休職・復職にムリなく対応
2022年7月7日 更新 / 2019年8月29日 公開

人事から休職者への対応。休職前〜復職判断のための3つの社員管理

休職前から復職判断に向けた求職者の対応管理

あなたは、人事・労務担当として正しい休職者対応ができる自信はありますか?

傷病休職制度は法律上の制度ではなく、あくまでも福利厚生のひとつの制度になります。そのため、休職者への対応方法は会社によって様々になりがちです。

復職までスムーズにつなげるために、休職前あるいは休職中の社員対応の3つのポイントを解説しました。

企業が休職者を適切に対応・管理すべき理由

厚生労働省の発表によると、職業生活等において強い不安、ストレス等を感じる労働者は約6割に上っています。

メンタルヘルス上の理由により連続1カ月以上休業または退職した労働者がいる事業場の割合は、
・従業員数300人超の職場では6割
・従業員数1,000人超の職場は9割

となっており、メンタルヘルス不調を原因とする休職者の対応は必須といえます。

メンタル不調に限らず社員が体調を崩した時、もし不調の原因が職場環境や業務によるものであれば、労働契約の不履行により解雇することはできません。(労働基準法第19条)

そのため休職制度は、社員が体調を回復するための猶予期間として就業規則に定められています。

労働者健康状況調査(平成19年)より
「メンタルヘルス上の理由により休業・退職した労働者の有無」

厚生労働省 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き(PDF)より

休職前:ルールは事前に書面で説明する

適切な復職を促すためには、休職前の対応が最重要です。

何のために休職するのか、休職中はどのような行動に気をつけるべきなのかを本人に書面で伝えましょう。

たとえば、休職中にSNSを更新して遊んでいる様子が職場の人に伝わり、反感をかってしまうケースはよくあります。

休職前に本に伝えるべき事項としては以下のものをまとめてください。

  • 休職開始〜休職中〜職場復帰までの大まかな流れ
  • 休職中に本人が実施すべき事項(生活リズム表の記入等)
  • 休職中の会社とのコンタクト方法
  • 休職中の生活
  • 休職中の給与や傷病手当金
  • 休職時、復職時に必要な書類
  • 休職可能な期間

特に本人の経済面に関することを丁寧につたえることで、生活の安心感につながります。

休職中:会社とのコンタクトは事前に計画する

「会社関係者は休職中に連絡を取ってはいけない」
と思っていませんか?

休職中であっても会社関係者(人事や上長)とコンタクトを取ることは、復職を目指す上で様々なメリットがあります。しかし、連絡手段やタイミングを誤ってしまうと逆効果にもなりえます。

休職中にコンタクトをとるメリット

  • 会社として休職者の生活状況が把握できる
  • 休職者として経済的・将来的不安を軽減できる
  • 復職時にスムーズに職場復帰するきっかけになる

休職直後は、ルールに沿って本人から連絡する

休職の原因が職場の人間関係や職場状況にある場合、コンタクトをとる人や方法は慎重に考えます。

特に休職直後に会社から連絡してしまうと、休職者としてはプレッシャーを感じてストレスになる恐れがあります。そのため、コンタクトを取るルール(頻度・手段・窓口となる人)をあらかじめ決めておき書面で共有しておきます。

本人の症状に合わせて、連絡する頻度・手段を変える

あらかじめ決めたルールは、本人の症状経過に合わせて変えていくと復職に有効です。(以下を参考)

一方で、会社側の窓口となる人は複数人にせず1人に絞ってください。休職中の対応や説明の違いが発生した場合、休職者本人のストレスになる恐れがあるためです。

  • 頻度:2ヶ月に1回→1ヶ月に1回
  • 手段:メール→対面
  • 窓口:直属の上司

また、本人とのコンタクトを通じて得られた情報は産業衛生スタッフ(産業医・保健師)に共有しておきます。会社側からはアクセスできない健康に関する個人情報(健康情報)をふまえて、適切な対応アドバイスを得ることができます。

会社とのコンタクトで決めておくこと

  • 連絡する頻度
  • 連絡する手段
  • 会社側の窓口となる人

たとえば「月に1回、メールで治療状況・起床時間などの生活リズムを直属上司あてに連絡する」

復職:病状の回復後は、生活リズムを整える

職場に復帰する判断は、事業主が決定します。
その際に産業医と主治医それぞれに判断を求めてください。

主治医による判断は、主に日常生活における病状が回復したかどうかが基準になります。そのため、必ずしも業務が遂行できる程度に回復しているとは限りません。

復職後に求められる業務を遂行できるかどうかについては、自社の産業医による判断をあおいだうえで、事業主として復職に踏み切る決定をしてください。

復職の基準に、生活行動記録表を活用する

休職者の病状が快方に向かったら、復職に向け生活リズムが整っているか見極める必要があります。事業者は休職者の生活リズムを把握するために、生活記録表をつけてもらうことをおすすめします。

生活行動記録表のサンプル
生活行動記録表のサンプル

生活行動記録表に記入すること

  1. 起床時間、就寝時間の睡眠状況
  2. 外出した場所、時間
  3. 食事の時間
  4. リワークや通勤訓練、試し出勤の状況
  5. 起床時の疲れ10点満点(←かなり重要です)

もし、休職者自身で生活リズムを整えることが難しい場合や、過去に復職に失敗した経緯がある場合は、リワーク支援施設を提案するのもひとつの方法です。

職場復帰にむけたプランを作成する

休職者に職場復帰の意思があり、主治医・産業医からも職場復帰が可能と判断されたら、職場復帰のための具体的なプランを検討していきます。

職場復帰の支援プランでは、いきなり通常の勤務体制におくのではなく段階的にすすめる計画を立てます

就業上の配慮として、時差勤務の導入や残業・休日勤務の禁止。上司や産業保健スタッフによるフォローアップ方針の策定などの準備をすすめます。

休職者の状態と職場の準備状況の双方を考慮した上で、復職のタイミングを総合的に判断してください。

執筆・監修

  • Carely編集部
    この記事を書いた人
    Carely編集部
    「働くひとの健康を世界中に創る」を存在意義(パーパス)に掲げ、日々企業の現場で従業員の健康を守る担当者向けに、実務ノウハウを伝える。Carely編集部の中の人はマーケティング部所属。