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2023年3月20日 更新 / 2023年3月20日 公開

長時間労働/過重労働の基礎知識。定義や法改正など基本情報を解説

日本企業の問題として取り沙汰されることの多い、長時間労働。近年、取り組みが進められている働き方改革の中でも長時間労働の是正が盛り込まれています。

従業員の労働時間の管理は、法改正が進み、より厳しくなった今、企業にとって取り組まなくてはならない大きな課題のひとつです。

そこで今回は長時間労働の定義や、法改正の実態など網羅的にご紹介していきたいと思います。

そもそも長時間労働とは?

長時間労働とは、法定労働時間に定められた労働時間を上回った状態のことを言います。

しかし、実は何時間以上が長時間労働に当たるのか、など明確な基準は定められていません。
ただし、目安となる時間は存在しています。ここでは、長時間労働の目安となる法律で定められた労働時間の上限についてご紹介していきます。

法定労働時間

法定労働時間とは、労働基準法により定められた労働時間のことで、1日8時間 週40時間となっており、それ以降は時間外労働と見なされます。法定労働時間を上回って働く場合、企業と従業員の間で労働基準法第36条で定められた協定(36協定)を結ばなければなりません。

36協定

36(サブロク)協定とは時間外労働や休日労働などに関する基準を定めた労使協定のことで、労働基準法第36条で定められていることから36協定と呼ばれています。
この協定により締結された協定書を労働基準監督署に届け出れば、1ヶ月45時間、1年間360時間」の労働時間延長ができていました。

さらに、「特別条項付き」にしておけば、臨時的に忙しい場合には上記の延長時間を超えた時間でも、時間外労働をして良いこととなっており、かつては上限時間が事実上なかったと言えます。

この36協定、特別条項付き36協定が日本の長時間労働を助長させる大きな要因となっていましたが、2019年4月の労働基準法改正により明確な残業時間の上限規制が設けられました。

残業時間の上限は「1ヶ月45時間、1年間360時間」となり、この時間を超えて労働をさせることは36協定を締結していても違法となります。また、特別条項付き36協定についても制限が定められています。

過重労働と長時間労働について

長時間労働と似た言葉として、過重労働という言葉があります。
長時間労働が文字通り、働いている時間を基準にした考え方であるのに対し、過重労働は時間を含め、心身に負荷のかかる労働を指す言葉で、より包括的な意味を持っています。

また、過重労働を原因とした病死や自殺は過労死等と呼びます。
過重労働には以下3つの基準が設けられています。

  • 過労死ライン(過労死が労災認定される基準)
  • 残業時間の上限規制の基準
  • 長時間労働者への面接指導が必要な基準

過労死ライン

過労死ラインは脳・心臓疾患による過労死を発症するリスクが高いとされる時間外・休日労働時間のことです。

  • 「月100時間」を超える時間外・休日労働
  • 2〜6ヶ月間平均で「月80時間」を超える時間外・休日労働

が過労死ラインとされています。
過重労働についてさらに詳しく知りたい人は以下をあわせてご確認ください。

また、過重労働の算出方法について知りたい方は下記の記事をご参照ください。

長時間労働のデメリットやリスクとは

長時間労働・過重労働を見過ごしてしまうことによって、企業は様々なリスクを抱えることになります。
適切な対処を行い、長時間労働・過重労働を防止しなくては、企業活動にも響いてきてしまいます。
一丸となって対策に取り組むためにもリスクをしっかりと把握しておきましょう。

企業ブランドイメージの低下

長時間労働・過重労働は明確に上限が定められたことにより、その労働時間を超過した場合は法律違反となり、労働基準監督署からの指導や罰金などが発生します。

また、長時間労働・過重労働が蔓延しているという事実は採用市場ではマイナスに作用します。求職者が会社を選ぶ際に残業時間を気にすることはよくあることです。
このように事業においても、採用活動においても長時間労働・過重労働はブランドイメージを大きく損なう要素となります。

生産性の低下

長時間労働・過重労働が続き、慢性的に疲労がたまっている状態では、従業員は最大限のパフォーマンスを発揮することは難しくなります。
また、疲労が蓄積することにより、パフォーマンスはもちろん、業務に対するモチベーションの低下も発生してきます。

コストの増大

長時間労働・過重労働が続くということは、単純に残業代に掛かるコストが増大します。その他、採用活動における費用の増大、法律違反による罰金、従業員の集中力低下による事故など、様々な部分でコストが増大していきます。

長時間労働や過重労働については労働基準監督署による臨検の対象になります。
臨検について詳しく知りたい方は以下も合わせてご確認ください。

長時間労働・過重労働が発生する原因とは?

長時間労働・過重労働を防止しようとしても、その原因がわからなくては対処は難しいもの。
ここでは長時間労働・過重労働が発生する原因についてご紹介します。

【原因1】中間管理職に仕事が偏る

【原因2】テレワークで隠れ残業が増えている

【原因3】業務のデジタル化が遅れておりムダが多い

【原因4】人事と専門家によるチェック体制が整っていない

【原因5】産業医面談の申請がしづらい

【原因6】休職者の増加によって業務のしわよせが起きている

【原因7】管理職がマネジメントする時間を用意できない

【原因8】閑散期に合わせた人員になっている

【原因9】長時間労働する人が評価される風潮がある

【原因10】不必要な会議や打ち合わせが多い

これらは実際にCarelyを利用している企業様へのアンケートで挙げられた上位10個の原因となっています。より詳しく原因について知りたい方はぜひ以下の記事をご参考ください。

長時間労働・過重労働への対策とは

原因が判明した後は適切な対応が必要になります。原因に対して効果的な施策を検討し、長時間労働・過重労働の是正に取り組みましょう。

ここでは特に「不調な従業員をいち早く見つける体制づくり」のためにやるべきことをご紹介します。

  1. 勤怠管理システムを入れて、労働時間を正確に把握する
  2. 法定労働時間を計算し、時間外労働を把握する
  3. 就業制限がかかっている従業員を把握する
  4. 長時間労働の状況を衛生委員会で報告・共有する
  5. 毎月の労働時間を、産業医が常に確認できるようにする
  6. 産業医面談の長時間労働基準を規定する
  7. 長時間労働者に疲労蓄積度チェックリストを実施する

これらの対応は人事部だけでも対応が可能なものであり、かつ労務リスクを大きく軽減できるので、まずはここから取り組んでみるのがおすすめです。

それぞれの対策について、より詳しく確認したい方は以下の記事をご確認ください。

長時間労働・過重労働と働き方改革関連法案

ここまでご紹介してきたように、長時間労働・過重労働に関しては様々な法改正により、さらに厳格な基準が設けられました。こうした様々な法改正を合わせて働き方改革関連法案と呼んでいます。
ここでは、その働き方改革関連法案により、どのような変化が生じているのかまとめてみたいと思います。

  1. 時間外労働の上限規制を導入
  2. 産業医・産業保健機能の強化
  3. 年次有給休暇の確実な取得
  4. 中小企業の月60時間超の残業の、割増賃金率引上げ
  5. 正社員と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差の禁止
  6. 「フレックスタイム制」の拡充
  7. 「高度プロフェッショナル制度」を創設
  8. 勤務間インターバル制度の導入促進

先述した時間外労働の上限規制に加え、従業員の健康を守るための様々な法案が誕生しています。
健康経営を目指す企業としては、抑えておかなくてはならないポイントとなっていますので、ぜひご参考ください。
改正内容や改正後の基準など、さらに詳しく知りたい方は以下をご確認ください。

執筆・監修

  • Carely編集部
    この記事を書いた人
    Carely編集部
    「働くひとの健康を世界中に創る」を存在意義(パーパス)に掲げ、日々企業の現場で従業員の健康を守る担当者向けに、実務ノウハウを伝える。Carely編集部の中の人はマーケティング部所属。