従業員に長時間労働させる5つの問題点!企業に起こりうるリスクとは?

長時間労働は脳・心臓疾患や精神障害の危険性を高めると言われており、厚生労働省が発表したデータによると、令和2年に労働災害として認定された件数は802件となっています。
とはいえ社内での長時間労働に気付いてはいても、「業務が多すぎて長時間労働の解消まで着手できない」「過労死ラインを超えていないから、まだ大丈夫」と考えている方も多いのではないでしょうか?
実は、長時間労働の問題に適切に対策しないと、企業にさまざまな悪影響を与える危険性も。
そこで本記事では、従業員に長時間労働させる5つの問題点を解説します。
企業が実施できる長時間労働の対策まで紹介するため、「長時間労働の対策に本格的に着手したい」とお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
■従業員への健康管理が、人事の長時間労働の原因になっていませんか?
時間労働の把握ならば勤怠システムで実現できると思われるかもしれませんが、給与計算などの用途で扱う所定労働時間の計算と、健康管理のための法定労働時間の計算式は異なります。勤怠とは別にエクセルで再集計を行ったり、過重労働者へ産業医面談の予約、従業員の健康データを準備するといったアナログ業務は、人事担当者が長時間労働になる原因ともいえます。
長時間労働はもちろん、健康診断・ストレスチェックなどの健康データを一元管理することで従業員・組織全体の健康を正しく把握することができます。詳しくは以下よりお問い合わせください。
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長時間労働とは?基準や定義・法改正について解説
法律上、長時間労働の基準や定義はありません。なぜなら業務内容や業務量、年齢や性別など、従業員個人によって健康リスクの高まる基準が異なるからです。
しかし労働時間の上限については、法律上の定義があります。
労働基準法32条で定められている労働時間の上限は、週40時間です。もしそれ以上の残業が必要な場合は、労働基準法36条に基づいた労使協定(36協定)を結ぶ必要があります。労使間合意の上で36協定を結ぶと、時間外労働が可能です。
2019年以前は特別条項付きの労使協定を結べば、ほぼ上限なく従業員に時間外労働させることができました。これが、多くの企業で長時間労働が常態化していた原因です。
しかし2019年に、以下のように法改正されました。
法改正前 | 2019年法改正後 | |
---|---|---|
法定労働時間 | 1日8時間、週に40時間以内が原則 | |
時間外労働(36協定) | 1ヶ月45時間、1年間360時間が上限(行政による制限) | 原則、1ヶ月45時間、1年間360時間が上限(法律による上限) |
特別条項付き36協定 | 上記を超えた場合でも臨時的なら時間外労働OK | ・時間外労働は1年間720時間以内 ・時間外労働+休日労働は月100時間未満 ・2〜6ヶ月平均がすべて80時間以内 ・月45時間以上の時間外労働は年6ヶ月まで |
法改正により、従業員の長時間労働の罰則は厳格化されました。36協定を締結していても上限を超える時間外労働を従業員にさせた場合、企業は労基法違反と判断されます。
長時間労働の定義や法改正については、以下の記事でより詳しく解説しています。ぜひこちらも合わせてご一読ください。
法改正により、日本の長時間労働への制限や罰則は厳しくなりました。しかし「労基法を違反しなければ長時間労働しても問題ないのでは?」「長時間労働には、具体的にどのような問題があるのだろう?」と考える方も多いのではないでしょうか。
そこで次に「長時間労働による疲労で従業員の集中力が落ち、生産性が低下する」など、従業員に長時間労働をさせた場合の5つの問題点を解説します。
従業員に長時間労働させる5つの問題点!企業に与える悪影響
従業員に長時間労働させる問題点は、主に以下5つです。
- 労働基準法違反による指導・罰則を受ける可能性がある
- 長時間労働による疲労で従業員の集中力が落ち、生産性が低下する
- 長時間労働に不満を感じた従業員が離職しやすく、採用コストが増加する
- 長時間労働によりメンタル不調に陥る従業員が休職や離職になるリスクがある
- 長時間労働により従業員が過労死し、企業価値やイメージダウンにつながる
特に2つ目の「長時間労働による疲労で従業員の集中力が落ち、生産性が低下する」では、健康そうに見える人の心身の不調によって起きる生産性の低下「プレゼンティーイズム」についてお伝えします。それぞれ順番に見ていきましょう。
【問題1】労働基準法違反による指導・罰則を受ける可能性がある
長時間労働が常態化していると、労働基準監督署から指導・罰則を受ける可能性が高いです。
労働基準監督署は、違法な長時間労働を実施している企業の監督指導を強化しています。実際に平成31年4月から令和2年3月までに、32,981件の事業場の指導を実施しました。そのうち、違法な時間外労働があったと認められたのが15,593件の事業場です。
労働基準監督署は事業場を調査した後、その企業の調査結果別に以下のような通知を届けます。
- 法令違反ではないが、改善が必要な場合【指導票を交付】
- 法律違反の場合【是正勧告書を交付】
- 労働者に危険があり、緊急を要する場合【使用停止等命令書を交付】
「指導票」や「是正勧告書」が届いた場合、書類に記載された期日までに改善して是正報告をする必要があります。
ただし「使用停止等命令書」が交付された場合、「6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金」という罰則が課せられる可能性も。
労働基準監督署の臨検については、以下の記事で詳しく解説しています。詳しくは以下をご一読ください。
【問題2】長時間労働による疲労で従業員の集中力が落ち、生産性が低下する
内閣府の「平成29年度年次経済財政報告」によると、一人あたりの労働時間が短い国ほど、生産性が高いというデータが出されました。
平成29年度年次経済財政報告
したがって従業員に長時間労働をさせ続けると、労働の疲労により集中力やモチベーションが落ち、生産性の低下につながると言えます。
しかし労働時間さえ改善すれば、従業員の生産性が高まるとも限りません。
なぜなら一見健康そうに見えても、睡眠不足や腰痛、ストレスを抱えているなど、なにかしらの心身の不調を抱えながら働いている人がいるからです。このように心身の不調によって、仕事でベストパフォーマンスを発揮できない状態を「プレゼンティーイズム」と言います。
厚生労働省と経済産業省の共同調査によると、健康が起因した生産性の損失のうち77.9%がプレゼンティーイズムによるものです。
企業の「健康経営」ガイドブック~連携・協働による健康づくりのススメ~(改訂第1版)
欠勤や早退はしないため給料は満額支払われますが、実際の生産性は下がっているため企業が期待するほどの成果が出ない可能性も。
そのため、企業は従業員の労働時間を是正することはもちろん、プレゼンティーイズムを改善することが求められます。
【問題3】長時間労働に不満を感じた従業員が離職しやすく、採用コストが増加する
内閣府の「平成29年度年次経済財政報告」では、長時間労働の是正に取り組む企業は、労働者の転職や離職が少ないと記載されていました。
つまり、長時間労働が当たり前になっている企業では、従業員が労働環境に対して不満に感じて離職する可能性が高いと言えます。
離職者が多いと、その分人材を採用するコストが必要です。
実際にリクルートが調査した「就職白書2019」によると、2018年度の新卒採用および中途採用1人あたりの平均採用コストは以下のようになりました。
- 新卒採用…72.6万円
- 中途採用…84.8万円
また単純に人材を採用するコストだけでなく、採用した新人に教育を行ったり、採用が決まるまで既存の従業員が業務のフォローを行うコストも発生します。
このように、長時間労働の対策をしないと
- 離職者が出る度に多くの採用コストが必要となる
- 採用しても戦力になるまでに時間がかかってしまう
- 従業員の生産性が落ちてしまう
といった、企業にとってマイナスの効果が出てしまいます。
【問題4】長時間労働によりメンタル不調に陥る従業員が休職や離職になるリスクがある
どんなに働きやすい企業であっても、労働環境にストレスを抱えてしまう従業員は一定数います。具体的には全従業員の約1%ほどの割合で、メンタル不調となり休職してしまう人がいるのです。
もちろん、メンタル不調になった従業員を休ませることは重要です。しかし休職者があまりに多く発生する職場では、そのほかの従業員の長時間労働が常態化するケースもあります。
特に時間外労働が月45時間を超えると、以下のようなリスクが高まりやすいです。
- 精神障害・自殺
- 事故・けが
- 過敏性大腸炎や腰痛、月経障害などの健康障害
長時間労働は、労働の負荷を大きくするだけでなく、睡眠・休養・余暇時間不足を引き起こし、疲労を蓄積させます。そして、精神的負担が増えメンタル不調につながっていきます。
長時間労働によるメンタル不調を防ぐためには、予兆を逃さず予防措置を取ることが重要です。
予兆を見つけ、予防措置が取れる健康管理システム「Carely」の詳細はコチラ
【問題5】長時間労働により従業員が過労死し、企業価値やイメージダウンにつながる
厚生労働省の「令和2年版過労死等防止対策白書」によると、過労死した人のうち51.5%は発病してから亡くなるまでが29日以内と示されています。
つまり、企業が従業員の不調に気づいた段階ではすでに遅く、対策できないケースがあるということです。
過労死は仕事やプライベートなど、さまざまなストレスが重なったことで起きたかもしれません。
しかし何が過労死の本当の原因だったとしても、過労死が発生すると世間から「従業員の労働環境の管理ができない会社」とみなされ、社会的イメージが低下します。
企業価値やイメージが傷付くと、今後の採用活動で優秀な人材が集まりにくくなる可能性も。また「自社から過労死が発生した」という、残された従業員への悪影響も避けられません。
したがって「自社ではまだ過労死が発生していないから関係ない」と思わずに、長時間労働をはじめとする労働環境を見直すことが重要です。
ここまで、従業員に長時間労働をさせる5つの問題点を解説しました。
従業員に長時間労働をさせる5つの問題点
- 労働基準法違反による指導・罰則を受ける可能性がある
- 長時間労働による疲労で従業員の集中力が落ち、生産性が低下する
- 長時間労働に不満を感じた従業員が離職しやすく、採用コストが増加する
- 長時間労働によりメンタル不調に陥る従業員が休職や離職になるリスクがある
- 長時間労働により従業員が過労死し、企業価値やイメージダウンにつながる
ここまで読んで「自社では労基法を違反していないけど、長時間労働が常態化している」「長時間労働の対策として、何から始めればいいかわからない」と思う方もいるでしょう。
次に、長時間労働に対して企業が実施すべき対策を解説します。
長時間労働に対して企業が実施すべき対策とは?
長時間労働が常態化しているなら、以下7つの対策の実施をおすすめします。
長時間労働に対して企業が実施すべき7つの対策
- 勤怠管理システムを入れて、労働時間を正確に把握する
- 所定労働時間と総労働時間の両方を計算し、長時間労働を把握する
- 就業制限がかかっている従業員を把握する
- 長時間労働の状況を衛生委員会で報告・共有する
- 毎月の労働時間を、産業医が常に確認できるようにする
- 長時間労働が理由の産業医面談のルールを規定する
- 疲労蓄積度チェックリストを活用し、面接指導や適切な事後措置を実施する
特に4つ目の「長時間労働の状況を衛生委員会で報告・共有する」を実施すれば、各部門に長時間労働の実態を把握してもらうことが可能です。その結果、長時間労働の問題について社内全体で意識するきっかけとなります。
またこの7つの対策は、不調に陥っている従業員をいち早く発見する体制作りです。これらの対策は人事部のみでも実施できるため、すぐに着手することをおすすめします。
一方で、長時間労働を根本的に改善するには経営陣の理解を得つつ、労働時間を削減する体制作りが必要です。以下の記事では、長時間労働の根本的な対策に成功している企業を紹介しているため、ぜひ合わせてご一読ください。
ここまで読んで「長時間労働の人を発見するだけなら、勤怠管理システムだけでできるのでは?」と思った方もいるかもしれません。しかし長時間労働の問題を解決するには、健康管理システムの導入がおすすめです。次に、その理由について解説します。
長時間労働の問題を解決するには、健康管理システムの導入がおすすめ
「長時間労働の対策だけなら、勤怠システムで実現できる」と思う方もいるかもしれませんが、長時間労働の対策には健康管理システム『Carely(ケアリィ)』の導入がおすすめです。
給与計算などの用途で扱う「所定労働時間」と、健康管理のための「法定労働時間」は、それぞれ計算式が異なります。そのため、勤怠システムのデータとは別にエクセルで再集計することが必要です。
また長時間労働者を発見した場合は、以下のようにさまざまなアナログ業務が発生します。
- 産業医面談の設定
- 従業員の健康データの準備
- 産業医による面接指導後の事後措置
これらの業務は煩雑なものも多く、人事担当者が長時間労働になる原因の1つです。
さらに、労働時間、健康診断結果、ストレスチェックなど、多くの企業では従業員の健康情報がバラバラに管理されています。
健康管理システム『Carely(ケアリィ)』を導入すれば、これらの健康データを一元管理し、不調者の発見はもちろん、ハイリスク者の予兆を察知し予防措置をとることができます。Carelyでは勤怠管理システムとのAPI連携やCSV連携によって、長時間労働対応にかかる業務効率化を実現しています。
長時間労働はもちろん、健康診断・ストレスチェックなどの健康データを一元管理することで従業員・組織全体の健康を正しく把握することができます。詳しくは以下よりお問い合わせください。
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次に、長時間労働の問題に関してよくある2つの質問についてお話します
長時間労働の問題に関してよくある2つの質問と回答
長時間労働の問題に関してよくある質問は、以下2つです。
- そもそも従業員が長時間労働する原因は?
- 日本で長時間労働が問題視されている理由とは?
それぞれ順番に見ていきましょう。
【質問1】そもそも従業員が長時間労働する原因は?
従業員が長時間労働する原因は、以下10個です。
従業員が長時間労働する10の原因
- 中間管理職に仕事が偏る
- テレワークで隠れ残業が増えている
- 業務のデジタル化が遅れておりムダが多い
- 人事と専門家によるチェック体制が整っていない
- 睡眠不足や疲労からストレスが増加でし、生産性が低下する
- 休職者の増加によって業務のしわ寄せが起きている
- 管理職がマネジメントする時間を用意できない
- 閑散期に合わせた人員になっている
- 長時間労働が評価される風潮がある
- 不必要な会議や打ち合わせが多い
特に3つ目の「業務のデジタル化が遅れておりムダが多い」は、従業員が長時間労働をしてしまう大きな原因の1つです。
新型コロナウイルスの流行でテレワークや業務のデジタル化は進みましたが、人事部の業務のデジタル化は遅れている傾向にあります。
特に従業員の健康管理については、まだまだ電話やFAX、紙を使ったアナログ業務が多いです。このような人事部の業務のデジタル化の遅れが業務量を増やし、長時間労働の原因となっています。
健康管理システム『Carely(ケアリィ)』を導入すれば、人事部の健康管理業務のデジタル化を進めることが可能です。気になる方は、ぜひ以下からお問い合わせください。
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また、従業員が長時間労働する10の原因については、以下の記事で詳しく紹介しているため、合わせてご一読ください。
【質問2】日本で長時間労働が問題視されている理由とは?
日本の総実労働時間は、平成5年から令和2年までの20年間で減少傾向にあります。一方で、所定外労働時間はほぼ横ばいです。
令和2年版過労死等防止対策白書
このデータを見ると日本の労働時間が減っている印象を受けますが、実は正規雇用の従業員の残業時間は20年以上削減できていません。
なぜなら、日本の労働人口は年々減少を続けており、近年はパートやアルバイトといった非正規雇用の労働者割合が増えているため、見かけ上の総実労働時間は減って見えるからです。
つまり、日本の正規雇用従業員の残業時間は削減されていないという現状があります。
この現実を国が問題視しているため、法改正をしたり、長時間労働を撲滅するプロジェクトを立ち上げたり、さまざまな対策を実施しています。
日本の長時間労働の現状については、以下の記事をご一読ください。
まとめ:長時間労働の問題を放置すると、企業へ多くの悪影響を与える
本記事では、従業員に長時間労働をさせる5つの問題点について解説しました。
従業員に長時間労働をさせる5つの問題点
- 労働基準法違反による指導・罰則を受ける可能性がある
- 長時間労働による疲労で従業員の集中力が落ち、生産性が低下する
- 長時間労働に不満を感じた従業員が離職しやすく、採用コストが増加する
- 長時間労働によりメンタル不調に陥る従業員が休職や離職になるリスクがある
- 長時間労働により従業員が過労死し、企業価値やイメージダウンにつながる
長時間労働が常態化すると、従業員の心身に不調をきたすだけでなく、採用コストの増加や企業イメージの低下など、多方面から企業へ悪影響を与えます。
また一見健康そうな従業員でも、何かしらの心身の不調を抱えているケースも多く、生産性の低下につながる原因です。
したがって、従業員の長時間労働による不調をいち早く発見する体制作りが重要と言えます。
健康管理システム『Carely(ケアリィ)』は、
- 勤怠や健康診断結果、ストレスチェック結果などの一元管理
- 産業医による長時間労働者の面談設定
- 産業医と面接指導に必要なデータの共有
など、人事のアナログ業務のムダを削減し、不調な従業員へスピーディーに対応すること可能です。
長時間労働への対策にとどまらず、従業員の健康管理を効率化したい方は、以下からお問い合わせください。
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