健康経営の基礎知識。概念や取組・制度など基本情報を紹介!

従業員の生産性向上や、労働力の確保の観点などから「健康経営」という経営手法が注目を集めています。実際に健康経営を取り入れようと考えている経営者のみなさんや、担当者の方も多いのではないでしょうか?
この記事では、健康経営とはなんなのか、という概念の説明から、実際の導入におけるポイントなどをご紹介していきます。
「健康経営」とは?
健康経営とは、「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」を指します。従業員の健康向上が企業の業績向上につながるという考え方で、従業員の健康を経営課題としてとらえ、その健康維持・増進に対して積極的に投資を行っていく経営手法です。
1990年代にアメリカのロバート・ローゼン博士が著書である「ヘルシーカンパニー」の中で提唱した経営方針で、従業員の健康を維持・増進することが結果的に企業の業績向上につながるという考え方からきています。
健康経営導入のメリット
健康経営を導入することで、企業の経営には以下のようなメリットがあると言われています。
メリットを抑えて、健康経営を推進する目的を明確化しましょう。
1:生産性の向上
従業員の健康を管理し、維持・向上させていくことで、従業員は最高のパフォーマンスを発揮できるようになり、生産性を高めていくことができます。
2:企業イメージの向上
長時間労働など、従業員の健康状態は今や社会的な問題として捉えられています。そのため、従業員の健康を真剣に考える健康経営に取り組む企業は、対外的にも好意的に受け止められます。
3:労働力の確保
従業員が安心して働ける環境を整えることにより、新入社員の確保・離職率の低減という形で、企業は労働力を確保しやすくなります。
4:高い投資効果
健康経営に取り組む企業は健康経営銘柄などESG投資の投資先として資本が集まりやすくなるメリットもあります。
従業員の健康に配慮することで、企業は様々なメリットを享受することができます。
また、昨今の働き方改革の流れの中、企業は健康経営に取り組むことを社会的にも求められています。
詳しいメリットや制度内容、注目される背景など、健康経営についてさらに詳しく知りたい方は以下をご確認ください。
あわせて読みたい
健康経営とウェルビーイング・働き方改革
健康経営と類似する概念として、ウェルビーイング経営や、働き方改革などがあります。どちらも健康経営とともに語られることが多く、健康という観点から見ると似通った部分が多くあります。
ここでは代表的な2つの概念であるウェルビーイング経営・働き方改革について簡単に説明するとともに、健康経営との違いについてご紹介します。
ウェルビーイング経営とは
ウェルビーイング(well-being)とは、肉体的・精神的・社会的に満たされた状態を指す言葉です。これをビジネスの場に取り入れ、社員が肉体的・精神的・社会的な健康を享受できるように企業が働きかけることをウェルビーイング経営と言います。
社員の健康に留まらず、その先の「幸福」を意識した取り組みを行うことになり、健康経営よりもより広義な概念といえるでしょう。
また、大きな違いとして視点の違いがあります。詳しくは以下の記事をご確認ください。
働き方改革とは
働き方改革とは、政府・厚生労働省が主導する働き方に関する政策全般を指します。厚生労働省が発表した「働き方改革~一億総活躍社会の実現に向けて」では以下のように定義されています。
「働き方改革」は、働く方々が、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、 自分で「選択」できるようにするための改革です。
働き方改革~一億総活躍社会の実現に向けて
2019年4月には、労働基準法をはじめとした労働関連の法案に様々な改正が行われ、これらを総称して働き方改革関連法案と呼んでいます。
健康経営が従業員の健康に投資する企業活動だとすれば、働き方改革はその根幹となるルール整備の部分に当たると言えるでしょう。
健康経営と働き方改革の関係をより詳しく知りたい方は以下の記事をご確認ください。
あわせて読みたい
その他、健康経営と密接な関係にある言葉として「健康投資」という言葉があります。健康投資は健康経営の考え方に基づく具体的な行動を指します。
また、健康経営に取り組む際、今後はPDCAサイクルを回していくことが重要とされており、健康経営の投資対効果を見える化するために、2020年6月、経済産業省から『健康投資管理会計ガイドライン』が発表されました。
以下の記事に内容をまとめましたので、継続的に健康経営に取り組む企業はぜひご参考ください。
あわせて読みたい
健康経営優良法人とは
健康経営を行う企業を支援する制度として、「健康経営優良法人認定制度」があります。
健康経営優良法人認定制度とは、健康経営に取り組む企業のうち、特に優良な健康経営を実践した企業を顕彰する制度のことです。
健康経営に取り組む優良な企業を見える化することで、従業員や求職者はもちろん、金融機関などからも社会的な評価を受けやすくできる環境を作ることを目的としています。
認定制度には事業規模に応じて大規模法人部門と中小規模法人部門に分かれており、それぞれさらに優秀な成績を収めたトップ500の企業に対して、ホワイト500とブライト500という称号が与えられます。
健康経営への取り組みを測る指標となる認定制度ですので、ぜひチャレンジしてみましょう。
認定制度について、より詳しい内容や取得のためのポイントについて以下の記事にまとめているので、合わせてご確認ください。
あわせて読みたい
健康経営の具体的な取り組みとは
ここまで健康経営の仕組みやメリットについて紹介してきました。では、具体的に健康経営に取り組むためにはなにからはじめ、なにを行えばよいのでしょうか。
ここでは、健康経営の取り組み方や、はじめ方について簡単に解説していきます。
従業員の健康という漠然とした問題を取り扱う健康経営は、はじめ方や施策、実行後の効果測定などに迷ってしまうことが多々あるもの。
そこで、健康経営優良法人認定制度にも用いられている健康経営度調査の項目を確認するとよいでしょう。健康経営度調査票は以下の4つの項目を基本にできています。
- 経営理念・方針
- 組織体制
- 制度・施策実行
①従業員の健康課題の把握と必要な対策の検討
②健康経営の実践に向けた土台づくり
③従業員の心と体の健康づくりに関する具体的対策 - 評価・改善
まず、はじめに自社がどんな健康課題を抱えていて、どんな企業になりたいのかをしっかりとトップが明文化することが大切です。自社の経営理念などに健康経営に対する姿勢を盛り込み、対外的に発信します。
その後は、健康課題を解決するための組織体制を構築し、具体的な施策を動かしていきます。そして近年重視されているのが、評価・改善です。継続的に健康経営に取り組むためにPDCAサイクルを回すための体制づくりが求められています。
健康経営度調査票の詳細や、実際の取り組みについては以下の記事にも記載していますので、ぜひ合わせてご確認ください。
あわせて読みたい
また、体制づくりや健康課題の抽出などの段階で迷う場合は、外部の力を借りることもひとつの方法です。社員に健康経営に対する意識付けを行える健康経営研修や、健康経営の実施をサポートする健康経営コンサルティングなどがあるので、ぜひご確認ください。
健康経営推進のための助成金
健康経営を推進し、社員の健康を促進させるためには様々な費用が発生します。具体的には社員の健康状態を可視化する健康管理システムの導入や、社員のための福利厚生システムの導入などがあります。また、産業保健師を雇う必要など、健康経営のための人材確保も必要になりますし、先程あげたようなコンサルティングや研修といった外部サービスを利用する費用も発生します。
こうした費用を援助し、健康経営に推進する企業を増やす目的で行われているのが、国や地方自治体などによる助成金サービスです。これから健康経営をはじめたいと考えている方はチェックすることをおすすめします。
ただし、助成を受けるに当たってはいくつか注意点があります。それが以下の3点です。
- 就業規則の整備や従業員管理を徹底する
- 事業成長のための課題解決につながる施策を決め、使える助成金を探す
- 助成金の申請条件・時期・必要書類を確認する
注意点の詳しい内容や、役立つ助成金の情報については、以下の記事をご参考ください。
あわせて読みたい
健康経営を推進し、自社の健康課題を解決していくためには、様々な知識や情報が必要となってきます。
ぜひ関連記事をチェックして、正しい情報を把握した上で自社の健康経営を推進していきましょう。
また、健康経営優良法人認定制度にチャレンジを考えている方は以下の資料も合わせてご確認ください。
