【文例あり】人事の休職対応とは?連絡の文例・タイミングを詳しく解説

メンタルヘルス不調で休職中の従業員がいるとき、人事は何をしたらよいのでしょうか?主治医、産業医、人事の役割と、休職中の従業員の体調に応じた連絡方法について解説します。
- 休職開始時の案内
- 休職中の経過確認
- 復職や退職に向けた確認
それぞれの従業員への連絡文面のフォーマットもありますので、企業ごとの就業規則や対応ルールに合わせて適宜編集し、活用いただけますと幸いです。
人事と産業医と主治医の役割
休職者の職場復帰支援は、人事と産業医(産業保健スタッフ)、主治医が役割分担しながら進めます。それぞれの休職中の対応における役割は以下の通りです。
担当者 | 役割 |
---|---|
人事 | ・就業規則や社内規定に準拠した対応による労務リスクの管理 ・労働条件や配置転換、異動等の調整 ・従業員との連絡 |
産業医(産業保健スタッフ) | ・産業医面談 ・職場復帰可能性の判断 |
主治医 | ・患者としての従業員の治療 ・職場復帰可能の判断・診断書の作成 |
人事の役割
人事の役割は、会社のルールに則り労務リスクのない形で適切な復職につなげることです。
私傷病による休職は法律では定められておらず、任意に企業が就業規則等で定めています。そのため、就業規則や休職関連の社内規程に書かれている休職開始事由や休職期間、給与等に準拠して手続きを進めて、対応の記録を残すよう徹底します。
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また、従業員との連絡や産業医、上司などとの調整も重要な役割です。従業員には定期的に連絡を取り、生活リズムが整ってきたか、病院に通っているかなどを聞きます。
従業員の状況や回収した資料は産業医に共有し、職場復帰に向けた判断の参考にします。職場復帰後は上司が業務の調整をすることになるため、業務内容、異動や配置転換、労働条件について等を確認し決定する必要もあります。
産業医の役割
産業医の役割は、産業医面談や主治医による診断書をもとに、医学的な立場と、従業員の業務や職場環境を主治医よりも詳しく理解している立場から、就業可能な状態かどうかを判断することです。就業上の配慮に関する事業者への意見します。
主治医の役割
主治医の役割は、患者としての従業員の治療と、職場復帰可能の判断(診断書の作成)です。
休職復職対応の5つの流れ
休職中は従業員の体調回復の段階に応じた適切な対応をしていくことが重要です。以下の5つの流れで休職復職対応の流れを解説します。
- 【STEP1】自宅で安静にする期間
- 【STEP2】徐々に体調が回復する期間
- 【STEP3】復職準備の開始期間
- 【STEP4】復職の手続き期間
- 【STEP5】復職と再休職を予防する期間
なお、休職前に必要な手続きや休職拒否への対応については、以下の記事をご覧ください。
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【STEP1】自宅で安静にする期間
休職に入った直後の従業員は「自宅安静が必要な状態」です。体調が不安定で、生活リズムもお昼まで起床できないなど乱れがちです。
休職者は基本的に「病状を改善→生活リズムを整える→仕事ができるか・復帰意欲を確認→復職可否判断」の経過をたどります。従業員の体調に合わせて、定期的に連絡を取り、安心して療養に専念してもらいながらも、会社への信頼や復職意欲を維持することが大切です。
休職に入るタイミングで必要な書類については、以下の記事を参考にしてください。
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【STEP2】徐々に体調が回復する期間
休職後1~2カ月目は日常生活が安定しておらず、体調の波がある期間です。この期間は心身の休息が最優先です。会社から従業員への連絡はプレッシャーとなるため最小限にしましょう。職場から一定の距離を置いて安心して自宅療養できるようにします。
人事としては、最低限の定期的な連絡で通院の有無や手続き面での不明点を確認します。迅速な返信は催促しないようにしましょう。
【STEP3】復職準備の開始期間
個人差はありますが、休職から3~5カ月経過すると体調がある程度回復し、日常生活を問題なく過ごせるようになります。この期間は復職に向けて、日中に外出して活動して夜に睡眠が取れるよう生活リズムを整えたり、復職に向けた具体的な時期や通勤訓練、復職時の業務内容などの準備をします。
人事としては定期的な連絡の際に職場復帰の希望を確認し始めます。復職の意思が確認できたら、復職するための目標と計画を立てていきます。このタイミングで産業医面談を実施し、復職するための課題を明確にしておくことが望ましいです。
会社によっては、就労移行支援(リワーク)施設を利用して復職前の訓練をしたり、試し出勤によって会社に毎日通勤する練習から始めることもあります。
【STEP4】復職の手続き期間
従業員の体調が回復し、復職の希望を希望する場合、復職の手続きと判断を進めます。日常生活は問題なかったとしても、会社との調整にはストレスを感じて疲れやすいこともあるので、慎重に進めて行きます。
人事が行うことは以下の3点です。
- 「生活記録表」「復職願」「主治医の復職可の診断書」を従業員から提出してもらう
- 産業医の復職面談を設定する
- 産業医の意見をもとに復職可否を判定する
生活記録表とは、1日の時間ごとに何をしていたかを記録する日記のようなもので、起床、日中の活動、就寝など生活リズムを把握するために使われます。復職の判断の参考材料として、必ず従業員に作成してもらい回収するようにしましょう。

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「就業可能な状態」は、次の5つがそろっていることです。
- 就業意欲がある
- 生活リズムが整っている
- 翌日までにその日の疲労が回復できる
- 通勤ができ業務が遂行できる
- 環境に適応できる
ポイント
主治医が復職可能の診断書を作成していても、実際には仕事ができるレベルではないことも多いです。そのため、産業医面談を通して就業意欲、生活リズム、仕事を復職後もできる状態かを確認していきます。
復職の際に必要な書類とその作り方は以下の記事を参考にしてください。
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【STEP5】復職と再休職を予防する期間
最後に復職とアフターフォローです。復職後2~8週間は体調が悪くなりやすい期間です。再休職にならないよう、人事と上司によるサポートを継続します。
人事としては、職場復帰支援プランを上司と共に作成し、従業員と共有します。例えば、以下のように復職後の日数に応じて徐々に業務内容を負荷の高いものにしていけるよう調整します。
復職後の日数 | 〜2週間 | 3週間〜2ヶ月 | 2ヶ月〜3ヶ月 | 3ヶ月〜4ヶ月 | 4ヶ月〜 |
---|---|---|---|---|---|
労働時間 | 4時間 | 6時間 | 8時間 | 所定労働時間 | 所定労働時間 |
業務内容 | 内勤 | 内勤 | 内勤 | 他の担当者と営業同行 | 1人で営業 |
復職後も定期的に上司、人事、産業医との面談を実施するようにしましょう。
休職中の従業員との連絡内容
次に休職中の従業員に対する連絡方法や連絡内容について解説します。休職中は定期的な連絡をすべきとよく言われるものの、実際にどのように連絡するかは悩むものです。
- 休職開始時の案内
- 休職中の経過観察
- 復職や退職に向けた確認
の3つに分けて連絡内容をご紹介します。下記を参考に、連絡用の文面のフォーマットを作成しておくと、送付する内容に迷うことがなくなりおすすめです。
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休職開始時の案内
休職を始める時には、従業員に以下の内容を伝えます。
- 休職可能な期間
- 休職中の会社との連絡方法
- 休職中に本人が実施すべき事項(生活リズム表の記入等)
- 休職中の過ごし方
- 休職中の給与や傷病手当金
- 休職開始〜休職中〜職場復帰までの大まかな流れ
- 休職時、復職時に必要な書類
こちらの連絡文面のフォーマットを各社の就業規則、休職復職関連規程などに合わせて適宜編集してご活用ください。
◯◯様
こんにちは。人事部の◯◯です。
◯◯様の休職・復職に関する手続きを担当させていただきます。
休職中は主治医の指示に従って十分に休養をとってください。
休職中は毎月、
・人事への状況の報告(体調が回復してきたら生活記録表も提出)
・傷病手当金の申請
をしていただくことになります。
私傷病による休職についての会社のルールは下記の通りです。
不明点や気になることはいつでも人事部とのこちらのチャット宛にご連絡ください。
最初は不安や焦りもあるかと思いますが、安心して復職に向けて療養できるよう人事部としてサポートさせていただきます。
【休職期間】
就業規則◯条に基づき、私傷病による休職期間は勤務年数ごとに定められています。
勤続1年未満:◯カ月
勤続1年以上5年未満:◯カ月
勤続5年以上10年未満:◯年
勤続10年以上:◯年◯カ月
【休職中の賃金】
就業規則◯条に基づき、休職中の賃金は、原則として無給となります。
【傷病手当金】
休職中で賃金が支払われない場合には、健康保険の「傷病手当金」を受給することができます。
支給申請書を記入し、医療機関で主治医から証明を得て、会社に提出してください。
毎月申請書を提出いただくことをお勧めします。
※休職期間中も、社会保険料の支払いは発生しますのでご注意ください。
【休職中の会社との連絡について】
毎月1回月末に、今の体調や復職意欲などについて率直なお気持ちをこちらのチャットでご連絡をお願いします。
ご連絡がない場合、こちらからお電話することもありますが、連絡が難しい場合は連絡できるタイミングでお返事いただければ問題ありません。
休職時とは異なる場所(実家等)で療養する場合には、その旨を事前にご連絡ください。
【休職中の過ごし方について】
休職中は仕事から離れて療養に専念してください。
休職中に業務をする、顧客に連絡をとるなどは一切禁止です。
所属部署の皆様から業務の連絡は届かないようご配慮いただきますが、
どうしても業務上の確認等が必要な場合に限り、上長と人事部のグループチャットを作成してご連絡させていただきます。
【生活記録表について】
体調が回復してきたら、主治医に相談の上「生活記録表」の記入をお願いします。
【復職について】
就業規則◯条に基づき、休職期間満了までに休職事由が消滅したときは、復職希望日の30日前までに「復職願」「主治医の診断書及び情報提供書」「生活記録表(1ヶ月分)」を提出いただきます。
その後、産業医面談を実施して、復職可否や復職の時期、業務内容を検討します。
原則として休職前の業務への復帰となりますが、状況に応じて他の業務に就くことになる可能性もあります。
※診断書の作成費用等は本人負担となりますのでご了承ください。
休職中の経過確認
休職中の従業員の体調や復職意向を確認するための定期連絡については、事務的な面や給与、復職に向けた流れなど不安に思っていることも多いです。丁寧に質問に回答したり、次回の連絡について案内することが大切です。
◯◯様
こんにちは。人事部の◯◯です。
ご連絡いただきありがとうございます。
薬を飲んで体調が回復し、午後の外出ができるようになってきたのですね。
いただいたご質問にそれぞれ回答いたします。
追加で気になる点は遠慮なくご連絡ください。
【ご質問への回答】
・〜〜〜
・〜〜〜
【来月に向けてお願いしたいこと】
・人事への状況の報告(生活記録表)
・傷病手当金の申請
ご確認よろしくお願いします。
なお、復職が近づくに連れて連絡の頻度は高めていくことが望ましいです。最初は毎月1回、次に2週間に1回、毎週1回と増やしていきます。
復職や退職に向けた確認
最後に、復職や退職に関するご案内です。体調が回復し、復職の意欲が確認できたら、復職の流れと手続きについて連絡します。
◯◯様
こんにちは。人事部の◯◯です。
復職に向けた準備を進めたいとのこと、承知いたしました。
以下が復職に関する手続きのご案内になります。
添付の資料を確認して、各種書類のご提出をお願いします。
ご不明点がありましたら、気軽にご相談ください。
【復職までの流れ】
・体調が回復してきたら主治医に相談の上、生活記録表を記入
・体調の回復と生活リズムの改善が確認できたら、主治医に復職可の「主治医の診断書及び情報提供書」の記入を依頼(※費用は本人負担)
・「復職願」「主治医診断書及び情報提供書」「生活記録表(1か月分)」を人事に提出
・産業医との復職面談を実施
・必要に応じて「試し出勤」の実施
・主治医の診断書、産業医の意見書、生活記録表、通勤訓練、試し出勤で確認された状況等をもとに復職の可否を会社が判断
・復職が可能と判断された場合、復職日と復職先を「復職通知」で従業員に通知
・復職後は3ヶ月程度毎月1回の産業医面談を実施
【復職の基準】
①傷病が治癒し休職の必要性がないこと
②生活リズムが整い日中に眠気を感じないこと(生活記録表を確認)
③通勤時間帯に1人で安全に通勤できること
④所定労働時間の勤務が可能な体力・集中力があること
【退職について】
休職期間の満了までに復職が難しいと会社が判断した場合、休職期間満了での自然退職となります。
復職した後に必要な対応については、以下の記事を参考にしてください。
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休職対応の3つのポイント
①休職中は同僚や上司からの連絡がこないようにする
休職中の従業員は、罪悪感や不安感、焦りを感じていることも多いです。
なるべく安心できるよう、「誰からどこで連絡するのか?」のルールは事前に決めておき、連絡窓口は一本化しておきましょう。その上で、上司や同僚から仕事に関連する連絡は原則しないように配慮いただくようにします。どうしても業務の都合上、休職者に連絡する必要がある時は、人事も閲覧できる場所で最低限の連絡に留めるようにしてもらいます。
企業によっては、休職中は療養に専念し仕事のことは頭から離れるよう、社用のパソコンやスマートフォンを休職期間中は回収して業務に使っていたメールアドレスや社内のチャットを閲覧できなくしているケースもあります。
②定期的な産業医面談(面接指導)を実施する
復職を支援する上では、再休職のリスクを下げる対応が求められます。そのために有効な方法の1つが定期的な産業医面談です。
中外製薬株式会社での事例として、定期的な産業医面談を含む以下の復職支援プログラムを導入した結果、復職1年後の出社継続率は54.2%から91.6%に改善したことが報告されています。
- 生活記録表を用いた復職判定
- 6 ヶ月間の段階的な復職プラン
- 定期的な産業医面談
- 全社復職プラン検討会

③復職可否の判断は慎重にする
就業が可能な状態に回復してきたら、復職の判断のための産業医面談を実施します。復職時期の約1カ月前に実施することが多いです。
産業医面談では「疾病の症状が回復し生活リズムが安定しているか」と、「就業可能かどうか」の2点を検討します。産業医の意見を基に、会社が復職の最終決定を行います。
判断材料として重要なことの1つは、従業員本人がメンタル不調の原因について考え、同じ状況になった時に再発しないよう今後の対応策を取り組み始めているかです。体調がもとに戻っていても、本人が病気への理解を十分にできていなかったり、病気に対する対応を主体的にできていないと、復職後に体調を崩し休職を繰り返してしまう原因になります。
復職時は就労移行支援(リワーク)施設、試し出勤を使ったり、最初は短い勤務時間で働くように調整したり、業務内容を負荷の低い内勤の作業から始めるなど、復職の判断は慎重に行うことが大切です。
さいごに
休職者との定期的な連絡は、会社側の労務リスク軽減だけではなく、休職者の経済的・将来的不安が軽減やスムーズな職場復帰に繋がります。その結果、再休職や離職の予防にも繋がるでしょう。
反対に、属人的な対応だったり、上司や職場の同僚から業務の連絡がきたりと、不適切な対応だと、再休職してしまったり、会社への信頼を落としてしまい、復職意欲が低下して離職してしまうこともあります。
休職者に過度なストレスにならないよう適切な頻度や連絡方法を心掛け、円滑な職場復帰を支援していきましょう。
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