中小企業の担当者必見!健康経営に役立つ助成金制度11選を紹介

「健康経営を推進したくても資金面の不安や懸念を解消できず、一歩が踏み出せない」
「健康経営に取り組む際に何にどれくらい、費用がかかるのか不明なため取り組みづらい」
このようにお考えの方もいるのではないでしょうか。
国の助成金制度を利用すると、健康経営の推進にかかる費用負担を軽減できます。
そこで本記事では、以下の順で健康経営と助成金制度について解説します。
- 健康経営の取り組みとメリット
- 健康経営を推進していくための施策
- ジャンル別、健康経営に役立つ助成金制度
- 助成金の申請前に押さえておくポイント
助成金の申請方法についても簡単に触れています。ぜひ参考にしてください。
健康経営における助成金の活用
健康経営を推進していくために企業はどのような取り組みを実施すればよいのでしょうか。
また、国の助成金制度を利用した健康経営のメリットについて、以下の流れで解説します。
- 健康経営とは?
- 助成金を活用した健康経営の進め方
- 助成金の支給対象となる健康経営の取り組みとメリット
健康経営に助成金制度を活用する際の基礎知識です。
健康経営とは?
「健康経営」とは従業員の健康管理を経営視点でとらえ、労働環境の改善や業務効率化などを目指して実践的な取り組みを行うことです。
健康経営の考え方に基づいて設備・時間・人材を活用することを「健康投資」と呼びます。従業員の健康維持や向上を通して営業利益や企業価値の向上を達成する経営戦略の一つとして中小企業の取り組みが活発化しています。
健康経営には公的な認定制度があり、そのうちもっとも知名度が高く認定企業の多い認定制度が、経済産業省が顕彰する「健康経営優良法人」です。東京証券取引所と連携して上場企業のうち1業界1社だけが選ばれる「健康経営銘柄」がある一方で、地域における貢献(情報発信)を考慮した「中小規模法人部門」など企業規模を問わない認定制度であることが特徴です。
本記事では助成金の対象になる中小企業向けのノウハウが中心となります。中小企業の枠を超える企業(目安として従業員数100名以上)の場合は、健康経営優良法人における大規模法人部門となります。
大規模法人部門の上位500社に付与される「ホワイト500」について、以下の記事で詳しく解説していますので、ご一読ください。
助成金を活用した健康経営の進め方
認定制度以外にも、国は助成金制度を設けて企業の健康経営を推進しています。たとえば、労働者が50人未満の事業場における産業医の選任や、健康管理システムの導入を行ったりする場合、一定条件をクリアすれば助成金の申請が可能です。
自社が健康投資を模索するとき、使える助成金を確認することはとても大切です。助成金の申請先は都道府県労働局や労働者健康安全機構などで、種類によって管轄機関が異なります。
活用する助成金を決めたら、申請条件や必要書類、申請方法・申請期限・支給までの時間などを公式ホームページやリーフレットなどで確認してみてください。
助成金を活用しながら健康経営に取り組むメリット
健康経営に助成金を活用することは、予算を割けずなかなか一歩を踏み出せない企業にとって大きな魅力があります。従業員の健康管理に役立つ設備投資や教育費用を投資する際に助成金を活用することで、大きな前進が見込まれるでしょう。
健康経営に取り組むメリットは、以下の通り多岐にわたります。
- 健康経営の価値への理解が深まり、健康管理体制への予算・人員が強化される
- 従業員やその家族からの評価が上がり、人材定着率が改善する
- 人事・総務など担当部門の成果を、とくに他部署に対して数値で明示できる
- 健康で安全に働ける職場環境であると、求職者にアピールできる
- 金融機関によっては融資金利が優遇される
このように健康経営の推進は、結果的に企業活動そのものに好循環を生む可能性を秘めています。その施策が助成金の支給対象なら始めるハードルを大幅に低くできるのです。
とはいえ実際にこれから健康経営を始めるにあたって、どのような対策を講じればよいのでしょうか。次に、健康経営に必要な施策とそこにかかる費用の目安を解説します。
健康経営を推進していくための4つの施策とその費用
健康経営を始めるには、どのような方法があるのでしょうか。初めて取り組むため、何から始めたらよいのかわからない場合はコンサルティングサービスを活用したり、専門家に相談するとスムーズです。
そこで、健康経営を進めるために役立つ施策と費用について以下の順で紹介します。
- 福利厚生サービス
- 健康管理システム
- 研修サービス
- コンサルティングサービス
「健康経営を何からどう始めれば?」とお悩みの方は、ぜひご覧ください。
【施策1】福利厚生サービス
従業員やその家族(被扶養者)の生活を向上させることを目的に実施される取り組みのことを「福利厚生」といいます。
企業の福利厚生には、大きく分けて2種類あります。
- 社会保険料の事業主負担を始め法律で義務付けられた法定福利
- 交通費や社宅・育児支援など企業が任意で実施する法定外福利
法定外福利に関して、導入を検討していく過程で費用負担が想定以上に見込まれる場合もあります。そこで、企業が所属する健康保険組合や外部事業者による福利厚生サービスを利用する方法が一般的です。
外部の福利厚生サービスを活用する場合、その内容によって費用目安は変動します。
一般社団法人 日本経済団体連合(略称:経団連)の2019年度の調査結果資料によると、その中でも法定外福利費は1人当たり24,000円弱が全産業の平均となっています。
【施策2】健康管理システム
転職が活発になっている昨今で、入社・退職に伴う従業員情報を適切に抜け漏れなく管理することが非常に重要です。その中には健康情報も含まれており、取り扱う情報は多岐にわたることから効率的に管理することが必須となってきます。労働契約法5条には、企業の安全配慮義務について以下の記載があります。
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
労働契約法
過労や不適切な業務などで、従業員が健康を害することがないようにしなければなりません。そのため日本では、労働安全衛生法を中心に様々な業務と義務を企業に課しています。たとえば、定期健康診断の実施・ストレスチェック・産業医の選任などの実施義務から、ハイリスク者を抽出して面談や就業処置を行うなど。これらの業務にはまだまだ紙管理が残っており、煩雑になりやすいです。
このように多岐に渡る業務を一元管理し、業務効率化と労務リスクの軽減を両立するサービスが「健康管理システム」です。
【施策3】研修サービス
健康経営の取り組みについて理解を深めたい方におすすめの施策が、教育研修企業やコンサルティング会社などで提供されている研修サービスです。費用は回数・内容によって変わります。
健康経営に関する研修では、主に以下への理解を深めることができます。
- 国が進める健康経営の概要
- 従業員への健康配慮が大切な理由
- 業種別の具体的な対応策
- 取り組み事例
主に、国が進める健康経営の総括的な情報共有や取り組み例などの紹介を通して、理解を深めることが可能です。健康経営の最新情報や他社の取り組み・健康投資の成功事例などを知ることで、自社の取り組みの具体的な糸口を見出すことをおすすめします。
【施策4】コンサルティングサービス
自社の状況にあわせて専門家からコンサルティングサービスの提供を受けることもひとつの方法です。健康経営といっても、業種や社風、従業員の属性などによって重視すべき点や経営者・従業員を巻き込むためのアプローチ方法が変わるからです。費用は、回数や契約の形態などによって異なります。
たとえば、健康経営を推進していく過程で望ましい取り組みは、企業ごとに異なります。
- 既に健康経営優良法人を取得している企業なら、継続するための取り組み
- これから健康経営に取り組み始める企業なら、進め方や社内理解を得るための取り組み
- 健康経営に取り組んでみたものの、優良法人認定取得になかなか繋がらない場合の進め方
など、コンサルティングサービスを受けることで自社独自の課題に寄り添った精度の高い対応策を見つけやすくなります。
ここまで、健康経営に役立つ施策についてみてきました。健康経営を推進していく際に、最初に取り組むことが望ましいのは「健康経営優良法人」をはじめとする認定制度にチャレンジすることです。こうした認定制度は、取り組みとしてやるべき優先順位や体制の標準的な形を示してくれています。
これから公的な助成金を取得するにあたっても、同様の取り組みや体制の整備が必要になるため、むやみに書籍やセミナーで情報収集するよりも網羅的に実務をカバーできます。
それでは、健康経営に向けた具体的な取り組みや体制整備にかかる費用を削減できる助成金について、いくつかのジャンルに分けて制度を解説します。
【ジャンル別】健康経営に役立つ助成金11選
国・行政は企業の健康経営を推進するために、各種助成金制度で健康投資を支援しています。
健康経営に役立つ主な助成金制度を、以下のジャンル別に紹介します。
- システム活用支援
- 雇用創出支援
- 待遇改善・働き方支援
- 健康増進・メンタルヘルス
転職も活発になっている時代で人材に選ばれ続ける企業になるためには、快適な職場環境や福利厚生サービスの構築も求められています。そのための選択肢としての健康経営を実現するためにも、ぜひ助成金の利用を検討してみてください。
1. システム活用支援
システム導入後の活用や改善策を実践している場合にも、助成金を受給することができます。システム活用支援に関わる助成金を紹介します。
【助成金1】業務改善助成金
「業務改善助成金」は、複数ある申請コース毎に定められた引き上げ額以上に最低賃金を引き上げた場合、助成されるものです。
本助成金では最低賃金を引き上げるためには生産性の向上が必要との構想のもと、そのための設備投資などにかかった費用に対して特定の計算式によって算出された額が助成されます。
業務改善助成金の概要は以下の通りです。
目的 | 機器やシステムの導入費用の一部を負担して売上・業務効率化を支援 |
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申請先 | 都道府県労働局 |
申請できる事業者 | 100人以下の事業所で、拠点内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以下である場合 |
取り組み | ・生産性を向上する設備投資を行う ※生産性とは、企業の決算書類から算出した、労働者1人当たりの付加価値のこと ・人材育成研修や業務フロー改善のためのコンサルティングを受けるなど |
支給額 | 引き上げ額、対象の従業員数によって助成率が決定する(最大600万円) ※2022年基準、詳細はこちら |
システム活用以外にも、人材育成や研修受講など従業員の生産性向上に役立つ施策を実施した場合も費用の一部が助成されます。
2. 雇用創出支援
持続的な成長をするために重要な雇用の促進と、離職率を下げるための支援を行う助成金制度もあります。雇用創出支援につながる助成金を3つ紹介します。
【助成金2】職場定着支援助成金(雇用管理制度助成コース)
「職場定着支援助成金(雇用管理制度助成コース)」は、雇用管理制度(評価・メンター制度・処遇制度など)の導入等を助成します。従業員にとって「働きがい」や「働きやすさ」といった魅力ある職場づくりを行い、人材の定着や確保を図る際の取り組みを助成するための制度です。2018年4月から「人材確保等支援助成金」に統合されました。
雇用管理制度助成コースの概要は以下の通りです。
目的 | 企業における従業員の離職率を下げ、人材定着化を支援 |
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申請先 | 都道府県労働局もしくはハローワーク |
申請できる事業者 | 事業所に1名以上の従業員がいる企業 |
申請条件 | ・雇用管理制度を実施「評価・処遇制度」「研修制度」「健康づくり制度」「メンター制度」「短時間正社員制度(保育事業のみ)」 |
支給額 | 目標達成助成金:57万円 ※2022年基準、詳細はこちら |
雇用管理制度を実施し報告する際に各種書類が必要になるため、日頃から雇用管理体制を整えておくことが必要です。
【助成金3】小規模事業場産業医活動助成金
「小規模事業場産業医活動助成金」は、従業員50人未満の企業が従業員の健康管理のために産業医の要件を備えた医師等と契約し、職場訪問や健康診断、面談や指導などの産業医活動を受ける場合の費用を一部助成します。
小規模事業場産業医活動助成金の概要は以下の通りです。
目的とできること | 産業医による従業員の健康管理を支援 |
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申請先 | 独立行政法人労働者健康安全機構 |
申請できる事業者 | 従業員50人未満、労働保険適用(労災保険・雇用保険に加入)の企業 |
取り組み | ・産業医の要件を備えた医師と企業が「産業医活動に係る契約」を結ぶ ・申請は6か月の実施期間が終わった翌月から半年以内に行う |
支給額 | 2つのコースがあり1つ目の「産業医コース・保健師コース」に関して申請は、1事業所2回まで契約ごとに助成対象となり最大40万円 2つ目の「直接健康相談環境整備コース」は6ヶ月継続毎に申請となり最大20万円 ※2021年基準、詳細はこちら |
健康経営の観点からも、従業員の健康管理に従事する産業医によるサポートはとても有効です。ただ、予算に限りがあるため受付が早期終了することがあります。※2022年度は4月で受付終了
【助成金4】人材確保等支援助成金
厚生労働省が一般職業紹介状況として毎月公表している公共職業安定所(ハローワーク)における求人倍率は、2022年6月の集計結果によると売り手市場と定義をされている1.0倍を超えており企業が魅力ある雇用機会を創出することは、昨今の時代では必要不可欠です。
どの企業も人手不足が著しい状況下で魅力ある雇用機会の創出を図ることにより、人材の確保と定着を目的としている助成金が「人材確保等支援助成金」です。
本助成金では、以下のようにいくつかのコースがあります。
■人材確保等支援助成金のコース
- (a)雇用管理制度助成コース
- (b)介護福祉機器助成コース(令和3年に廃止)
- (c)中小企業団体助成コース
- (d)人事評価改善等助成コース
- (e)建設キャリアアップシステム等普及促進コース
- (f) 若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)
- (g)作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)
- (h)外国人労働者就労環境整備助成コース
- (i) テレワークコース
など、複数のコースがあるなかでたとえば「人材確保等支援助成金(中小企業団体助成コース)」は、企業の人材確保や従業員の職場定着を支援することを目的とした助成金です。
「人材確保等支援助成金(中小企業団体助成コース)」の概要は以下の通りです。
目的 | 事業協同組合など向けに、加入企業の従業員の職場定着や人材確保を支援 |
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申請先 | 都道府県労働局 |
申請できる事業者 | 受給資格認定された組合 |
取り組み | 安定的雇用確保や職場定着、モデル事業普及活動を目的とした事業を行う |
支給額 | 実施に要した費用の2/3の金額、限度額あり ※2022年基準、詳細はこちら |
組合が取り組む「中小企業労働環境向上事業」は、計画作成、調査、分析事業などのほかに雇用ガイドブックの作成と配布や交流会、モデル企業等見学会など幅広いです。
4. 待遇改善・働き方支援
従業員の待遇を改善し働き方を柔軟にしていくことも、健康経営では重要なポイントの一つになります。待遇改善や働き方支援に向けた助成金制度を3つ紹介します。
【助成金5】働き方改革推進支援助成金
「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」は、従業員の睡眠や生活に必要な時間を確保し、健康を維持し過労を防ぐための勤務間インターバル制度を推進します。ちなみに働き方改革推進支援助成金には、ほかに「労働時間短縮・年休促進支援コース」「労働時間適正管理推進コース」「団体推進コース」があります。
勤務間インターバル制度とは、1日の勤務終了後、次の勤務までの間に9時間以上の休息がとれるようにすることです。2019年から制度の導入が努力義務となっています。
働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)の概要は以下の通りです。
目的とできること | 勤務間インターバル制度に沿った労働の改善を支援 |
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申請先 | 都道府県労働局 |
申請できる事業者 | 労働者災害補償保険に加入の中小企業 |
申請条件 | ・勤務間インターバル制度を導入 ・助成対象になる取り組みを実施 |
支給額 | 新規導入:費用の3/4を助成 ・休息時間 9~11時間:~80万円/11時間~:~100万円 ※詳細はこちら |
助成金は、制度を反映した就業規則の改定や、労務管理者や従業員への教育の実施、また勤務管理の効率化のためのシステム導入などで申請が可能です。
また、業務効率化のためのソフトや設備、労務管理用の機器の導入なども支給対象です。ただし、スマートフォンやパソコンなどの購入費用は原則として除外されます。
【助成金6】治療と仕事の両立支援助成金(産業保健関係助成金)
「治療と仕事の両立支援助成金(産業保健関係助成金)」は、従業員が病気のために退職することなく仕事と治療を両立できるように支援する制度です。
治療と仕事の両立支援助成金(産業保健関係助成金)の概要は以下の通りです。
目的 | 従業員が仕事と治療を両立できるように支援する |
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申請先 | 独立行政法人労働者健康安全機構 |
申請できる事業者 | 労働者災害補償保険に加入の中小企業 |
取り組み | ・環境整備コース:両立支援コーディネーターを社内に配置し、休暇や勤務制度などの積極的な支援を新たに行う ・制度活用コース:外部の両立支援コーディネーターを活用し、従業員に対して両立支援プランを決めて実践する |
支給額 | 一律20万円 ※詳細はこちら |
参考:令和3年度版「治療と仕事の両立支援助成金」【環境整備コース】の手引
助成金には、環境整備コースと制度活用コースがあります。どちらにも疾病がある従業員の職場復帰や治療と業務の継続をサポートする「両立支援コーディネーター」が必要です。
【助成金7】人材確保等支援助成金(テレワークコース)
「人材確保等支援助成金(テレワークコース)」は、中小企業がテレワーク整備を進めるにあたって、インフラの導入や勤務管理などの効率化、研修などを通して人材採用や雇用を改善した際に費用の一部を支給する制度です。
なお、人材確保等支援助成金には既述のとおり、ほかに「雇用管理制度助成コース」「介護福祉機器助成コース」「中小企業団体助成コース」「人事評価改善等助成コース」「外国人労働者就労環境整備助成コース」と、建設分野の3つ「建設キャリアアップシステム等普及促進コース」「若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース」「作業員宿舎等設置助成コース」があります。
※介護福祉機器助成コースは令和3年度から機器導入助成を廃止。
人材確保等支援助成金(テレワークコース)の概要は以下の通りです。
目的 | 雇用の管理や人材確保に役立てるため、中小企業のテレワーク化を支援する |
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申請先 | 都道府県労働局 |
申請できる事業者 | 労働者災害補償保険に加入の中小企業 |
取り組み | ・就業規則や労働協約を整備 ・テレワーク実施計画を作成し実施、評価 ※テレワーク通信機器等の導入・運用、社員研修などが支給対象 |
支給額 | 機器等導入助成:対象経費の30%目標達成助成:対象経費の20% ※詳細はこちら |
具体的には、就業規則・労使協定を改善し、専門家によるコンサルティングなどのほか、テレワークに使用する機器やWeb会議に使うツール使用料など広く支援を受けることができます。
5. 健康増進・メンタルヘルス
従業員の健康増進やメンタルヘルスに関しても、中小企業が利用できる助成金制度は多いです。健康増進・メンタルヘルスに関する助成金を4つ紹介します。
【助成金8】受動喫煙防止対策助成金
「受動喫煙防止対策助成金」は、職場における喫煙に関する環境整備を推進する制度です。非喫煙者が喫煙者のために健康を害することがないように、喫煙室や分煙できる機器設備を導入し、より健康的な就業環境を実現することができます。
2018年7月に健康増進法の一部を改正する法律が成立したことで、取り組みを強化したい方におすすめの助成金です。
受動喫煙防止対策助成金の概要は以下の通りです。
目的 | 喫煙専用室の設置など受動喫煙防止に向けた施策を支援 |
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申請先 | 都道府県労働局 |
申請できる事業者 | すべての中小企業 |
取り組み | 既定を満たす喫煙所や指定たばこ用の喫煙場所を設置する |
支給額 | 分煙などにかかった設備費、機械装置費:上限100万円※助成率は費用の1/2、飲食店のみ2/3(2022年のみ) ※詳細はこちら |
副流煙による健康被害は、従業員を離職させるきっかけにもなりかねません。喫煙者が多い職場では喫煙スペースの設置が必須です。
【助成金9】事業場における労働者の健康保持増進計画助成金
「事業場における労働者の健康保持増進計画助成金」は、従業員の健康の増進とメンタルヘルスの向上を目指した取り組みを行った企業に対して支援する制度です。
「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」の改正により、事業者が継続的・計画的に健康保持増進対策を推進する産業保健関係助成金制度の一環として「事業場における労働者の健康保持増進計画助成金」を開始しました。
健康測定や栄養指導、また運動やメンタルヘルスケアに関わる指導及び研修などを実施することで助成金を受給できます。
産業保健関係助成金には、ほかに「ストレスチェック助成金」「職場環境改善計画助成金」「心の健康づくり計画助成金」「副業・兼業労働者の健康診断助成金」、また既にご紹介の「小規模事業場産業医活動助成金」「治療と仕事の両立支援助成金」があります。
事業場における労働者の健康保持増進計画助成金の概要は以下の通りです。
目的 | 中小企業における職場の健康保持増進を支援 |
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申請先 | 独立行政法人労働者健康安全機構 |
申請できる事業者 | 労働保険加入のすべての企業 |
取り組み | 健康測定、健康指導、メンタルヘルスケア、研修の実施 |
支給額 | 上限10万円 ※詳細はこちら |
従業員の心身の健康増進と管理は、健康経営企業として成長するためにも必要です。健康管理体制の構築の一環としてぜひ受給しておきたいものです。
【助成金10】職場環境改善計画助成金
「職場環境改善計画助成金」は、ストレスチェックの集団分析結果を活用し、職場環境の改善を行うための助成金です。
職場環境改善計画助成金の概要は以下の通りです。
目的 | 企業の職場環境の改善を促進 |
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申請先 | 独立行政法人労働者健康安全機構 |
申請できる事業者 | 労働保険加入のすべての企業 |
取り組み | ・ストレスチェックの集団分析を行い、医師や保健師、産業カウンセラーなどと契約する ・「職場環境改善計画」を作成、実施する |
支給額 | 上限10万円、1回限り支給 ※詳細はこちら |
職場環境改善計画助成金は、規則に沿って取り組むことで他の助成金よりも受け取りやすいです。申請時期を確認して取り組むことをおすすめします。
【助成金11】心の健康づくり計画助成金
「心の健康づくり計画助成金」は、事業主が産業保健総合支援センターのメンタルヘルス対策促進員の助言・支援に基づいて心の健康づくり計画を作成し、計画を踏まえメンタルヘルス対策を実施した場合に助成を受けることができる制度です。
従業員のメンタルヘルスケアを重点的に支援します。
心の健康づくり計画助成金の概要は以下の通りです。
目的 | 職場での従業員のメンタルヘルス対策を支援 |
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申請先 | 独立行政法人労働者健康安全機構 |
申請できる事業者 | 労働保険に加入のすべての企業 |
取り組み | ・メンタルヘルス対策促進員が職場を訪問、メンタルヘルスチェック、「心の健康づくり計画」を策定する ・計画を従業員に周知し、実施する |
支給額 | 一律10万円、1回限り支給 ※詳細はこちら |
従業員の健康管理の視点で、職場のメンタルヘルス対策は必要不可欠です。健康経営においても、従業員のモチベーション管理や心身の健康管理に有益な取り組みです。
ここまで、健康経営に活用できる主な助成金制度を紹介しました。とはいえ、実際に助成金を申請する前には、共通して気を付けておくべきことがあります。次に助成金の申請で押さえておくポイントを解説します。
健康経営を支援する助成金、申請前に押さえておく3つのポイント
従業員と企業の両者にとって、安定的な勤務環境は重要です。更に助成金制度の利用で費用負担を減らしながら従業員や職場環境をケアできれば、大きな助けになるでしょう。
どの助成金であっても申請する際には以下のポイントが重要になり注意が必要です。
- 就業規則の整備や従業員管理を徹底する
- 事業成長のための課題解決につながる施策を決め、使える助成金を探す
- 助成金の申請条件・時期・必要書類を確認する
助成金の申請を検討する際には、ぜひ参考にしてください。
【ポイント1】就業規則の整備や従業員管理を徹底する
助成金の申請では、就業規則などの整備が条件になっていることが多いです。
助成金の申請において就業規則関連で、よくあるのが
- 最新の法令に適合していなかった
- 現実と運用が異なっていた
- 最終更新が古く、最新ではなかった
など、内容不備により不受給となるケースです。
従業員の離職率を減少させ雇用の安定を図る前提として、人材を採用する受け皿となる企業の管理体制が問われているためです。
そのため、まずは労働基準法に従った就業規則や従業員管理を徹底する必要があります。健康経営企業として持続的事業成長を実現するために、法令を遵守し助成金を受給できる組織であるべきでしょう。
また、従業員の健康管理や福利厚生などを含め、バラバラになりがちなデータを一括管理できることも従業員のケアや業務効率化にも役立ちます。
【ポイント2】現状を分析し的確に課題を認識、その課題解決につながる施策を決め、使える助成金を探す
助成金制度を使うための施策ではなく、自社が健康経営企業として持続的事業成長を実現するために優先度も高く、業績への影響度も高いと考えられる課題に対する解決策を練ることが大切です。
たとえば、働き方改革で従業員が出社せずに自宅勤務にシフトした場合、テレワークのインフラ導入が必須です。
また、従業員の離職率に課題がある場合は、働きやすい職場環境を提供すべきでしょう。疾病による休職や産前・産後休業、家族のために介護休暇を取らなければならない場合でも、退職せずに続けられる環境づくりが必要になります。
【ポイント3】助成金の申請条件・時期を確認する
多くの助成金の申請には、決められた条件と申請時に必要な複数の関連書類、申請できる期間が決められています。そのため、助成金の申請を検討する際には、細部まで確認してみてください。
多くの助成金にはリーフレットがあり、相談専門ダイヤルが設置されている場合もあります。また、社会保険労務士などの専門家に相談することもひとつの方法です。
助成金受給の取り組みを決定したら、手続き方法を確認し、できるだけ早く動くことをおすすめします。助成金制度は、予算に限りがあるため、申込が殺到することによって早期締め切りになるケースも多いためです。
まとめ:助成金を有効活用し、健康経営の推進を進めよう
助成金制度を健康経営に活用すれば、費用を抑えた上で取り組むことができると見込めます。健康経営を未来への投資として取り組むことで、健康経営優良法人の取得や健康管理体制への予算・人員の強化、人材定着率の改善などにつながります。
本記事では、健康経営に活用できる以下の助成金制度を紹介しました。
■健康経営に活用できる助成金制度
- 業務改善助成金
- 職場定着支援助成金(雇用管理制度助成コース)
- 小規模事業場産業医活動助成金
- 人材確保等支援助成金(中小企業団体助成コース)
- 働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)
- 治療と仕事の両立支援助成金(産業保健関係助成金)
- 人材確保等支援助成金(テレワークコース)
- 受動喫煙防止対策助成金
- 事業場における労働者の健康保持増進計画助成金
- 職場環境改善計画助成金
- 心の健康づくり計画助成金
助成金の申請を検討中の方は、ぜひ参考にしてください。