産業医とスムーズな連絡・共有
2022年7月7日 更新 / 2021年5月28日 公開

人事労務向け / 産業医面談では何を話す?従業員から聞かれるよくある質問と回答を掲載

「会社から産業医面談を強制されて困っている」
「産業医面談って何を話せばいいかわからない」

こんな風に、本来は従業員の健康のために行われる産業医面談にネガティブな印象を持っている従業員は少なくありません。

そこで本記事では、人事労務向けに産業医面談の概要を法的な観点から解説。実施の対象となるパターン、具体的な面談内容に加えて、「産業医面談は断れるのか」「相談内容が上司に知られないか」など従業員から聞かれるよくある質問と回答も掲載しています。

産業医面談とは

正式には産業医が実施する面接指導のことであり、従業員と1対1で話す中で不調の原因や改善策を特定する、産業医業務のひとつです。

具体的な産業医面談のパターンは後述しますが、人事労務担当者や経営者の方に必ず知っていただきたい産業医面談の目的があります。

産業医面談の目的は、不調であったり健康リスクの高い従業員を治療することではありません。従業員の体調不良や病気・ケガが、仕事に起因するものかどうかを判断することです。そして仕事が原因である場合には、企業側に対して必要な措置を講ずることを指導するための業務なのです。

産業医面談の内容を、会社は把握できるのか?

よくある誤解のひとつに、「産業医面談は会社が指示する業務の一環なので、面談内容はすべて経営者や人事労務が把握できる」というものがあります。

確かに産業医は会社側と契約して面談などの業務にあたっているため、その業務内容はすべて把握できると考えてしまうかもしれません。しかし、面談の中で話された内容は従業員の「個人情報」にあたります。

勤怠不良の原因となっている病名であったり、ストレスの原因が家族の不幸であったりします。

そのため産業医面談の内容を会社側がすべて知ることはできません。一方で、不調や健康リスクの原因が業務に関係する場合には、会社側に改善を求める必要があります。その範囲で限定した情報は、産業医から経営者や人事労務担当に共有されます。

産業医面談が実施される3つのパターン

1.法律上定められた面談

労働安全衛生法では、産業医面談を実施しなければならない働き方をしている従業員が明記されています。

代表的な産業医面談は、ストレスチェックにおいて高ストレスと判定された従業員や、過重労働者(1ヶ月80時間以上の時間外労働)に該当する従業員に対して行われるものです。これらの基準に該当する従業員が産業医との面接指導を要望する場合、産業医面談を実施しなければならないことが法律で定められています。

2.企業が必要だと判断した面談

1のパターンでは「従業員が産業医面談を要望する場合」という条件が定められています。だからといって、従業員側から何も申告がないからと言って産業医面談を実施しないことは労務管理上のリスクがあります。

そのため多くの企業では、従業員本人から申告がなかったとしても「労務管理として必要だから」という理由で産業医面談をセッティングしています。たとえば、健康診断の再検査対象者や勤怠不良者に対しての産業医面談がこれにあたります。

3.本人が希望した面談

ハラスメントや身体の不調など、第三者に相談したい悩みがあるときは、従業員から産業医面談を希望することも可能です。

また企業としては、従業員本人が産業医面談を希望できる連絡窓口を整えたり、産業医側が面談対象者を知ることができる情報管理体制を築くように法律でも定められているのです。

以上、どのようなパターンであっても、産業医面談に対してネガティブなイメージを抱いてしまっている従業員は多くいます。もし産業医面談がスムーズに実施できないような体制のままでは、企業として労務リスクを抱えることにもなります。

「産業医面談は特別なことではありません。働きやすい職場を創るために必要な業務の一環です。」

という会社の雰囲気作りをしていくことが人事労務担当者に求められているのです。

産業医面談ではどんな会話で相談が進むのか?

これまで実際に産業医面談を受けたことはありますか?

おそらく本記事を読んでいる方でも、ハイリスク者の立場で産業医面談を受けたことがない方が多いかと思います。あるいは面談を受けたことはあるけど、大した話はしていないという経験の方もいるかと思います。

そこでどのような会話の流れで相談が進むのか、ひとつのケースをご紹介します。何気ない会話の中でも目的があることが分かるかと思います。

法律上定められた面談の場合

長時間労働者への産業医面談(システムエンジニアのAさん)

産業医:
Aさん、お疲れさまです。産業医の◯◯です。今日は長時間労働面接の対象者になりましたのでお越しいただきました。お忙しいにもかかわらずありがとうございます。先月の残業が多かったようですので、体調の確認をさせていただきたいと思っています。 (面談の理由・目的を最初に説明する)

従業員A:
こちらこそ、わざわざありがとうございます。でも、体調の確認と言われても、変わりないですし、元気ですよ。

産業医:
元気であればよいのですが・・・気付かないうちに体は疲れていて、健康を損なっていることおもありますからね。一つずつ確認させてください。先月は月の残業が90時間で、ここ数ヶ月は平均して80時間以上の残業時間になっていますが、忙しい業務が続いていたのですか? (客観的な指標で事前に確認)

従業員A:
そうですね。納期が近くてここ数ヶ月は忙しい毎日でした。

産業医:
たいへんでしたね。忙しい日は今後も続きそうですか?
(就業上の配慮を検討するため、今後の見通しを確認)

従業員A:
あと1ヶ月は少なくとも。その後もトラブル対応などが少し続きそうです。でも業界的にはこんなの普通ですよ。

産業医:
そうなんですね。ではいくつか体調確認をさせてください。健康診断の記録を確認しましたが、少し血圧が高いようですが、それ以外に何か既往歴はありますか?
(健康診断の結果から、持病や生活習慣病のリスクを確認しておく)

従業員A:
そうなんです、昔から少し高めで・・・。最近は少し太ったかなぁとも思います。

産業医:
その他、何か自覚症状はありませんか?

従業員A:
少し疲れたなと思うことと肩こりがひどくなった気がします。

産業医:
システムエンジニアの職業柄、肩こりや眼痛、頭痛なども起こりやすいですよね。よく健康相談室にも相談がありますよ。
(働き方の特性に合わせて共感する)

従業員A:
そうなんですよ。みんな最近疲れてて・・・

産業医:
忙しい中で3食ちゃんととれていますか?また何時頃にとられていますか?
(食欲の増減はメンタル不調の前兆や、体重の増加原因かもしれません)

従業員A:
朝は少しムカムカしてとれないことも・・・。昼はお弁当を作っていて、夜は帰宅後なのでだいたい22時〜23時ごろです。途中でおやつなどの間食をすることもあります。

産業医:
なるほど。少し夕飯が遅いことも体重が増えてきていることと関係があるかもしれませんね。本当に毎日お疲れさまです。

今回、残業が続いてしまった原因ですが、納期が近いということで仕事の量が多いのが主な原因でよかったですか?人間関係や仕事の内容が変わったなど他の要因はありませんか?
(長時間労働の原因は複数ありうるので確認します)

従業員A:
それはないです。人間関係には非常に恵まれています。

産業医:
それは良かったです。では今回の面談結果では、いますぐに就業制限は必要ないと判断しますが、もし今後体調が悪化するようでしたら、遠慮せずにご相談ください。また、この先も長時間労働が続いた場合、面談が入ると思います。その際は忙しいところ申し訳有りませんが、状況を確認させてください。
(面談結果と今後の見通しを伝えておく)

『産業医はじめの一歩』より一部引用

産業医面談の流れを読んでみていかがだったでしょうか。

長時間労働が原因の産業医面談ではありましたが、単に今の体調の確認をするだけでなく、健康診断や普段の生活をヒアリングすることによって、将来の健康リスクやメンタルヘルスの原因が業務起因であるかを自然な流れで確認しています。

面談後、人事労務担当は産業医と情報共有する

産業医は面接指導によって、社員の健康状態から就業判定を行うところまでがひとつの業務です。

今回のケースでは面談の結果、就業制限(残業禁止など)はありませんでした。しかし場合によっては産業医が「就業制限・配慮」や「要休業」と判断した場合には、企業側(人事労務担当)に意見を提出します。

特に長時間労働者・高ストレス者との面談では、面接指導の結果を記録に残し5年間保存することも法律で義務付けられています。

具体的にどのような就業制限をかけるかについては企業側が決定することです。個人情報に配慮しながら、面談内容について人事と産業医の間で情報共有を行い、適切な対処をしてください。

2020年11月より産業医面談もリモート可能に

感染症対策のためにテレワーク・在宅勤務が普及しましたね。そのため、対面で実施することが原則であった産業医面談についても、デジタル化・オンライン化の必要性が増してきました。

結果、2020年11月には「情報通信機器を用いた労働安全衛生法」の要件変更に伴い、これまで対面で実施することが原則とされていた産業医面談のリモート(オンライン)面談が可能となりました。

リモートで産業医面談を行なう場合にどのような環境が必要なのかについてもガイドラインが発表されていますので、以下に条件を引用しておきます。

  1. 産業医と従業員の「表情」「顔色」「声」「しぐさ」を互いに確認できる環境を整えること
  2. 情報漏洩や不正アクセスを防ぐためのセキュリティ対策を実施すること
  3. リモート面談で使用するパソコンやソフト、ツールを利用できる状態にしておくこと

産業医面談に関するQ&A

ここからは、産業医面談に関して従業員からよく聞かれる質問と回答を4つ見ていきましょう。


産業医の面談は強制ですか?

産業医による面談は強制ではありません。ただし、企業側に安全配慮義務(従業員が健康で安全に働けるように配慮する義務)があると同時に、従業員側にも自己保健義務(働き続ける健康状態をである義務)があります。

その意味で、産業医面談を受けることは従業員の義務でもあるので特別に拒否する理由がない限りは、面談を受けてください。


産業医に職場内のパワハラ・セクハラの相談はできるのか?

相談可能です。

2020年6月に制定されたパワハラ防止法により、企業には、ハラスメント対策として外部相談窓口を設置することが義務付けられました。
とはいえ、外部相談窓口が設置されていない企業は現状で多くあります。社内のパワハラやセクハラに悩む場合は、企業の産業医や、産業医をサポートする産業保健師へ相談しましょう。

もし、産業医面談を希望する際に人事担当者へ理由の申告が必要な場合は、別の理由(睡眠や健康に関する悩みなど)で面談の実施を希望することも可能です。


産業医との面談時間は勤務時間に含まれる?

原則として「勤務時間内」に実施されます。勤務時間外に実施する必要がある場合は残業代の支給など発生するケースがほとんどです。

法律で定められている面談や、企業が必要だと判断した面談は、勤務時間に含まれます。本人が希望した面談についても、「産業医に相談しやすい体制を整えることは企業の義務」という考え方から、勤務時間に含まれることが一般的です。
ただし、仕事とは関係ない病気の診断や治療は、そもそも産業医の対応範囲外となります。医療機関の受診が必要な場合、産業医から紹介状を書いてもらい、別途、医療機関を受診しましょう。


産業医面談にかかる費用は誰が費用する?

企業が負担します。

産業医面談で、従業員の不調が仕事原因なのかを判断したり、不調の経過を診たりすることは、産業医の仕事であり、企業の安全配慮義務の範囲内です。
そのため、ストレスチェックの高ストレス者面談において、事後フォローが長期間継続した場合などでも、産業医面談にかかる費用は原則として企業が負担します。


まとめ

従業員の健康と安全を守るために、人事労務担当と産業医が協力するもっとも基本的な業務が産業医面談です。

しかし、実際にどのような相談ができるのか?どんな会話が行われているのかについては、個人情報のハードルがあるためにブラックボックスになりがちな業務でもあります。

また従業員にとっても産業医面談自体にネガティブな印象をもっていたり、面談内容が上司に筒抜けで人事評価に影響するのではないかといった誤解をもってしまっていることもあります。

「産業医面談は特別なことではありません。働きやすい職場を創るために必要な業務の一環です。」
という会社の雰囲気作りをしていくことが、人事労務担当者に求められています。ほんの一例ですが本記事では会話の流れや、従業員からのよくある質問と回答をご紹介しています。改めて読み直していただき、産業医面談への理解を深めていただければ幸いです。

執筆・監修

  • Carely編集部
    この記事を書いた人
    Carely編集部
    「働くひとの健康を世界中に創る」を存在意義(パーパス)に掲げ、日々企業の現場で従業員の健康を守る担当者向けに、実務ノウハウを伝える。Carely編集部の中の人はマーケティング部所属。