人的資本として今すぐ開示できる9つの健康指標

これまでの人材戦略、特にすでに働いている従業員に対しての取り組みや働いている状態というのは、会社の外部からも内部からも見えづらい領域でした。
普段、人事部門に従事している方には意外かもしれませんが、一般の従業員から見ると
「私たちの会社ではどんな人が働いているのか?」
「会社は従業員のためにどんな制度を用意してくれているのか?」をよく知らないものです。
こうした「人的資本」領域を開示するメリットは、投資家や取引先といった外部からの評価に加えて、開示する情報によってはすでにあなたの会社で働いている従業員の満足度やエンゲージメントを高めるメリットもあります。
本記事では、人的資本の開示に関するガイドラインを読み解いた上で、従業員の満足度やエンゲージメント向上につながりやすい「従業員の健康と安全」に関する指標を解説します。
また本記事では今すぐ開示できる健康指標として以下の9つをピックアップしました。それぞれの意味や計算式については記事後半で解説しているので、すぐに知りたい方は目次から選んでください。
離職率 | 労働災害による損失時間 | アブセンティーズム |
プレゼンティーズム | 上限を超える労働時間の発生率 | 喫煙者率 |
適正睡眠者率 | 健康診断の受診率 | ストレスチェックの受検率 |
人的資本の情報開示を学べる2つの参考資料
そもそも人的資本経営とは何に取り組むことなのか?情報開示する項目はどれなのか?について、今すぐ学べる2つの参考資料をご紹介します。

ひとつめは通称「人材版伊藤レポート」と呼ばれている経済産業省による報告資料です。2020年の第一版に続き、2022年に第二版が公表されています。
PDF形式でダウンロード可能ですので、以下のページから取得してみてください。
第一版:持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書
第二版:人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書
人材版伊藤レポートでは、人的資本経営をあなたの会社に反映するための、人材戦略・人事施策や社内体制についてのアイデア集となっています。人事・労務観点では、離職の防止や採用力の強化につながる人事施策を、経営戦略とひもづけて実行するフレームワークにもなるため、戦略人事やHRBPの観点からも参考になる資料です。

ふたつめは2022年に内閣官房より公表された「人的資本可視化方針」です。こちらもPDF形式でダウンロード可能ですので、以下のページから取得することをおすすめします。
参考:人的資本可視化指針
人材版伊藤レポートが実行策のアイデア集であった一方で、こちらの人的資本可視化指針は情報開示する事項についてのガイドライン(日本・米国・欧州)のまとめ資料となっており、開示担当者の情報収集に役立つものです。
これら2つの参考資料は双方ともに必須レベルで読み解いていただきたいのですが、以下のような使い分けができます。
人材版伊藤レポート | 人的資本可視化指針 | |
---|---|---|
対象者 | 経営者(CxO)、人材関連部門の管理職 | 広報・IR、人材関連部門の担当者 |
内容 | 人材戦略の立て方、社内体制の構築などの取り組みアイデア集 | 人的資本の開示事項の検討、各種ガイドラインの情報収集 |
用途 | 既存の取り組みの整理とリスクアセスメント、人的資本の定量・定性分析 | 有報・統合報告書・WEBサイト等での情報開示、各指標の計測・算出 |
健康指標が人的資本としてニーズが高い理由
人的資本に関する情報開示は、ESG投資(環境・社会・体制の3分野における非財務指標を評価する投資)に重きを置く流れから、米国・欧州が一足早いガイドラインの制定が進んでいます。
2022年現在、日本でも人的資本に関する情報開示制度が整備されています。特に上場企業では有価証券報告書やコーポレートガバナンス報告書において一部項目の開示が義務付けられています。
有価証券報告書で求められている開示事項
- 人的資本
- 人材育成方針
- 社内環境整備方針
- 多様性
- 男女賃金格差
- 女性管理職比率
- 男性育児休業取得率
上記の指標は”制度”として定められている、いわば最低限の開示項目です。この他にも人的資本として開示が推奨される項目は幅広くあります。先ほど紹介した人的資本可視化指針を参考にしてみましょう。

企業比較の観点
人的資本可視化指針では、国際基準であるISO30414(人的資本に関する情報開示のガイドライン)をはじめ、日本・米国・欧州の各種ガイドラインを企業比較の観点から19領域にまとめられています。
企業比較の観点とは、ネガティブな評価を避けるための「リスク」マネジメントと、ポジティブな評価を得るための「価値向上」の2つの観点が含まれています。

このうち「健康指標」とは、19領域のうち「安全」「身体的健康」「精神的健康」の直接的な健康状態に加えて「福利厚生」「育児休業」といった働きやすさに関連する領域も含まれてきます。
上の図を見ていただくと分かる通り、健康指標はリスクマネジメントと価値向上の双方の観点が盛り込まれています。つまり、投資家や取引先としては他社との比較が容易な指標です。
さらに健康指標に関係する主な施策は、健康診断やストレスチェックの実施、長時間労働管理といった人事労務としてすでに取り組んでいる施策になります。そのため開示する数値も計測・算出しやすく、人的資本の情報開示のためのプラスアルファな作業が少なく済むという利点があるのです。
離職防止の観点
人的資本の可視化・情報開示は、投資家や取引先といった会社の外部からの評価を得ることが目的とされています。一方で、会社の内部である従業員からの評価(満足度やエンゲージメント)を高めるメリットもあります。
人材戦略上もっとも重要である離職防止の観点でも、開示事項の19領域を分類してみましょう。

従業員が離職してしまう要因を理解するフレームワークとして、モチベーション理論でも有名な「ハーズバーグの二要因理論」を参考にしてみます。
ハーズバーグの二要因理論とは?
別名「動機づけ・衛生要因理論」とも呼ばれている。
1959年にアメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグが調査・提唱した、従業員の仕事に対する満足度・モチベーションに関する理論。満足につながる動機づけ要因(主に働きがい)と不満足につながる衛生要因(主に職場環境)はそれぞれ異なっているとされている。
二要因理論に基づいて人的資本の開示事項を分類してみると、衛生要因として「休職やプレゼンティズム(生産性低下)」を引き起こしやすい職場環境と、動機づけ要因として「満足度やコミットメント」を引き上げる働きがいの観点が含まれていることが分かります。
なお、ハーズバーグの二要因理論と離職の関係性については注意すべき点があります。
「離職につながる原因は主に不満足であるから、衛生要因を整えておけば動機づけ要因は影響しない」
とされる仮説です。
二要因理論が提唱された20世紀と、現在(21世紀)では転職のしやすさや仕事選びの環境は大きく変わっています。衛生要因が整っているだけではなく、他社よりも魅力的な動機づけ要因がなければ、なかなか離職防止にはつながらない。という現実は、経営者としても人事としては実感しているはずです。
そういう意味でも、人的資本として今すぐ開示するならば健康指標がおすすめされます。今日ご紹介する9つの健康指標では身体的・精神的な健康状態に加えて、働きやすさも含まれます。
衛生要因・動機づけ要因の双方に影響するため、従業員の離職防止という利点があるのです。
離職率 | 労働災害による損失時間 | アブセンティーズム |
プレゼンティーズム | 上限を超える労働時間の発生率 | 喫煙者率 |
適正睡眠者率 | 健康診断の受診率 | ストレスチェックの受検率 |
採用力向上の観点
未来の従業員になる求職者に向けた採用力向上の観点からも、健康指標を今すぐにでも開示する利点があります。
2022年10月にパーソル総合研究が公表した『人的資本情報開示に関する調査 【第2回】』を見てみましょう。
調査対象として① 1年以内の転職を検討している社会人(n=4,100名)と② 2024年春に就職予定の大学生・大学院生(n=500)に対して、人的資本の開示19領域のどれに関心を寄せているかを調査されたものです。
▼ ① 1年以内の転職を検討している社会人が関心を寄せている人的資本の開示事項

▼ ② 2004年春に就職予定の大学生・大学院生が関心を寄せている人的資本の開示事項

どちらの対象者からも、1位・3位・4位に「福利厚生」「安全」「精神的健康」という健康指標で表せられる領域が選ばれています。
- 投資家・取引先に向けた企業比較の観点、
- すでに働いている従業員に向けた離職防止の観点、
- そして未来の人材である求職者に向けた採用力向上の観点。
これら3つの観点から、健康指標は人的資本として開示するニーズが高く、開示した場合のメリットも高いことが見えてきます。それでは具体的にどのような健康指標が各種ガイドラインで示されているのか、次章から深掘っていきましょう。
健康指標のガイドラインには、健康経営度調査が使いやすい
「健康経営度調査」という、健康経営を実践している企業の多くが提出している調査票をご存知でしょうか?
健康経営度調査とは?
経済産業省が顕彰する「健康経営優良法人制度」のうち、大規模法人部門にかかわる企業が回答する調査票。健康経営に関する取り組みを、
① 経営理念・方針
② 組織体制
③ 制度・施策実行
④ 評価・改善
の4領域で評価し、偏差値として順位が算出される。2021年度では約3,000社が参画し、日経225構成銘柄のうち84%が含まれている。

健康経営度調査への回答企業はあくまで大規模法人部門ではありますが、サステナビリティやステークホルダー経営の観点から中小企業でもある取引先への浸透も進んでいます。実際に、健康経営度調査の必須項目として以下のような設問がおかれているのです。
健康経営度調査における「自社を超える取り組み」の設問
- Q. 製品・サービス等の発注の際に、取引先の健康経営の取り組みや労働安全衛生等の状況
- Q. サプライチェーンにおいて取引先の健康経営の支援(健康経営に係るノウハウの提供、健康増進施策の共同実施等)を行っていますか。
- Q. 社会全体の「健康」に関して、企業活動や商品・サービスを通じて人々の健康増進にどのように寄与していますか。
自社の健康課題・体制・PDCAについては2,000社が情報開示済み
人的資本の情報開示と同様の目的として、健康経営度調査の結果は企業名が分かる形で公開されています。つまり、投資家や取引先といった外部からの評価と、すでに働いている従業員の内部からの評価を得られるメリットがあるため、すでに2,000社の企業が賛同して情報開示されています。
参考:令和3年度健康経営度調査に基づく2,000社分の評価結果を公開しました
また、健康経営度調査の情報開示をする企業よりも広い範囲の企業が、自社のWEBサイトで積極的な情報開示がされています。
自社WEBサイトで情報開示される健康経営の取組例
- 経営トップによるメッセージ(経営方針と健康戦略の関連性)
- 健康経営の体制・責任者
- 健康経営の戦略
- 健康課題への取組
- 健康指標(数値として計測できるもの)
このようにすでに多くの企業がWEBサイトで情報開示している中で、数値計測できる健康指標をまとめてみました。その多くは健康経営度調査への回答のために必要な指標ではありますが、健康経営優良法人にも取り組んでいない企業であっても、今すぐに計測・開示できる9つの指標をピックアップしています。
離職率 | 労働災害による損失時間 | アブセンティーズム |
プレゼンティーズム | 上限を超える労働時間の発生率 | 喫煙者率 |
適正睡眠者率 | 健康診断の受診率 | ストレスチェックの受検率 |
次の章ではそれぞれの指標について、さらに深堀り解説していきます。
今すぐ情報開示できる9つの健康指標の計測方法
① 離職率(定着率)
人材戦略の成否を判断する項目のひとつが労働力(時間)の損失です。離職によって人材・ポスト自体が空席になってしまうことや、離職にはいたっていないものの予定していた生産性が発揮されていない状態を、労働力の損失と捉えられています。
労働力の損失としてもっとも重要視されている指標が離職率です。
ポジティブな指標として見せる際には定着率を開示することはありますが、ISO30414(人的資本に関する情報開示のガイドライン)をはじめとした国際的な任意開示基準では、定着率よりも離職率・離職数・離職コストといった損失に対してフォーカスが当たっています。
▼ 離職率の計算式
離職率(%) = ( 特定の期間における退職者の総数 / 特定の期間における従業員の平均総数 )x100
② 労働災害による損失時間
労働力の損失の中でも、「従業員の健康と安全」領域においては特に労働災害が必須の開示事項として求められています。
労働災害の発生件数・割合・死亡者数は、ISO30414・WEF(世界経済フォーラム)・SASB(サステナビリティ会計基準審査会)・GRI(グローバル・レポー ティング・イニシア ティブ)といったほぼすべての任意開示基準で開示が求められています。

日本国内での労働災害の発生状況を上記の図から見てみましょう。注目したい点は2点です。
- 休業4日以上の死傷者数が全業種で増加傾向にある
- 特に第三次産業での増加率・増加人数がもっとも多い
労働災害は製造業や建設業といった危険作業が伴う業態では強く意識されますが、小売・サービス・情報通信といった業態でも精神疾患をはじめとした労災申請・労災認定が増えていることが外部・内部からの評価につながっているのです。
▼ 労働災害による損失時間の計算式
ISO30414では、1時間あたりの労働災害発生率は非常に小さな数になるため、指標として扱いやすいように100万時間あたりの発生率(損失時間)として計算されます。
労働災害による損失時間(100万時間あたり)= (労働災害により働けなかった時間数 / 総従業員の所定労働時間数)x 1,000,000
③ アブセンティーズム・④ プレゼンティーズム
健康指標と言われると、一般的には従業員の健康状態を表した指標(血圧や肥満率など)を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、従業員の健康状態そのものを表す指標が、企業の健全性・持続可能性を強く反映するかどうかには疑問符がつきます。
そこで近年注目されはじめた健康指標が「健康起因による生産性損失」であるアブセンティーズムとプレゼンティーズムです。

アブセンティーズムとは、
疾病(病気や怪我)によって欠勤や休職したことにより生産性(時間や成果物)がゼロの状態です。
プレゼンティーズムとは、
勤務はしているものの、疾病によって100%の状態よりも生産性が低下している状態です。
厚生労働省のワーキンググループによる研究(3組織・3,429名を対象)においても、健康起因で企業が負担しなければならないコストの80%以上を占める項目が、アブセンティーズムとプレゼンティーズムになっているのです。

どちらの指標も計測方法が複数存在するのですが、ここでは今すぐ簡便な計測方法を一つずつご紹介します。
▼ アブセンティーズムの計測方法
実はアブセンティーズムの計測にはいくつもの課題があります。
単に休んだ日数の計測ではなく、病気や怪我による休みであることを把握しないといけないためです。欠勤や有給休暇ごとにその理由を把握することは実務の中で煩雑になりすぎるため、原因の把握しやすい休職のみをカウントする方式をおすすめします。
私傷病による休職日数(従業員平均) = 1年間の総休職日数 / 全従業員の所定労働日数
▼ プレゼンティーズムの計測方法
勤務しているものの健康起因(花粉症・腰痛など)により生産性が100%に満たない状態を計測する方法には、いくつもの独自方式が存在します。
そのうち、ライセンスフリー(研究目的・商用目的)の計測方式が東大一項目版です。名前の通り、1つの設問だけでプレゼンティーズムを計測できるため、ストレスチェックと同じタイミングで計測されたり、パルスサーベイとしても採用されています。
【設問】
病気やけががないときに発揮できる仕事の出来を100%として過去4週間の自身の仕事を評価してください。
【計算】
プレゼンティーイズム(%) = 100% - 回答値
⑤ 上限を超える労働時間の発生率
2019年、働き方改革により労働基準法が改正され、様々な企業で長時間労働を是正するための施策が行われています。

この法改正以前は、時間外労働の上限(月45時間・年360時間)は法律上明記されていませんでした。現在は法改正により時間外労働の上限が明記されたうえ、特別条項(いわゆる36協定)による例外についても上限が定められています。
一定の時間外労働が発生することは避けられないことです。一方で、月45時間の上限を超える労働者がどれくらいの割合で発生しているかは、法令遵守の観点はもちろんのこと、働きやすさを評価できる指標でもあります。
▼ 上限を超える労働時間の発生率
上限を超える労働時間の発生率(月間) = (時間外労働が月45時間を超えた年間の延べ人数 / 従業員数)x 100 / 12
⑥ 喫煙者率・⑦ 適正睡眠者率
従業員の健康状態そのものは、事業の健全性や持続可能性を強く反映するものではありません。しかし、健康状態の中でも社会的ニーズとして「企業が管理すべき健康領域」が広がってきていることも事実です。
それが喫煙と睡眠です。
職場における喫煙は、2018年健康増進法の改正により事業者に全面禁煙または適切な分煙が義務付けられました。
もちろん、この法改正や義務そのものは従業員自身の禁煙を促すものではありません。しかし、喫煙者によって分煙室の設置による費用負担やタバコ特有の匂いによるスメルハラスメントといった、職場環境にネガティブな影響があることから、喫煙者率は人的資本に関わる健康指標と考えられます。
睡眠については、十分な睡眠がとれていない場合にプレゼンティーズムの悪化や、疾病の発生率が高まることでアブセンティーズムの悪化につながります。また、睡眠障害(時間だけでなく、寝付きや寝起きも含む)の原因として業務時間や業務内容が影響している可能性は十分にあります。
喫煙と睡眠に関しては、働きやすさに直結する要素であるため特に求職者が知りたい事項でもあります。

▼ 喫煙者率と適正睡眠者率の計測方法
定期健康診断の問診として収集・集計されている。会社単位での数値は、
・健康保険組合から発行される「健康スコアリングレポート」
・協会けんぽの場合は「事業所カルテ」から取得可能。
⑧ 健康診断の受診率・⑨ストレスチェックの受検率
ここまで紹介した健康指標は、アウトカム指標と呼ばれる「健康施策によってどんな成果がでているか」を評価するものでした。一方で、プロセス指標と呼ばれる「健康施策を実施したか・十分に従業員が参加したか」を評価する指標もあります。
どのような健康施策を、誰を対象として実施するかについては、各企業でバラバラですので人的資本として一律に評価することは難しいものです。ただし、法定義務として定められている健康施策はすべての企業が対象になるため、プロセス指標として開示することに意味があります。
法定義務となっている主な健康施策は2つあり、健康診断とストレスチェックです。
いずれの検査も一定規模以上の企業においては、1年に1回の検査が企業に義務付けられている健康施策です。また検査を実施するだけでなく、従業員自身が検査を受けるために十分な支援ができているかどうかも人的資本としての評価ポイントになります。

▼ 健康診断の受診率
健康診断を実施する義務が企業にあると同様に、健康診断を受診する義務が従業員にもあります。そのため健康指標としては、健康診断の受診率100%であることが求められます。(休職中従業員を除く)
定期健康診断の受診率 = (健康診断の受診者数 / 健康診断の対象者数)x 100
▼ ストレスチェックの受検率
健康診断とは異なり、ストレスチェックでは従業員に受検する義務はありません。そのため受検率100%を求められることはありませんが、集団分析を適切に実施するためにも受検率80%以上が望ましい目標です。
ストレスチェックの受検率 = (ストレスチェックのの受検者数 / ストレスチェックの対象者数)x 100
人的資本は、すでに取り組んでいる事項から開示してみる
「人的資本の情報開示といわれても、まずは改善してからスタートしたい」
「離職率や時間外労働の数値を公開するなんてもってのほか」
人事担当の立場では、このように考えてしまっても仕方がないことかと思います。これまでは社外秘とされていた指標を、「人的資本経営に必要だから」の一声で開示するには心理的にも、業務工数的にも大きなハードルがあるはずです。
しかし、経営視点にたって企業の持続可能性を見てみると、良いことも悪いことも開示する「透明性」が重要である時代へとすでに変化しています。
そうは言っても、施策として取り組んでいない領域の数値を開示することは難しいところです。そこで、すでに法令遵守として毎年のように取り組んでおり、数値計測しやすい健康指標から情報開示してみはいかがでしょうか。

2022年、内閣官房から公表された『情報開示可視化指針』内でも
- 最初から完成度の高い人的資本の可視化を行うことは難しい
- まずは、「できるところから開示」
と示されているように、すでに取り組んでいる健康指標から開示してみましょう。健康経営に取り組んでいない企業であっても、具体的に、今すぐ、開示できる9個の健康指標を順番に解説していますので改めて本記事を読み直してみてください。