルが高まって30分かかってた仕事が10分で終わるようになればそれだけ生産性が高まります。
さんぽむら
さんぽむら
iCAREでは四半期に一回、タイピングスピードのテストがありますよね。
山田さん
山田さん
やっぱりタイピングスピードって無視できないですよね。「北斗の拳」のタイピング練習とかやればいいのにと思います。
さんぽむら
さんぽむら
わずかな時間でも練習すると効果は大きいですよね。iCAREではテキストでカウンセリングしているので、タイピングスピードが上がれば上がるほど業務効率が高まるのでよく分かります。
山田さん
山田さん
「e-typing」で自身をテストしてみるのもいいでしょうね。
さんぽむら
さんぽむら
ショートカットキーも覚えれば覚えるほど仕事を終らせる時間が早くなりますよね。
山田さん
山田さん
やっぱり何かコピーする時は「Ctrl+C(MacはCommand+C)」でサクサクやっていきたいですよね。
さんぽむら
さんぽむら
特にOfficeのExcelや、Googleドキュメントを使う時はショートカットキーは必要不可欠ですしね。
山田さん
山田さん
確かに!後はOfficeのExcelや、Googleドキュメントの関数をある程度は使えた方がいいです。AVERAGEとか、MAX/MINとかVLOOKUP、COUNTIFとか。凄くマニアックな関数は別に覚える必要ないです。
さんぽむら
さんぽむら
この記事を見ているの方々の中に「そんな事が求められる場面に出くわさないもん」って思われる方がいらっしゃったら?
山田さん
山田さん
健診とか、ストレスチェックなどの様々なデータを活用してみることですね。
これらのデータを「ちょっと関数組んでみて分析してみていいですか?」って触らせてもらう。これで何か発見できたら人事/総務にフィードバックすると良い関係が作れます。

システムスキルを高めて時代に適応する

さんぽむら
さんぽむら
続いて「システムスキル」についてお願いします。
山田さん
山田さん
二つ目はe-mail、SNS、slackなどのチャット、ZOOMやTeamsなどの会議ツールなどのシステムを使いこなすスキルです。これらを使いこなすことはリモートワークが増えた近年、強く求められるようになりましたよね。
さんぽむら
さんぽむら
10〜20年前の産業看護職の方だと、そんなに求められなかったですよね。それこそofficeとか使えればよかったくらい。
山田さん
山田さん
「苦手=欠点」になっちゃいますよね。例えばオンライン会議が始まってるのにZOOMの設定ができなくて参加に遅れるとか。これ、めちゃくちゃ恥ずかしい。ビジネスパーソンだったらありえないですよね。
さんぽむら
さんぽむら
クライアントや従業員さんにあまり良い印象を持たれないですよね。
山田さん
山田さん
後はシステム同士の連携で時短を図ることも凄く大事ですね。今って情報量が溢れていますよね。
さんぽむら
さんぽむら
メールやら、カレンダーやら、Slackやら、社内イントラネットとか。情報が矢継ぎ早に届きますよね。
山田さん
山田さん
情報量が溢れているからこそほしい情報を効率よく拾い上げて、適切に拡散/共有できるようにすることが凄く大事な時代ですよね。私はSlackに全部連携して、情報がすぐに届くようにしています。
さんぽむら
さんぽむら
連携できることを知らなかったら、全てチェックしに行かなきゃいけなくなりますよね。この時間は節約したい。
山田さん
山田さん
効率よくチェックできる体制にしておかないと見落としも発生しますからね。
さんぽむら
さんぽむら
それは書類見てなかったというのと一緒ですもんね。連携させる時、最初は怖くてビビるけど10〜20秒くらいポチポチすればできますよね。
山田さん
山田さん
でしょ〜。でもビビってしまう気持ちはよくわかります。私だって怖かったもん(笑)。
さんぽむら
さんぽむら
でもやってみるとすごい便利なんです。
山田さん
山田さん
「PCスキル」と「システムスキル」は必ずやってほしいですね。業務遂行能力の基礎の部分に当たります。

マネジメントスキルを高めてプロジェクトを前に進める

山田さん
山田さん
最後の「マネジメントスキル」ですね。優秀な産業看護職になるためにはこのマネジメントスキルが求められます。
さんぽむら
さんぽむら
プロジェクトマネージャーを務める時に重要ですよね。
山田さん
山田さん
「PCスキル」と「システムスキル」はパソコンを触っていれば何となく分かるでしょう。ただ「マネジメントスキル」はしっかりと勉強しなくてはならないでしょう。業務フローを見直すためのPDCAサイクルについての参考書を読んだり。
さんぽむら
さんぽむら
色々な参考書が販売されていますよね。
山田さん
山田さん
そういったものを購入して学習してください。例えプロジェクトを立ち上げた場合、必ず納期が存在します。納期から逆算して、優先して改善するべき点を洗い出すにはPDCAサイクルをしっかりと出来る必要があります。他にも進捗を管理するためにはKPIの設定も大事ですしね。
さんぽむら
さんぽむら
KPI = 重要業績評価指標。目標を達成するためのバロメーターですね。
山田さん
山田さん
もしも社内で休職者をへらすプロジェクトを行う際に、◯◯人って設定しますよね。KPIを設定してプロジェクトの進捗を管理する必要があります。これらはマネジメントスキルの一例ですが、参考書は沢山、販売されているのでしっかりと学んでください。

交渉スキルを高める

さんぽむら
さんぽむら
プロジェクトマネージャーを務める際には交渉も必要になりますよね。
山田さん
山田さん
産業看護職が交渉する上で「人事/総務」「産業医」「管理監督者」「従業員」「ベンダー」の5人が想定されます。これらはそれぞれ交渉方法がちょっとだけ異なります。
さんぽむら
さんぽむら
まず、それぞれが役割が違いますよね。
山田さん
山田さん
その通りです。それぞれの立場、仕事での役割、どのような価値を生み出しているのかを頭に入れる必要があります。交渉の際にもそれぞれに適した話し方ができる必要があります。
さんぽむら
さんぽむら
伝えた方もマネジメントスキルの一つですね。
山田さん
山田さん
彼らは進捗の追い方もそれぞれ、微妙に異なります。それらを踏まえた上でPDCAサイクルを回せていくことができると最高です!
さんぽむら
さんぽむら
ビギナーはまず、それぞれの役割とかを勉強するところから始まりそうですね。
山田さん
山田さん
私は次の順番に理解を深めていって進めてほしいです。

①人事/総務とのマネジメント
②産業医とのマネジメント
③管理監督者とのマネジメント
④従業員とのマネジメント
⑤ベンダーとのマネジメント

「企業人事/総務」の方々が健康管理の責任を負っています。なので産業看護職は彼らの方向性や、役割を1番目に把握しなくては仕事が始まりません。
さんぽむら
さんぽむら
確かに…!
山田さん
山田さん
2番目は産業看護職とタッグを組むことが多い「産業医」。彼らと良好な関係を築くことは凄く重要ですね。
さんぽむら
さんぽむら
属性も近いですしね。
山田さん
山田さん
3番目はやっぱり「管理監督者」。上長から信頼されると業務を円滑に進行することができます。
さんぽむら
さんぽむら
4番目の従業員は直ぐに想像できるかと思いますが、5番目の「ベンダー」はどのような属性の方でしょうか?
山田さん
山田さん
んーiCAREとか(笑)他には健診機関とか。
さんぽむら
さんぽむら
こう考えると把握するべき範囲は広いですね…!
山田さん
山田さん
確かに広いですよね。ベテランは関係性の把握が本当に上手なんですよね。ビギナーのは方はこれら5つを分けて、意識したほうがいいでしょうね。優秀な産業看護職って関わる人達とうまくコミュニケーションを取って、上手に教育していくのですよ。
さんぽむら
さんぽむら
おおおお!!そこまで行くんですね!
山田さん
山田さん
仕事を前に進めるためには周囲との連携は必要不可欠ですからね。知識がなければ色々な取り組みができないから、そのための知識を植え付けてあげることも大事です。
ただ産業看護職が周囲に知識を共有して、企業価値を高めていくのは年間計画が必要になります。1〜2ヶ月で完了する話ではありません。
さんぽむら
さんぽむら
計画を前に進めていく力も求められますよね。
山田さん
山田さん
すぐに成果がでるものではないから中々、周囲に理解をしてもらえないですが。
でもねプロジェクトを経験された方なら分かると思いますが、自分が企画したもので組織が大きく動くと満塁ホームラン!!って嬉しくなりますよ(笑)。
さんぽむら
さんぽむら
数字が目に見えて変わっていくんですよね。

産業看護職の可能性は無限大

さんぽむら
さんぽむら
結構、いい時間になってきましたね…!それではそろそろ締めを。
山田さん
山田さん
本記事を読まれている産業看護職の皆様に最後に伝えたいことは、「産業看護職の可能性は無限大」ということです。

仕事が生み出す価値、そしてやりがいも無限大です。我々、専門職は「こうあるべきだ」「こうしなきゃいけない」って先入観がどうしてもに頭インプットされ続けてきたかもしれません。でも時代のニーズは常に変化しているから、それを満たすためにも殻を打ち破ってほしいです。
さんぽむら
さんぽむら
求めれるスキルも時代と共に変化していきますしね。
山田さん
山田さん
皆様に産業看護職という仕事を楽しんでほしいと思っています。だって産業看護職って時代と共に変化していってますよね?クライアントごとに期待される役割が違うのだから、型にはまってない。
さんぽむら
さんぽむら
色々な事を自由にできる余白がありますよね。
山田さん
山田さん
だからこそ、どんどん試してほしい!クライアントから寄せられる期待を超えることを常に意識して仕事に取り組めば無限大の可能性が出てきますよ。そのためにも業務遂行スキルを高めてください。
さんぽむら
さんぽむら
今日はお話ありがとうございました。またよろしくお願いします。

執筆・監修

  • 山田 洋太
    このテーマを話した人
    山田 洋太
    金沢大学医学部卒業後、2008年久米島で離島医療に従事。
    2010年慶應義塾大学MBA入学。2011年株式会社iCAREを設立。2012年経営企画室室長として病院再建に携わり、病院の黒字化に成功。
    2017年厚生労働省の検討会にて産業医の立場から提言。2018年より同省委員として従事。
  • さんぽむら
    この記事を書いた人
    さんぽむら
    さんぽむらは、「産業看護職の価値を高める」コミュニティ。
    スキルアップやキャリアにまつわるお役立ち情報を発信しています。