ストレスチェック後の面接指導(面談)とは?流れや内容を解説

「ストレスチェック後の面接指導は産業医に任せても大丈夫?」
「人事担当として、ストレスチェック後の面接指導は何をするべき?」
こんな不安はありませんか?
面接指導は企業と人事担当者、産業医が連携しておこなわなければならないもの。産業医に任せっぱなしでは改善できず、従業員の負担を軽減できない恐れがあります。
そこで本記事では、ストレスチェック後の面接指導の内容や、面接指導までの流れを解説します。
ストレスチェック後の面接指導で何をすべきか悩んでいる人事担当者の方は、ぜひ最後までご一読ください。
なお、ストレスチェックは実施するだけではなく、改善することで本来の効果を得られます。下記の資料では、従業員のメンタル不調との向き合い方や、ストレスチェックの活用方法を紹介しています。1次予防から3次予防まで網羅しているので、ぜひダウンロードの上ご活用ください。
前提:人事担当者はストレスチェックを産業医に任せていいのか
結論から言うと、ストレスチェックを産業医にすべて任せることはできません。なぜなら、ストレスチェック実施者である産業医は、高ストレス者に具体的な就業措置を言い渡せる権利を持っていないからです。
企業には従業員の安全に配慮する義務があり、健康に働ける状態か把握・管理する必要があります。つまり、就業判定の措置を指示するのはあくまでも企業の人事担当者なのです。
人事担当者は産業医に任せきりにせず、一丸となって従業員の健康状態を改善する必要があります。
なお、下記の記事でストレスチェック制度の目的や義務を紹介しています。詳しく知りたい人事担当者の方は、ぜひご一読ください。
ストレスチェック後の面接指導とは
ストレスチェック後の面接指導とは、「高ストレス者と判断された従業員」と「産業医」による面談のことです。「ストレスチェック指針」によると、高ストレス者は面接指導を受けることが望ましいとされています。
面接指導は、ストレスチェックの結果、高ストレス者として選定され、面接指導を受ける必要があると実施者が認めた労働者に対して、医師が面接を行い、ストレスその他の心身及び勤務の状況等を確認することにより、当該労働者のメンタルヘルス不調のリスクを評価し、本人に指導を行うとともに、必要に応じて、事業者による適切な措置につなげるためのものである。このため、面接指導を受ける必要があると認められた労働者は、できるだけ申出を行い、医師による面接指導を受けることが望ましい
ストレスチェック指針
なお、高ストレス者とは「○点以上の人」のように具体的な数値で決められないケースもあり、事業場内の上位10%程度の従業員を高ストレス者と判定するのが一般的です。
また、ストレスチェックを実施する際は、下記の役割を決める必要があります。
- ストレスチェック担当者(メンタルヘルス推進担当者など)
- ストレスチェック実施者(医師、保健師など)
- ストレスチェック実施実務従事者(事務職員など)
原則としてストレスチェック実施者は、「企業が選任している産業医」が務めます。
ストレスチェック後の面接指導の内容
ストレスチェック後の面接指導は「従業員のストレス状態を把握し、本人に指導すること」が目的です。
このときに大切なのが、一過性の指導にならないことです。従業員に自分のストレス状況を理解させ、今後もメンタルヘルス上の問題が起きたときは、産業医に相談しようと思わせる関係性を築く必要があります。
そのため、面接指導ではストレスチェックの結果に加えて、下記を確認しましょう。
- 従業員の勤務状況
- 従業員の心理的な負担の状況
- 従業員の心身の状況(イライラ感、疲労感、不安感など)
過去に受けたストレスチェックや健康診断の結果から、ストレスの要因となりうる業務や役割の変化を見つけ出します。
また、面接指導をスムーズに進められるように、あらかじめ従業員の「労働時間」や「業務内容」などを実施者と共有しておくことも大切です。
【人事担当者向け】ストレスチェック後の面接指導までの流れ
ストレスチェック後の面接指導をおこなうまでの流れは、下記のとおりです。
- ストレスチェックの結果を確認する
- 高ストレス者へ面接指導を勧める
- 申し出のあった従業員の情報を産業医と共有する
- 従業員が面接指導に来やすくなるように配慮する
- 就業上の措置や環境の改善を実施する
- 結果報告書を作成・提出する
高ストレス者と判断された従業員は、「面接指導を受けることで就業上の不利益を被るのではないか」と不安を抱えている場合もあります。当人に不利益がないことを丁寧に説明し、面接指導を受けやすくする配慮が重要です。
ひとつずつ見ていきましょう。
【ステップ1】ストレスチェックの結果を確認する
ストレスチェックの実施後、結果を確認し、高ストレス者を選定します。
高ストレス者の選定方法は下記の2つです。
- 合計点数を使う方法
- 素点換算表を使う方法
合計点数を使う方法では、それぞれの回答を合計し、各領域ごとに数値基準と照らしあわせて算出します。
ストレスチェックに57項目の調査票を使用した場合は、下記のいずれかを満たした場合に高ストレス者と判断されます。
- 領域Bの合計点数が77点以上(最高点:4×29=116点)であること
- 領域AとCの合算の合計点数が76点以上(最高点:4×17+4×9=104点)であり、かつ領域Bの合計点数が63点以上であること
【ステップ2】高ストレス者へ面接指導を勧める
高ストレス者の選定が完了したら、医師による面接指導を希望するかを従業員に確認しましょう。
従業員に面接指導を受ける義務はないものの、「ストレスチェック指針」ではできる限り医師による面接指導を受けることが望ましいとされています。
強制するわけにはいかないからと高ストレス者を放置した場合、安全配慮義務違反で労災リスクになる恐れもあります。
最悪のケースを避けるためにも、複数回にわたってメールや電話をおこない、面接指導を勧奨しましょう。
また、下記の記事で高ストレス者への対応を詳しく解説しているので、トラブルを回避したい方はぜひご覧ください。

【ステップ3】申し出のあった従業員の情報を産業医と共有する
高ストレス者から面接指導の申し出があった場合、当該従業員の情報を産業医に共有しましょう。
共有すべき内容の一例は、下記のとおりです。
- 労働時間
- 労働密度(一定の時間内に従業員が労働する量)
- 深夜業の回数と時間数
- 作業態様(単調作業、重労働、夜間作業など)
- 作業負荷の状況
面接指導をスムーズに進めるためにも、おもに「勤務状況や職場環境に関する情報」を共有することが重要です。さらに、健康診断の結果を求められる場合もあるため、必要に応じて共有しましょう。
【ステップ4】従業員が面接指導を受けやすいようにに配慮する
面接指導そのものは産業医が実施しますが、従業員が面接指導を受けやすい環境づくりは人事担当者が主導しなければなりません。環境づくりを疎かにした場合、面接指導を拒否されたり、直前でキャンセルされる恐れがあります。
高ストレス者と判断された従業員は、周囲に知られることを嫌がるケースが多いです。なぜなら、高ストレス者であることを理由に「待遇や業務内容を変更されるのでは?」と考えているからです。
そのため、人事担当者は高ストレス者の周囲に知られることなく、面接指導のセッティングをしなければなりません。たとえば、下記のタイミングなどがよいでしょう。
- 休憩時間中や終業後に実施する
- 外出が不自然ではない業務の場合、社外で実施する
日頃から人事担当者が主導して、面接指導が当たり前のように実施できる環境を作り上げていきましょう。
【ステップ5】就業上の措置や環境の改善を実施する
面接指導の結果をもとに、必要に応じて配置転換や労働条件変更などの就業上の措置をとりましょう。ここで重要なのは、産業医の意見をよく聞くことです。産業医の意見を聞かずに、事業者が就業上の措置をとることは不適当とされています。
下記のとおり、「就業上の措置が必要か」「必要ならどのような措置をすべきか」について意見をもらいましょう。
- 通常の勤務でよいか
- 就業制限が必要か(労働時間の短縮、出張・時間外労働の制限、就業場所の変更など)
- 休業が必要か(療養のため休暇・休職など)
また、職場環境を改善する例として、下記が挙げられます。
- リラックスできる休憩室を設置する
- 従業員のライフスタイルに応じて、勤務を調整できるようにする
- 健康状態やパワハラ・セクハラなどを相談できる窓口を設ける
面接指導はその後の対応が伴ってはじめて大きな意味を持ちます。実施して終わりにならないように、しっかりと高ストレス者をケアしましょう。
【ステップ6】結果報告書を作成・提出する
面接指導も含めたストレスチェックの運用が完了後、受検率や面接指導の実施件数などを取りまとめて、所轄の労働基準監督署へ報告書を提出します。報告書の提出は、労働安全衛生法第52条の21で定められています。
厚生労働省のWebサイトで「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書(PDF)」をダウンロードし、印刷して使用しましょう。また、e-Gov電子申請を利用することでパソコンからも提出できます。
報告書の提出期限は明確に定められていませんが、ストレスチェックの実施後、速やかに提出するのがおすすめです。
なお、「結果報告書の書き方に悩んでいる」などの場合、下記の記事をご一読ください。事前準備から記入例まで詳しく解説しています。

面接指導後に事業者が取るべき行動
面接指導後は高ストレス者を放置しないためにも、適切な就業上の措置を取る必要があります。その際は個人情報が流出しないよう、プライバシーに配慮して対応しなければなりません。
また、改善が確認できた場合も担当者の判断だけに従うのではなく、産業医からの意見を丁寧に聞くことが重要です。
下記の記事で高ストレス者への対応を解説していますので、ぜひご一読ください。
高ストレス者へ面接指導を勧奨する方法
高ストレス者への面接指導は強制できないものの、できる限り面接指導を受けてもらうことが望ましいとされています。しかし、面接指導を拒否する人も多いため、丁寧な勧奨が必要です。
具体的には、下記の方法が挙げられます。
- ストレスチェック結果を通知するときに伝える
- プライバシーに配慮して連絡する
- 複数回にわたって連絡する
電話でおこなうこともできますが、周囲に情報が漏れてしまわないように十分な配慮が欠かせません。適切な方法で勧奨するとともに、普段からストレスチェックの教育を実施し、気軽に面接指導を受けられる体制づくりが重要です。
まとめ:高ストレス者への面接指導はより良い職場づくりに重要
ストレスチェック後の面接指導は、従業員の心のケアをする上で非常に重要な役割を担っています。高ストレス者と判断された従業員に面接指導を受けてもらい、適切な措置を行うためには、人事・産業医の連携が欠かせません。
直接的な面接指導は産業医が実施するものですが、人事担当者は任せきりにせず、面接指導のための環境整備や、面接後の適切な就業上の措置を行い、従業員のメンタルケアに努めましょう。
具体的なメンタルヘルスの対策を資料にまとめたので、ぜひダウンロードのうえご活用ください。