【助成金廃止のお知らせ】メンタルヘルスの支援に利用できるおすすめの補助金・助成金

【重要なお知らせ】
2022年11月9日、独立行政法人労働者健康安全機構から、本記事で紹介されている「心の健康づくり計画助成金」「ストレスチェック実施促進のための助成金」「小規模事業場産業医活動助成金」「職場環境改善計画助成金」を含む産業保健関連助成金の廃止が発表されました。以下にて廃止の経緯、並びに、新たな助成制度について加筆しました。
メンタルヘルス対策を行い、労働者の心の安定を図ることは、事業所にとって重要な課題の一つとして掲げられます。労働者のメンタルヘルス不調にいち早く気付くためには、ストレスチェックの実施が効果的です。
しかし、メンタルヘルス不調に対して十分な支援を行いたいと事業者側が考えていても、予算面の都合上、難しい場合もあるでしょう。そこで今回は、メンタルヘルスの支援・ストレスチェックの実施に使える、おすすめの補助金・助成金を紹介します。
<NEW>産業保健関連助成金の廃止について
2022年11月9日、独立行政法人労働者健康安全機構から、これまで受け付けていた産業保健関連の助成金を廃止するという発表がありました。
産業保健関連助成金については、2022年5月に募集要項が発表されたものの、受付が停止されていた経緯があり、どのような動きを見せるか注目されていましたが、廃止が決定したようです。
廃止の経緯としては、産業保健関連への注目度が高まったことにより、申請数が急増したほか、不正受給問題なども相まって、迅速な審査が難しくなったことが考えられます。
廃止される助成金は以下のとおりです。
- 小規模事業場産業医活動助成金
- ストレスチェック助成金
- 職場環境改善計画助成金
- 心の健康づくり計画助成金
- 治療と仕事の両立支援助成金
- 副業・兼業労働者の健康診断助成金
- 事業場における労働者の健康保持増進計画助成金
すでに申請を受け付けていた令和3年度分の助成金については、これまでどおり審査を行っているとしていますが、上記で上げたような理由から審査に時間が掛かることが予想されます。
また、廃止に伴い、新たな助成制度として「団体経由産業保健活動推進助成金」が発表されています。どのような助成金なのか、以下で紹介します。
団体経由産業保健活動推進助成金
新たな助成制度である団体経由産業保健活動推進助成金ですが、以下のように説明されています。
令和4年度からは、新たに「団体経由産業保健活動推進助成金」を開始することとなりました。この助成金は、中小企業や労働保険の特別加入者を支援する団体等が、傘下の中小企業等に対し、産業医、保健師等の専門職の他、産業保健サービスを提供する事業者と契約し、産業保健サービスを提供した際、その費用の一部を助成するものです、
事業場における労働者等の健康管理のために、ぜひご活用ください。
※この助成金は、厚生労働省の産業保健活動総合支援事業の一環として行われています。
目的:小規模事業場等の産業保健活動の支援
助成金の支給対象者:事業者団体等
助成金の対象となる活動:医師、保健師等と契約し、傘下の小規模事業場等に対し健康経営の支援を含む
産業保健サービスを提供する活動
助成金額:活動費用の4/5。上限100万円。
申請の上限:各団体につき、各年度1回限り。
支給の対象が、事業場から事業者団体に変わったことが最も大きな変更点と言えます。
つまり、これまで事業場ごとに行ってきた受給申請を、商工会や組合など、事業場を束ねる団体が個々の事業場に産業保健サービスを提供する名目で申請する形になります。
以下の内容は更新前の情報です。
記載されている助成制度については古いものとなりますが、
社内のメンタルヘルス対策を行う上でご参考ください。
企業に求められるメンタルヘルスとは
労働者がパフォーマンスを思う存分発揮するためには、心の健康の維持が欠かせません。厚生労働省が推進する事業所のメンタルヘルス対策として、「ストレスチェック制度」や「心の健康づくり計画」などが挙げられます。
ストレスチェックの実施は法律で義務化されているため、労働者のストレス状態を調査したうえで、面接指導によるサポートを行います。労働者のメンタルヘルス不調を予防するために、事業者側が快適な職場環境を提供することが必要です。
メンタルヘルスケアの実施に必要な指標としては、以下の4軸があります。
- セルフケア
- ラインによるケア
- 事業所内産業保健スタッフ等によるケア
- 事業場外資源によるケア
参考:厚生労働省独立行政法人労働者健康安全機構『職場における心の健康づくり』
事業所には、メンタルヘルス対策を行う義務がありますが、資金繰りに余裕がない場合は、費用の捻出が難しいでしょう。このような場合に備えて、メンタルヘルスケアを実施するための補助金・助成金を国が用意しています。
現在、事業所内でメンタルヘルスに関する管理体制が整備されていないなら、補助金・助成金の導入を検討したほうがよいでしょう。

ストレスチェックで使える補助金・助成金

事業所でストレスチェックを実施する場合、以下の補助金・助成金を利用できます。
- 心の健康づくり計画助成金
- ストレスチェック実施促進のための助成金
- 小規模事業場産業医活動助成金
- 職場環境改善計画助成金
ストレスチェックの実施にかかる費用負担を軽くするためにも、助成金の積極的な活用をおすすめします。ただし、要件がそれぞれ異なるため、違いをよく確認しておくことが必要です。
それでは、上記の各助成金について、概要や要件を見ていきましょう。
心の健康づくり計画助成金
「心の健康づくり計画助成金」とは、職場のメンタルヘルスケアのために用意された助成金です。厚生労働省の産業保健活動総合支援事業に関連して行われており、助成を受けるには「事業場の要件」と「取組の要件」をすべて満たす必要があります。
助成金の届出を行う前に、まずは以下の「事業場の要件」をすべて満たしているか、確認しておきましょう。
独立行政法人労働者健康安全機構『令和2年度版「心の健康づくり計画助成金」の手引』
- 労働者を雇用している法人・個人事業主であること。
- 労働保険の適用事業場であること。(当機構では厚生労働省ホームページ掲載の「労働保険適用事業場検索」において該当した事業場を適用事業場とみなしています。)
- 登記上の本店又は本社機能を有する事業場であること。(個人事業主については、開業届の届出がされている事業場であること。)
続いて、「取組の要件」をチェックします。すべてを実施していることを確認してください。
独立行政法人労働者健康安全機構『令和2年度版「心の健康づくり計画助成金」の手引』
- メンタルヘルス対策促進員の訪問を受け、メンタルヘルス対策促進員の助言・支援に基づき、令和元年度以降、新たに「心の健康づくり計画」を作成していること。
- 作成した「心の健康づくり計画」を労働者に周知していること。
- 「心の健康づくり計画」に基づき具体的なメンタルヘルス対策を実施していること。
- メンタルヘルス対策促進員から、「心の健康づくり計画」に基づき具体的なメンタルヘルス対策が実施されたことの確認を受けていること。
上記の要件をすべて満たした場合、将来にわたって1回限り助成金が支給されます。助成金額は、1法人または1個人事業主ごとに一律10万円です。
支給申請手続きは以下の流れで進みます。
- メンタルヘルス対策促進員の訪問支援を、各都道府県の産業保健総合支援センターに申し込む。
- メンタルヘルス対策促進員から、心の健康づくり計画の作成に関する助言・支援を受ける。
- 心の健康づくり計画の作成を行う。
- 心の健康づくり計画を従業員に周知する。
- 心の健康づくり計画をもとに、メンタルヘルス対策を実施する。
- メンタルヘルス対策促進員に、心の健康づくり計画に基づくメンタルヘルス対策が実施されていることを確認してもらう。
- 必要書類をそろえて、労働者健康安全機構に助成金の支給を申請する。
- 労働者健康安全機構から助成金支給決定通知が届き、助成金を受領する。
参考:独立行政法人労働者健康安全機構『令和2年度版「心の健康づくり計画助成金」の手引』
ストレスチェック実施促進のための助成金
「ストレスチェック実施促進のための助成金」は、労働者数が50人未満の事業場において、ストレスチェックにともなう産業医などの面接指導を行った場合に受け取れる助成金のことです。
助成金を申請する「事業場の要件」は以下のとおりです。
独立行政法人労働者健康安全機構『令和2年度版「ストレスチェック」実施促進のための助成金の手引』
- 労働者を雇用している法人・個人事業主であること。
- 労働保険の適用事業場であること。(当機構では厚生労働省ホームページ掲載の「労働保険適用事業場検索」において該当した事業場を適用事業場とみなしています。)
- 常時使用する従業員が派遣労働者を含めて50人未満であること。
加えて、助成金を受け取るための「取組の要件」についても確認が必要です。
独立行政法人労働者健康安全機構『令和2年度版「ストレスチェック」実施促進のための助成金の手引』
- ストレスチェックの実施者が決まっていること。
- 事業者が医師と契約を締結し、「ストレスチェックに係る医師による活動」の全部又は一部を行わせる体制が整備されていること。
- ストレスチェックの実施及び面接指導等を行う者は、自社の使用者・労働者以外の者であること。
上記の要件をすべて満たした場合、以下の助成金額が支給されます。
- ストレスチェックの実施:従業員1人につき500円(税込)が上限
- ストレスチェックに係る医師による活動:1事業場・1回の活動につき2万1,5000円(税込)が上限 ※支給上限は3回
支給の申請手続きは、以下の流れで進みます。
- ストレスチェックの実施に関して、審議が行われる。
- 「ストレスチェックに係る医師による活動」の契約が締結される。
- ストレスチェックが実施され、従業員に結果が通知される。
- 高ストレス者に対して面接指導などを行う。
- ストレスチェック助成金の支給申請を行う。
- 労働者健康安全機構から助成金支給決定通知を受け取り、助成金が支払われる。
参考:独立行政法人労働者健康安全機構『令和2年度版「ストレスチェック」実施促進のための助成金の手引』
小規模事業場産業医活動助成金
「小規模事業場産業医活動助成金」は、労働者数50人未満の事業場が産業医や保健師と契約した場合に受けられる助成金です。
申請の際に必要な「事業所の要件」は以下になります。
独立行政法人労働者健康安全機構『令和2年度版「小規模事業場産業医活動助成金」【産業医コース】の手引』
- 小規模事業場(常時50人未満の労働者を使用する事業場)であること。
- 労働保険の適用事業場であること。(当機構では厚生労働省ホームページ掲載の「労働保険適用事業場検索」にて該当した事業場を適用事業場とみなしています。)
併せて、以下の「取組の要件」もすべて満たす必要があります。
独立行政法人労働者健康安全機構『令和2年度版「小規模事業場産業医活動助成金」【産業医コース】の手引』
- 平成29年度以降、産業医の要件を備えた医師と事業場が新たに「産業医活動に係る契約」(職場巡視、健診異常所見者に係る意見聴取、保険指導等、産業医活動の全部又は一部を実施する契約)を締結していること。
- 産業医が産業医活動の全部又は一部を実施していること。
- 産業医活動を行う者は、自社の使用者・労働者以外の者であること。
上記の要件をすべて満たした場合、6ヵ月当たり上限10万円の助成金が支給されます。(※1事業場当たり、将来にわたって2回が上限)
支給申請手続きの流れは以下のとおりです。
- 産業医と産業医活動を契約する。
- 職場巡視、保健指導等の産業医活動を実施する。
- 産業医に対して費用を支払う。
- 必要な書類をそろえ、小規模事業場産業医活動助成金(産業医コース)の1回目の支給申請を行う。
- 支給決定通知が労働者健康安全機構から届き、助成金を受領する。
- 4~5の流れを2回目も同様に行う。
独立行政法人労働者健康安全機構『令和2年度版「小規模事業場産業医活動助成金」【産業医コース】の手引』
職場環境改善計画助成金
「職場環境改善計画助成金」とは、ストレスチェックの集団分析をもとに職場環境の改善を行った場合に受けられる助成金です。
助成金を受けるためには、以下の「事業場の要件」をすべて満たす必要があります。
独立行政法人労働者健康安全機構『令和2年度版「職場環境改善計画助成金」【事業場コース】の手引』
- 労働者を雇用している法人・個人事業主であること。
- 労働保険の適用事業場であること。(当機構では厚生労働省ホームページ掲載の「労働保険適用事業場検索」にて該当した事業場を適用事業場とみなしています。)
「取組の要件」に関しては、以下のとおりです。
独立行政法人労働者健康安全機構『令和2年度版「職場環境改善計画助成金」【事業場コース】の手引』
- ストレスチェック実施後の集団分析を実施していること。
- 平成 29 年度以降、専門家と職場環境改善指導に係る契約を締結していること。
- ストレスチェック実施後の集団分析結果だけではなく、専門家から管理監督者による日常の職場管理で得られた情報、労働者からの意見聴取で得られた情報及び産業保健スタッフによる職場巡視で得られた情報等も勘案して職場環境の評価を受け、改善すべき事項について指導を受けていること。
- 専門家の指導に基づき職場環境改善計画を作成し、当該計画に基づき職場環境の改善の全部又は一部を実施していること。
- 専門家から、職場環境改善計画に基づき職場環境の改善が実施されたことの確認を受けていること。
なお、助成金は1事業場当たり、上限10万円が支給されます。(将来にわたって1回限り)
支給申請手続きは、以下の流れで行われます。
- ストレスチェックを実施する。
- ストレスチェックの結果を集計し、集団分析を行う。
- 職場環境改善計画の作成に関する指導契約を締結する。
- 職場環境改善計画を作成する。
- 作成した計画をもとに、職場環境の改善を実施する。
- 必要書類をそろえて、労働者健康安全機構へ助成金の支給を申請する。
- 労働者健康安全機構から支給決定通知が届き、助成金を受領する。
参考:独立行政法人労働者健康安全機構『令和2年度版「職場環境改善計画助成金」【事業場コース】の手引』
まとめ
ストレスチェックの義務化にともない、事業者の負担を軽減するための補助金・助成金が整備されています。ただし、補助金・助成金をもれなく受け取るためには、制度ごとに定められた「事業場の要件」「取組の要件」を満たすことが必要です。
メンタルヘルス対策を万全にしたいと考えている場合は、今回紹介した補助金・助成金を積極的に活用するとよいでしょう。