産業看護職のしくじり先生
-新人看護職の落とし穴 –

新しく産業看護職になる方や自身のキャリアを考え直すタイミングの方に向けて
「新人看護職のしくじり先生」を「受け入れ側」「新入側」のそれぞれの立場からお話いただきました。
今回は臨床から産業看護職に転職して1年程度の2名から
どんなところでつまづいたか、失敗したか、またどうリカバリーしたのかをお話いただきます。
講師紹介
・きりん(仮名):2020年11月から産業医の事務所勤務
・あいみ(仮名):2020年から1,200人ほどの社員を抱える建設業の企業の医務室勤務
新人産業看護職として働いて

さんぽむら
どうして産業看護職になられたのですか?きっかけやどんなお仕事をしているか教えてください。

きりんさん
今までは病院保健師として、病院のスタッフの健康管理や人間ドックの仕事をしてきました。その中で、もう少し企業に近いところで働いてみたいという気持ちが芽生え、病院の外にでて働いてみたいと思い産業医事務所に入ったという経緯があります。

あいみさん
病院やクリニックに勤務している時から、もっと早い段階から関わることが出来たらと思っていました。産業保健の分野に入りたいと思っていたわけではなく、様々な現場を体験できたらという気持ちから色々なバイトをしていた時に、現在の職場で働く保健師の方と出会いスカウトされる形で現在の職場で働きはじめました。

さんぽむら
2人とも違うきっかけだったんですね。きりんさんは現在、産業医の事務所では具体的にどのようなお仕事をされているのですか?

きりんさん
主に専属の産業看護師を置かない中小企業を担当しています。複数の企業と契約し例えば週2から出勤といった勤務体系です。資料を作ったり健診結果の確認をしたり、大きな企業では複数人でやっていることをかいつまんで仕事をしています。

さんぽむら
あいみさんは大企業の保健師と一緒に働かれていて、どういった業務内容をされていますか?

あいみさん
健康増進支援室という部署に所属しており、社員さんの心身の健康の維持増進をしています。上司と手分けをして健康診断の確認作業やその結果に基づく受診勧奨をしています。他には産業医との面談設定や社員さんの健康相談、応急処置などですね。

さんぽむら
健康増進支援室かっこいいですね。何名くらいいらっしゃるのですか?

あいみさん
産業看護職は私と保健師の上司の2名です。健康増進支援室には事務の方や室長など合計7名のスタッフが勤務しています。

さんぽむら
7人!それはしくじり体験談が楽しみですね。
さっそくこの一年でどのようなしくじりがあったか振り返っていければとおもいます。お二人はいつから産業看護職になられたのですか?
さっそくこの一年でどのようなしくじりがあったか振り返っていければとおもいます。お二人はいつから産業看護職になられたのですか?

きりんさん
2020年11月からのなので4ヶ月くらいです。

あいみさん
2020年1月からパート勤務を開始して、4月から常勤になりました。1年と少しです。
ビジネスメールの知識不足からおこったしくじり体験

さんぽむら
ではあいみさんからしくじり体験お願いします。

あいみさん
メールあるあるだと思いますが、BCCとCCの違いがわからずBCCで送って欲しかったメールをいきなりCCで送ってしまいました。

さんぽむら
どのようなシチュエーションだったのですか?

あいみさん
受診勧奨の場面で個別にお知らせを送ってほしい人もいるのでBCCで送るように言われていたのにCCでおくってしまいました。

さんぽむら
きりんさんも似た経験はありますか?

きりんさん
送った瞬間に気づいて取り消すこともできず、次のメールでさっきのメール削除してくださいという経験を思い出してみんな一緒なんだなと思いました。(笑)

あいみさん
まるきりの新人という立場で入社するわけでもないので、ビジネスメールについては全部聞きながら、調べながらでした。

さんぽむら
最初はどこまでが必要な機能かちゃんと勉強していないとわかりづらいですよね。

あいみさん
個人情報が満載な情報を扱うので、ちょっとミスがやらかしにつながってしまうことは多いと思います。今でもメールは何回も読み直して間違いがないかよく確認してから送るようにしています。
初めての名刺交換でのしくじり体験

さんぽむら
きりんさんはどのようなしくじり体験がありましたか?

きりんさん
今の会社に入って初めて名刺をもったのですが、名刺の受け取り方も渡し方も知らなかったんです。相手の人から受け取って自分がどのタイミングで渡すかもわからず、もらった名刺をどうしたらいいのかもわからずしまってしまい、上司に後ろから小突かれたのを今でも覚えています。少し勉強してから出ていればと反省しました。

あいみさん
私も今回初めて名刺をもらいました。ミーティングの前などに最初に名刺をもらってその名刺をどうしたらいいのかわからなかったです。横を見たらみんな机に名刺を並べていて。並べ方はどのようにしているのか?上下なのか?横なのか?役職でみてならべているのか?名刺の取り扱いにも最初は頭を悩ませました。

さんぽむら
産業看護職の方まで事前にフォローはしてもらえないというところが大きいのでしょうか?

あいみさん
事前に研修などがないまま働き始めているので、会社からのフォローはないですね。
事前に知っておきたかったことは?

さんぽむら
この仕事を始める前に知っておきたかったことはありますか?

あいみさん
電話の応対方法が知りたかったです。離席している場合など。あとは名刺やビジネスマナーは教わりたかったです。

きりんさん
今までビジネススキルはやってこなかったので、パソコンの使い方もわかりませんでした。ZOOMもこの業界に入って使うようになりました。

あいみさん
あとはなかなか役職が覚えられないです。今まで患者さんのことを「~さん」と呼んできたのでつい社長にまで「~さん」と呼んでしまったり(笑)。世間知らずだなと思います。看護師や保健師は専門職で、ある意味限られたところで仕事をしており、ビジネスマナーや社会人としてという知識がないので、今は社会人1年目という気持ちでやっています!

きりんさん
失敗して調べることが大事だなと痛感しています。

さんぽむら
例えばどんなことを調べてらっしゃったのですか?

きりんさん
メールの書き方です。送付状の季節の挨拶が全然わからなくて相手からの文面をみて今はこんな挨拶なんだというのがすごく恥ずかしくなってきました。今は机に季節の挨拶をすぐに見られるように貼っています。拝啓ではじまってどうやってしめるんだっけ?というようなことに1年生だなと思います。
社員間違いをしてしまい・・・

さんぽむら
リカバリーするのがめちゃくちゃ大変だった失敗談はありますか?
炎上しちゃったなみたいなお話があれば教えてください。
炎上しちゃったなみたいなお話があれば教えてください。

あいみさん
看護師だったらインシデントだったなという話があります。同姓同名で同じ事業所の人に受診勧奨のメールをしてしまったことがあります。個人情報を間違った相手に送ってしまったので上司に報告したところ、社員IDと生年月日を確認するように言われました。

さんぽむら
きりんさんは似たような人間違いのような失敗談はありますか?

きりんさん
私は保健師が3人体制なので誰かが必ずみつけてくれます。最近のしくじりは「衛生委員会の資料を送ります。よろしくお願いします」というメールを送ったが返信がないなと思ったら資料が添付されていなかったということがありました。翌日に気付いて謝罪と共に添付して再送付しました。炎上までの案件にならずにすんでいるのはチームでやっていることが大きいですね。お一人様職場だったら大変なことになっていると思います。
部署や社名間違いには注意

さんぽむら
先輩がとめてくれて回避できたことって何かありますか?

きりんさん
誤字脱字や受診勧奨のメールで社名を間違えていたことがあります。

さんぽむら
複数の会社を相手にしているきりんさんならではですね。ひとつの場所で働く産業看護職の人も部署の間違いはあるかもしれないですね。
これから産業保健をはじめる人がやるべき準備

さんぽむら
産業看護職をはじめたて、これからはじめる自分に言ってあげたいことはありますか?

あいみさん
ビジネスマナーとビジネスメールは頭に叩き込んでから行ったほうがいい!やらかすぞ!と言ってあげたいです。

きりんさん
産業看護職とはなにか深く知らずに入ったので、病院以外の社会にでるとこんなに違うんだなということを言いたいです。あとは、是非Twitterをやっておいた方がいいぞ!と伝えたいです。

あいみさん
私もTwitterで早く配信しておけばと言いたいです。仕事のことより、趣味や思ったことをつぶやくために使っていたけれど、産業保健をはじめて不安だな、繋がりが欲しいなと思ったときに仕事用にも始めました。最初はみる専門でしたが。配信することは勇気がいるけれど早く初めていたら楽しかったかなと思いますね。

さんぽむら
職場外での繋がりもあるといいですよね。

きりんさん
色々な先生をフォローしてこんなことを勉強しなくてはいけないのかという気づきになったり、わからないことをつぶやいたときに必ず誰かが助けてくれるのがTwitterの良さだと思います。
この前も「スライド作りが上手くいきませんでした」とつぶやいたところ「こんな本を読んだらいいよ」、「こんなテンプレート使ったらいいよ」と産業保健の大先輩からお土産をたくさんいただきました!
また、産業看護職になりたい人が情報収集のためにTwitterをはじめているのを最近よくみかけます。ステキなことなのでぜひ、活用してもらいたいです。
この前も「スライド作りが上手くいきませんでした」とつぶやいたところ「こんな本を読んだらいいよ」、「こんなテンプレート使ったらいいよ」と産業保健の大先輩からお土産をたくさんいただきました!
また、産業看護職になりたい人が情報収集のためにTwitterをはじめているのを最近よくみかけます。ステキなことなのでぜひ、活用してもらいたいです。

さんぽむら
Twitterを始めることは緊張しませんでしたか?どういったタイミングで2人はがっつりTwitterを利用しはじめたのですか?

あいみさん
最初は自由に好きなことや悩みをつぶやいていました。同じ産業看護職の人をフォローする時に「フォローします」と声をかけるようにしはじめたことが繋がりを作るきっかけになったと思います。一人声かけを始めるとそこから他の人にも一年目ですよろしくお願いします。といえるようになっていきました。

さんぽむら
コメントはDMとかで送られているのですか?

あいみさん
DMを使うこともありますがクローズで見れない人もいるので@のコメントを使うことが多いです。

きりんさん
私は前からTwitterを利用していますが、産業保健職につくことが決まったときに嬉しくて「産業保健職に決まりました!」とつぶやいたところいいねがすごく増えました。その人達をフォローしたことがきっかけで20人くらいだったフォロワーが今では300人になりました。9割は産業保健に関わる人たちです。今ではお互いの知識を提供し合える関係になっています。

あいみさん
「ようこそ!」という感じが産業保健の人たちってありますよね。

きりんさん
産業看護職の人たちは熱いというか、ようこそという感じでこんなに歓迎されたの初めて!と感動しました。

さんぽむら
私もTwitterをしていて、今回お二人もTwitterでお誘いをしたのですが、Twitter界隈の産業看護職の方、産業保健界隈の方はwelcomeな方が多い印象を受けていたので同感です。
Twitterで参加しているコミュニティ

さんぽむら
Twitterには産業保健のコミュニティがたくさんあるイメージです。今、何かに所属して、どんなことを勉強しているとかそういったことはありますか?


あいみさん
産業保健師のキキさんが主催する「産保ゆる会」というものがありそちらに私もきりんさんも所属しています。産業看護職の現役の方もいれば、就職を希望する方や学生さんもいたりします。

きりんさん
あとはFacebookで「産業保健オンラインカフェ」というのがあります。どうやら1,000人くらい参加者がいて産業保健に関する有益な情報などが毎日更新されているようです。

あいみさん
先日登壇された卯月さんも参加されている「産業保健ナースサロン」にも参加しています。こちらもたくさんの方と繋がりをつくれます。

さんぽむら
お二人ともすごくたくさん参加していますね!

きりんさん
すごく楽しいんです!

あいみさん
勉強になります!一人じゃないと思えることでモチベーションが上がり励みになります。
コミュニティに所属して勉強していること

さんぽむら
コミュニティに入って勉強していることはありますか?

きりんさん
卯月先生がTwitterで開いてくださった事例検討会に参加しました。お一人様の職場で困ったことなどの事例をあげて、先輩方とディスカッションをします。経験豊富な卯月先生のような20年来の先輩もいれば、6年ほどの中堅の方など様々な方がこういう風にやったらいいんじゃないとアドバイスをくださります。一人だと考えられないようなことが勉強会で話し合われており、こんな見方ができるんだなと勉強になります。

さんぽむら
産業看護職って1人や2人と少人数だったりすると思うのでそういう場所は素敵ですね。

あいみさん
私はゆる会で統計検定にチャレンジするというコミュニティに参加しています。同じ検定や資格にチャレンジする人やすでに合格された方が参加していて、勉強方法やできないことを共有して、みんなでがんばろうねと切磋琢磨出来る場所になっています。同じ目標に向かって頑張る人がいるのは素敵だと思います。

さんぽむら
お二人ともすごく精力的に勉強していることがわかりました。そのコミュニティに属しているから頑張れるのですか?それともこうなりたいとか自分のなかに理由があるのですか?原動力はどこにあるのかなというところを伺いたいです。

あいみさん
コミュニティも研修の情報を知ることが、意欲がわくきっかけになっていると思います。産業保健というものを知らずにこの世界に入ったのでとにかく産業保健とは何か知りたい。また、自分の仕事と産業保健がどのように結びつくのか?自分の仕事がなにによって定義されているのか?どういう法律のもとにやっているのか?ということを知り自信を持って働きたいというところです。知りたいというところが原動力になっていると思います。

さんぽむら
知りたい欲求を情報収集などで満たすツールがコミュニティなんですね。

あいみさん
まだまだ1年を通してやっと全体像がわかってきたところです。自分の日々の実務に追われて、落とし込んでやっていくので精一杯です。

きりんさん
私もあいみさんと同じで産業保健ってなんだということを知ることから始まり、勉強するにはなにか目標があったほうがいいかなと日々感じています。資格をとるには死ぬ気で勉強しないといけないと思うので、「皆さんがもっている資格はどんなものだろう?」とかTwitterのコミュニティに入って伺って、こんな資格があったら少しは自信がついてくるかもと思い資格をとってみようと思いました。みなさんすごく勉強されているので、この職業って勉強しないとやっていけないんだと強く感じて、情報収集しながら勉強している感じです。看護師や保健師は根底として勉強しなくてはいけない、自分のやる仕事に責任を持つためにはどうしたらいいのだろうと感じている方が多いのだと思います。
毎回ゆる会で一ヶ月の目標をたててつぶやくんです。それをみるとすごく刺激をうけて、みなさんこんな勉強をしているんだ私も次はこんな勉強をしようかなという気持ちになります。コミュニティのおかげでモチベーションを保てています。少し前をいく先輩達にならって、来年は私もそれをやろうという気持ちになっています。
毎回ゆる会で一ヶ月の目標をたててつぶやくんです。それをみるとすごく刺激をうけて、みなさんこんな勉強をしているんだ私も次はこんな勉強をしようかなという気持ちになります。コミュニティのおかげでモチベーションを保てています。少し前をいく先輩達にならって、来年は私もそれをやろうという気持ちになっています。
資格の勉強について

さんぽむら
あいみさんは統計検定の資格の勉強をされているということですが、きりんさんはどのような資格の勉強をしているのですか?

きりんさん
来月に、メンタルヘルスマネジメント検定を受ける予定です。

さんぽむら
最初はビジネスマナーやメールを勉強しておけばよかったという話しが多かったですけど今は産業保健のほうに学びが変わってきているところですか?

あいみさん
同時並行しているような…ビジネスマナーもまだまだしくじりがあるので勉強しながら産業保健の自分の知りたいことを勉強していく余裕が少しでてきたところです。企業で働くだけでオタオタしていて専門的なことを勉強するところまでなかなか踏み込めなかったです。今は、並行して興味のある分野をやれていると思います。

きりんさん
私はどちらかを頑張らなくてはと考えています。とにかく産業保健について知らなくては仕事にならないということで今はビジネスマナーはお休みして産業保健とはなんぞやというところに焦点を当てています。もう少し余裕がでてきたら並行して興味のある分野の勉強もやっていきたいです。
今後の目標や課題、意気込み

さんぽむら
現在の目標や意気込みを教えてください。

あいみさん
産業保健に関わるようになって1年目で自分の会社の体制や社員さんをやっと覚えてきたところです。セミナーをうけたり自分で勉強したりインプットを色々しているのですが、自分の日々の業務に追われていて実務とまだ結びついてないことばかりです。
2年目に入るので自分の学んだことと実務が繋がるように頭の中を整理していきたいなと思っています。1年目に学んだことを来年につなげられるようにPDCAサイクルを回して、今年やってきた取り組みを見直したいと思います。
2年目に入るので自分の学んだことと実務が繋がるように頭の中を整理していきたいなと思っています。1年目に学んだことを来年につなげられるようにPDCAサイクルを回して、今年やってきた取り組みを見直したいと思います。

きりんさん
私はまず勉強して、これからどう活かしていくのか、産業保健とはなに?自分の立ち位置はどこ?という立ち位置探しをしているところです。自分の立ち位置や産業保健で自分はどんなことをできるのか?産業保健によって何をしなくてはいけないのか、クリアになっていないので、1年をめどに色々なところで他の人が産業保健でどんなことをしているのかを知り自分の立ち位置をみつけていきたいです。立ち位置が決まればどういう向きに向かえば良いか、得意分野を伸ばしていくとか活動をしたいというところが広がってくるのかなと思っています。まずは1年自分探しみたいなことができたらいいなと思っています。

あいみさん
本当に産業保健は奥が深いですが、産業保健オタクだけにならないことは大事だと思います。産業保健だけにならないようには意識しています。沼が深い分野ではありますが、企業人として、医療専門職として二足のわらじのような一緒にやっている感覚です。

さんぽむら
今回はご登壇ありがとうございました。