休職・復職にムリなく対応
2021年8月25日 更新 / 2019年9月3日 公開

復職時に人事と上司が取り決めておく復職支援プランとは

復職支援プラン

メンタルヘルス不調により休職した従業員の円滑な職場復帰を図ることは、貴重な労働力の維持という企業経営の観点からも重要です。産業衛生スタッフや人事スタッフは、円滑な職場復帰を支援するために、問題が生じてから対処するのではなく、復帰にあたり、復職支援のプログラムや復職後のフォローアップを検討しなければなりません。今回は、復職の際に立てるべき復職支援プランについて解説していきます。

職場復帰支援のステップ

休職者の職場復帰は、本人、上司、人事スタッフ、産業医等の産業衛生スタッフ、主治医の多くの関係者が連携して行わなければなりません。復職に向けた支援を検討するためには、まず関係者一人ひとりが復職のためのステップポイントを理解していることが前提となります。厚生労働省のメンタルヘルス対策における職場復帰支援(PDF)を参考に、職場復帰に向けた流れを確認しましょう。

〈第1ステップ〉病気休業開始および休業中のケア

従業員より主治医による診断書が提出され、休業が始まります。この期間は、療養に専念する期間です。過度な連絡や接触は療養の妨げとなるため、傷病手当金など経済的な保障や、休職できる期間の情報提供など最低限の支援を行うようにしましょう。

〈第2ステップ〉主治医による職場復帰可能の判断

復職に向け、まずは主治医から復職可の診断をもらう必要があります。しかし主治医の復職可の診断書は、あくまで日常生活に支障がないと判断しているにすぎないため、職場で求められる業務遂行能力まで回復しているとは限りません。主治医の復職可が出ているからとって、必ずしも復職を許可しなければならないという訳ではないことを覚えておきましょう。

〈第3ステップ〉職場復帰の可否の判断および職場復帰支援プランの作成

職場復帰にあたり、産業医に業務遂行能力の有無を医学的な観点から判断してもらう必要があります。また具体的な職場復帰プランを作成しなければばりません。作成時は、本人の希望のみで決定せずに、産業医の意見を踏まえて決定するようにしましょう。

〈第4ステップ〉最終的な職場復帰の決定

産業医の意見書に基づき、事業者による最終的な職場復帰の決定を行います。事業者は最終的な職場復帰に関する決定事項や、就業上の配慮の内容について本人に説明を行い、理解、納得を得てから復職をするようにしましょう。

『職場復帰』

〈第5ステップ〉職場復帰後のフォローアップ

復帰後も関係者や主治医と連携を行い、フォローアップ体制を継続していく必要があります。再発防止のため慎重な対応を行い、職場復帰支援プランの評価と見直しを行いましょう。

復職支援プランはなぜ必要?

厚生労働省の研究から、「うつ病になり病気休暇を取得した人の中で、再発して病気休暇を再取得した人」の割合は、復帰から1年で全体の28.3%、2年で37.7%と高く、5年以内で47.1%に達していたことが分かっています。一度休職してしまうと、復職できてもその後同じ理由で再休職に至る可能性が高くなってしまうのです。この原因の一つとして、「職場の受け入れ態勢が整っていなかった」、「本人の体調・気持ちが職場復帰できるに至ってなかった」という理由が挙げられます。これらの理由による再休職・体調悪化は、事業主側の決定や支援体制に不備があったと判断されかねません。また復職者のサポート体制が不十分だと、復職者本人だけでなく、同僚など周りの従業員の負担や不満が増加し、職場全体の生産性が低下してしまう可能性もあります。

そのため、統一された「復職支援プログラム」や「復職支援プラン**」を作成し、会社全体で計画的な復職サポートを行う必要があるのです。

*職場復帰支援プログラム…職場復帰支援についてあらかじめ定めた事業場全体のルール

**復職(職場復帰)支援プラン…休業していた労働者が復職するにあたって、復帰日、就業上の配慮など個別具体的な支援内容を定めたもの

復職支援プランを作成する際のポイント

復職支援プランの作成は、産業保健スタッフ等を中心に、上司(管理監督者)、人事スタッフ、休職中の従業員でよく連携しながら進める必要があります。

復職支援プランの作成は、

  1. 情報の収集と評価
  2. 職場復帰の可否についての判断
  3. プランの作成

の流れで行います。

職場復帰の際は、職場復帰支援プログラムに基づき、対象者一人ひとりに合わせて復職支援プランを作成しますが、メンタルヘルス不調者の復職支援プランを作成する際は特に慎重に作成する必要があります。復職支援プランを作成・実施する際の留意ポイントをしっかりと確認しましょう。

  • 従業員のプライバシーに十分な配慮をする。
  • 従業員の健康状態をもとに、個人に合ったプランを作成する。
  • 産業医や主治医の意見を参考に、復職後6カ月程度の復職支援を作成する。
  • 本人の同意を得た上で、主治医から情報・意見を得る。
  • 復職後の業務遂行能力の有無は、医学的な見解をもとに産業医が行う。
  • 復職直後に従前の業務量・内容を100%行うのではなく、まずは軽作業から始めて、段階的に負荷を上げていく。
  • 配置転換や異動を行うと、新しい環境に適応するための心理的負担が、病気の再発を引き起こす可能性があるため、原則は元の職場に復帰する。(休職理由に職場環境が影響し手いる場合は、配置転換・異動も検討する)
  • 復職後の就業制限、業務内容、産業医との面談に関して、具体的に定め、文書として残すようにする。また上司によるサポート内容や方法、就業制限の見直しを行うタイミングも定める。
  • 復職者本人に、復職支援プランに基づいた計画の実行が、安定した職場復帰につながることを説明する。

こちらはiCAREが支援している企業様で使用している復職支援プランの一部です。

ステップ2:就業制限あり/勤怠緩和なし

これらのポイントをもとに、本人の体調に合わせた無理のない復職支援を立て、再発を防ぐ復職プログラムを目指していきましょう。

さいごに

安全でスムーズな職場復帰を支援するためには、必要な情報の収集と評価を行った上で復職可能かを適切に判断して、職場復帰を支援するために具体的にプランを作成する必要があります。この復職支援プランが復職後の経過を左右すると言っても過言ではありません。関係者がその内容を互いに確認しながら、適切な職場復帰支援を進めていきましょう。

執筆・監修

  • Carely編集部
    この記事を書いた人
    Carely編集部
    「働くひとの健康を世界中に創る」を存在意義(パーパス)に掲げ、日々企業の現場で従業員の健康を守る担当者向けに、実務ノウハウを伝える。Carely編集部の中の人はマーケティング部所属。