健康診断の効率化
2022年7月25日 更新 / 2021年3月2日 公開

契約社員でも健康診断は必須?受診すべき2つの条件と4つの具体例を解説!

契約社員 健康診断 必須?

「健康診断の受診は、契約社員も義務?」
「健康診断の受診が必要になる、契約社員の条件はあるの?」
と悩むことはありませんか?

雇入れ時の健康診断は、労働安全衛生法第43条により受診が義務づけられています。そのため、企業の規模や従業員数に関わらず、条件を満たした労働者は受診が必要です。

しかし契約社員の場合、契約条件などによって対応が変わるため、雇入れ時の健康診断が必要か判断しづらいことも。仮に判断を誤ってしまうと、労働基準監督署に指摘されてしまう可能性もあるので注意が必要です。

そこで本記事では、

  • 健康診断の受診が必要になる契約社員の2つの条件
  • 契約社員の健康診断について悩みやすい4つの具体例

の流れで、契約社員の健康診断に関する情報をまとめてご紹介します。

「契約更新で1年以上の契約期間となった場合、定期健康診断とみなせる?」といった実施時の悩みについても記事後半でまとめているので、最後までご一読ください。

契約社員でも健康診断は受けさせた方がいいの?2つの条件を解説!

契約社員であったとしても、条件によっては健康診断の受診が必須となります。具体的に言うと、労働安全衛生法第66条により「常時使用する労働者」に対して、健康診断の実施が義務付けられています。

労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう~労働者の健康確保のために~(PDF)

「常時使用する労働者」とは、以下の2つの条件を満たす労働者のこと。

1.契約期間・無期契約労働者・有期契約で契約期間が1年以上の労働者・有期契約の更新により1年以上使用される予定のある(または使用されている)労働者
2.労働時間・1週間の労働時間が通常の労働者の所定労働時間の3/4以上の労働者

つまり、「社会保険に加入している労働者」が対象者です。とはいえ、「実際のところ、こんなケースはどうなるの……?」と悩むこともあるのではないでしょうか。

次に、契約社員の健康診断で悩みやすい4つの具体例をご紹介します。

【実践で役立つ】契約社員の健康診断で実際に悩みやすい4つの具体例とは?

契約社員の健康診断で実際に悩みやすい具体例は、以下の4つです。

  1. 契約期間は3ヶ月だが、自動更新してしまった場合
  2. 契約期間が半年だが、契約更新で1年期間が増えた場合
  3. 契約期間は半年だが、特殊な業務や深夜業などで働いている場合
  4. 契約期間が1年以上だが、ある一定の期間のみ3/4以上働いている場合

1つずつ詳しく見ていきましょう

【例1】契約期間は3ヶ月だが、自動更新してしまった場合

契約社員は雇用期間が決まっていますが、契約更新するケースもあるでしょう。このとき契約の更新を1度でも自動更新してしまうと、契約社員は正社員と同じように「無期契約労働者」とみなされてしまう可能性があります。

自動更新をしてしまうと、実質的に期間の定めのない契約、つまり正社員と同様の無期雇用であると判断されることになります。

契約社員であれば、契約期間さえ満了すれば辞めてもらって問題ないのでしょうか。(人事労務Q&A)|人事、採用、労務の情報ならエン人事のミカタ

「無期契約労働者」は「契約期間が1年以上の労働者」とみなされるため、契約社員であっても健康診断の受診が必要です。

とはいえ、実際のところ自社で契約する際に「そもそも契約更新について明確に決まっていない……」といったケースの場合、どうすべきか判断できない方もいるでしょう。

もしも契約更新について決まっていない場合は「契約社員に健康診断を受けさせるべきか労働基準監督署に確認すること」をおすすめします。

【例2】契約期間が半年だが、契約更新で1年期間が増えた場合

契約期間が半年の場合、雇用する際に健康診断の実施は必要ありません。しかし契約更新で契約期間が1年増える場合は、1年以上働くことになるため健康診断の受診が必要となります。

契約更新の期間に応じて、健康診断の実施を検討するとよいでしょう。

【例3】契約期間は半年だが、特殊な業務や深夜業などで働いている場合

特殊な業務の場合は、6ヶ月ごとに1回健康診断を行わなければなりません。そのため契約期間が半年であったとしても、以下の特殊な業務を行っている場合は、健康診断が必須です。

特殊な業務の例

  • 高熱物体・暑熱業務
  • 低温物体・寒冷業務
  • 有害放射線業務
  • 強烈な騒音を伴う業務
  • 所定の有害物を取り扱う業務

また、その他の健康診断(雇入れ時の健康診断など)についても、実施すべきか産業医に相談しましょう。

【例4】契約期間が1年以上だが、ある一定の期間のみ3/4以上働いている場合

契約期間が1年以上であれば、契約社員に健康診断を受診させる義務があります。

しかし1週間の労働時間が、通常の労働者の所定労働時間の3/4未満の場合は、「常時使用する労働者」にはみなされません。そのため、所定労働時間が通常の労働者の3/4未満の労働時間で契約した場合は、健康診断を実施しなくてもよいとされています。

しかし次のように、「特定の月のみ所定労働時間が通常の3/4を超えてしまうケース」もあるでしょう。

特定の月のみ所定労働時間が通常の3/4を超えてしまうケース

  • 契約時が閑散期だったため、繁忙期で所定労働時間3/4を超えてしまった
  • 徐々にお願いする仕事が増えたことで、所定労働時間3/4を超えてしまった

当然契約内容については変更が必要となりますが、健康診断の受診はどうなるのでしょうか。

こういった契約時の想定時間を超えた、または超える見込みが立った場合は、健康診断を実施すべきか労働基準監督署に相談・確認するのが確実です。所定労働時間を3/4超えたにもかかわらず健康診断の受診をしていないと、法律違反となってしまう可能性もあるので注意しましょう。

ここまで、契約社員の健康診断で悩みやすい具体例を4つご紹介しました。一度ここまでの情報をまとめます。

  1. 契約期間は3ヶ月だが、自動更新してしまった場合
    →無期契約労働者とみなされるため、健康診断の受診が必要

  2. 契約期間が半年だが、契約更新で1年期間が増えた場合
    →1年以上の契約となるため、健康診断の受診が必要

  3. 契約期間は半年だが、特殊な業務や深夜業などで働いている場合
    →特殊業務の場合は、6ヶ月以上の契約で健康診断の受診が必要

  4. 契約期間が1年以上だが、ある一定の期間のみ3/4以上働いている場合
    →労働基準監督署に相談の上、受診すべきか決定

上記を参考にすれば、契約社員の健康診断の受診について判断しやすくなるでしょう。しかし実際に健康診断を実施するとき、他にも悩みがでてくることも。

そこで次に、契約社員の健康診断でよくある質問と回答をお伝えします。

契約社員の健康診断でよくある3つの質問とは?回答とセットで解説!

契約社員の健康診断でよくある質問は、次の3つ。

  1. 契約更新で1年以上の契約期間となった場合、定期健康診断とみなせる?
  2. パートやバイトなど、時短勤務者でも健康診断は必要?
  3. 契約社員の健康診断は、会社負担となるの?

それぞれ詳しく見ていきましょう。

【質問1】契約更新で1年以上の契約期間となった場合、定期健康診断とみなせる?

契約更新によって1年以上の契約期間となった場合、契約社員に健康診断を受診させる必要があります。このとき迷うのが「雇用時の健康診断と、定期健康診断の両方を実施する必要があるのか?」といった点です。

たとえば、

  • 契約更新で1年を超えるのが3月
  • 企業の定期健康診断が5月

だった場合、3月の契約更新時に「雇入れ時の健康診断」をすれば、5月の「定期健康診断」の受診しなくても良いと思う人もいるかもしれません。

しかし、「どちらかだけを受ければ良い」と自己判断してしまうと、労働基準監督署に指摘されてしまう可能性も。こういった場合は、労働基準監督署に相談するのが確実です。

【質問2】パートやバイトなど、時短勤務者でも健康診断は必要?

パートやアルバイトなどの時短勤務者だとしても、条件に該当する場合は健康診断が必要です。最初にお伝えしましたが、健康診断の受診が必要なのは「常時使用する労働者」と法律で定められています。

先ほどお見せした、「常時使用する労働者」の2つの条件を振り返ってみましょう。

1.契約期間・無期契約労働者・有期契約で契約期間が1年以上の労働者・有期契約の更新により1年以上使用される予定のある(または使用されている)労働者
2.労働時間・1週間の労働時間が通常の労働者の所定労働時間の3/4以上の労働者

上記の条件には、雇用形態についての記載がありません。つまり2つの条件にあてはまる場合は、パートやアルバイトであっても健康診断の受診が必要となるのです。

パートの健康診断については、以下の記事で詳しく解説しています。さらに詳しく調べたい方は、ご一読ください。

【質問3】契約社員の健康診断は、会社負担となるの?

契約社員であったとしても、法定項目についての費用は会社負担が基本です。ただし、オプション検査や再検査など、契約社員と企業のどちらが負担すべきかわかりづらい費用もあります。

一方で、どちらが費用を負担するか明確にしていないと、労使間で揉める原因になる可能性も。そのため、会社負担の費用をしっかりと理解しておいたほうがよいでしょう。

健康診断の費用については、以下5つのケースによって会社負担すべきかが変わります。

会社で健康診断の費用負担となる5つのケース

  1. 定期健康診断
  2. 雇入れ時の健康診断
  3. 定期健康診断 + オプション検査
  4. 人間ドック
  5. 再検査

定期健康診断や雇入れ時の健康診断は、会社負担となるケースが多いです。一方でオプション検査、人間ドック、再検査などは個人負担となるケースが多いでしょう。

とはいえ、イレギュラーな対応が求められるケースもあるので、詳細については以下をご一読ください。

まとめ:契約社員であっても、契約期間や働く時間によって健康診断は必須!

今回は、契約社員が健康診断を受診すべき条件や、契約社員の健康診断で悩みやすい具体例などを解説しました。

契約社員であっても、以下2つの条件を満たす「常時使用する労働者」は、健康診断の受診が必要です。

1.契約期間・無期契約労働者・有期契約で契約期間が1年以上の労働者・有期契約の更新により1年以上使用される予定のある(または使用されている)労働者
2.労働時間・1週間の労働時間が通常の労働者の所定労働時間の3/4以上の労働者

もし条件を満たす契約社員に健康診断を受けさせなかった場合は、法律違反(労働安全衛生法に違反)となってしまいます。今回解説した4つの例を参考に、適切なタイミングで健康診断の受診を進めていきましょう。

執筆・監修

  • Carely編集部
    この記事を書いた人
    Carely編集部
    「働くひとの健康を世界中に創る」を存在意義(パーパス)に掲げ、日々企業の現場で従業員の健康を守る担当者向けに、実務ノウハウを伝える。Carely編集部の中の人はマーケティング部所属。