健康管理の用語解説
2023年3月16日 更新 / 2023年3月14日 公開

健康経営とは?知っておくべきメリットや推進のポイントをご紹介

従業員の生産性向上や、労働力の確保の観点などから「健康経営」という経営手法が注目を集めています。実際に健康経営を取り入れようと考えている経営者のみなさんや、担当者の方も多いのではないでしょうか?

この記事では、健康経営とはなんなのか、という概念の説明から、実際の導入におけるポイントなどをご紹介していきます。

「健康経営」とは?

健康経営とは、「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」を指します。従業員の健康向上が企業の業績向上につながるという考え方で、従業員の健康を経営課題としてとらえ、その健康維持・増進に対して積極的に投資を行っていく経営手法です。

1990年代にアメリカのロバート・ローゼン博士が著書である「ヘルシーカンパニー」の中で提唱した経営方針で、従業員の健康を維持・増進することが結果的に企業の業績向上につながるという考え方からきています。

日本では、2004年に有志による健康経営研究会が発足。企業、健康保険組合、産業保健スタッフの3者による効果的な保健事業について話し合いの場を設けてきました。

2014年の日本再興戦略の閣議決定で健康経営の周知が明記されたことにより、健康経営は大きく注目を集めるようになっていきました。

近年、ますます健康経営が注目を集めている背景には、少子高齢化による労働力の不足や、働き方改革が大きく関わっています。

労働人口が減少していくことで、企業は労働力の確保が難しくなっている他、昨今の働き方改革の流れに乗り、労働者も企業を選ぶ意識が芽生えています。労働者に選ばれ、離職の防止や優秀な人材の確保を行うためには、健康経営という経営手法が必要なのです。

ウェルビーイング経営とは?

健康経営とともに話題に上る経営手法に「ウェルビーイング経営」があります。どちらも従業員の健康を重視する経営手法ですが、大きな違いとして、その視点があります。

健康経営が経営者視点に立ち、具体的な施策を立て、戦略的に実施されていくものであるのに対し、ウェルビーイングは「従業員が心身、社会的に健康な状態」であるという概念であり、従業員側の視点で語られるものになります。

つまり、同じ対応をするにしてもウェルビーイング経営は従業員視点、健康経営は経営者視点で企業の抱える健康課題を解決していくことになります。

詳細については以下の記事をご参考ください。

健康経営を導入するメリット

従業員の健康を担保することで、業績向上・生産性向上につながる健康経営。

このほかにも様々な導入のメリットが考えられます。

ここでは、健康経営を導入することで、企業の経営でどのようなメリットがあるのか、また、反対にデメリットはなんなのか、詳しく解説していきます。

1:生産性の向上

従業員がなんらかの体調不良を抱えている状態では、十分なパフォーマンスを発揮することはできません。健康経営を導入し、従業員の健康を管理し、維持・向上させていくことで、従業員は最高のパフォーマンスを発揮できるようになり、生産性を高めていくことができます。

2:企業イメージの向上

長時間労働など、従業員の健康状態は今や社会的な問題として捉えられています。そのため、従業員の健康を真剣に考える健康経営に取り組む企業は、対外的にも好意的に受け止められます。

3:労働力の確保

企業イメージが向上し、従業員が安心して働ける環境を整えることにより、新入社員の確保・離職率の低減という形で、企業は労働力を確保しやすくなります。

少子高齢化が進む現代において、優秀な人材を確保することは企業の成長に繋がります。

4:高い投資効果

上記に上げたメリットが見込まれる健康経営は、企業の成長に寄与する投資として、非常に費用対効果の優れた施策ということができます。また、後述する国の推進支援制度として、健康経営銘柄という制度があり、健康経営に取り組む企業として認められることで、資本が集まりやすくなるメリットもあります。

企業の成長において、様々なメリットが享受できる健康経営ですが、導入する上でデメリットもあります。最も大きなデメリットとしては、効果がわかりにくい点と言えるでしょう。

健康経営は従業員の健康が指標となるため、効果の検証が難しく、また効果が現れるまで長期間かかります。そのため、導入するためにはデータ収集のための環境設計や、従業員への周知が必要不可欠になります。

健康経営の推進支援制度

少子高齢化の進む日本にとって、労働力の確保は企業だけの問題ではなく、国を上げた大きな課題となっています。そのため、経済産業省では、健康経営を推進するための支援制度を用意しています。

1:健康経営優良法人認定制度

健康経営優良法人認定制度とは、健康経営に取り組む企業のうち、特に優良な健康経営を実践した企業を顕彰する制度のことです。

健康経営に取り組む優良な企業を見える化することで、従業員や求職者はもちろん、金融機関などからも社会的な評価を受けやすくできる環境を作ることを目的としています。

健康経営優良法人に認定されると、健康経営優良法人のロゴマークが使用可能となり、自治体や金融機関において、様々なインセンティブを獲得することができます。

ホワイト500

健康経営優良法人認定制度のうち、規定の従業員数を超える企業を対象とした大規模法人部門で、上位500社に認定される制度のことです。

ブライト500

ホワイト500と同じく、従業員数が少ない企業を対象とした中小規模法人部門の上位500社を認定する制度です。

2:健康経営銘柄

健康経営法人認定制度で用いられた調査結果に基づき、東京証券取引所に登録されている上場会社に対して、健康経営に取り組む優良な企業を認定する制度です。

健康経営銘柄に認定されることで、投資家から資本を集めやすいといったメリットがあります。

3:その他認定制度

健康経営優良法人以外にも、いわゆるホワイト企業に関連した認定制度は複数存在しています。ここでは代表的なものについて、ピックアップしてご紹介します。共通する部分も多いので、健康経営を目指すのであれば、合わせて抑えておくとよいでしょう。

  • 安全衛生優良企業
    高い労働安全衛生水準を維持・改善している企業を認定・公表する制度
  • なでしこ銘柄
    女性活躍推進に優れた取り組みをする企業を、投資家に紹介する制度 
  • えるぼし認定
    女性活躍推進に優れた取り組みをする企業を認定する制度。特に優秀な企業はプラチナえるぼし認定を受けることができる
  • くるみん認定
    次世代育成支援対策推進法に基づき、一定の基準を満たした企業を「子育てサポート企業」として認定する制度
  • ユースエール認定
    若者の採用・育成に積極的な中小企業を認定する制度

健康経営導入のポイント

健康経営には様々なメリットがあり、国としても推進を期待しているものであることがわかりました。

では、健康経営を導入するためには、どのような取り組みが必要になってくるのでしょうか?

大規模法人を対象とした健康経営優良企業の認定には、経産省が行っている健康経営度調査がもとになっており、健康調査票に回答する必要があります。中小規模法人の場合は回答の義務はありませんが、調査票を確認することで、健康経営を推進するために必要なことを理解することができます。

健康経営 調査票目次

令和3年度健康経営度調査【サンプル】| 経済産業省

健康経営度調査は基本情報の他、以下の4つの項目で構成されています。

  1. 経営理念・方針
  2. 組織体制
  3. 制度・施策実行
    ①従業員の健康課題の把握と必要な対策の検討
    ②健康経営の実践に向けた土台づくり
    ③従業員の心と体の健康づくりに関する具体的対策
  4. 評価・改善

それぞれ、どのような内容が求められているか、簡単にご紹介していきます。

1:経営理念・方針

経営理念・方針の項目では、健康経営に取り組む姿勢が企業としてきちんと明文化されているかどうかが求められます。そして、その方針を社内はもちろん、取引先や投資家など社外に発信していきます。

2:組織体制

組織体制では、健康経営を実践する上での経営層・現場の体制づくりを問われます。健康経営をリードする責任者や部署の配置、産業医や保健師など専門職の人数、従業員の周知徹底度合いなどが見られます。

3:制度・施策実行

制度・施策実行は3つの段階に分かれています。課題の把握と対策の立案、従業員教育など実行の土台作り、そして施策の実行です。どのような施策が必要になるかは、実際の項目で詳細をご確認ください。

4:評価・改善

健康経営では、施策を実行するだけではなく、改善に向けた効果検証が求められます。たとえばストレスチェックの結果で集団分析を行うなど、施策を振り返るための体制づくりも必要です。

これらに加えて、大前提として法令遵守・リスクマネジメントが求められます。
まずは法令に基づいた取り組みを行い、4つの項目を参考に健康経営を推進させていきましょう。
健康調査票の内容は毎年変更される可能性があるため、最新の健康調査票は以下よりご確認ください。

健康管理システムからはじめる健康経営

健康経営を実施するとなった場合、有効な施策を考えるためには自社で保有している従業員の健康データの活用が必要不可欠です。しかし、保有はしていても管理方法が杜撰だったり、活用方法がわからない状態では、うまく活用することは難しくなります。

そこで、健康経営のはじめの一手として、従業員の健康データを管理・蓄積し、可視化する健康管理システムの導入を検討する方法があります。

たとえば、iCAREが提供する健康管理システム「Carely」では、以下のようなメリットがあります。

1:すべての健康データを一元管理

Carelyは労働安全衛生法で定められている各種健康情報をすべてペーパレスで一元管理します。紙の健康診断結果のデータ化や勤怠システムとの連携にも対応しているので、担当者の負担が増えることはありません。また入退社・部署異動での従業員情報の変更も一括操作でカンタンです。

2:最新の健康情報をすべて一つの画面に集約

健康診断・ストレスチェックの結果・残業時間・意見書など、従業員に紐づく健康情報はすべて一つの画面(個人カルテ)に集約されるので、面談のために書類準備する時間が不要に。また各種基準値から面談候補者が自動抽出されるため、経験の浅い人事労務であってもハイリスク者を見逃すことなく産業医面談につなげます。

3:健康データを専門家が分析

Carelyは一元管理された健康データを専門家が分析することで、不調者が発生するあなたの会社特有の課題を発見します。だから、ハイリスク者への対処に加えて予防施策のPDCAを推進できます。

4:専門職によるコンサルティング

社風、管理体制、従業員の属性などによって企業が抱える健康課題は様々です。正解のない健康経営を継続するために、Carelyは専門職(保健師・心理カウンセラーなど)によるコンサルティングを提供しています。

このように、シンプルで使いやすい管理システムの提供はもちろん、データを保有していても分析手法や改善施策など、打ち手がわからない、というお悩みに対しても対応が可能です。

まとめ

今回は働き方改革などで注目を集める「健康経営」という経営手法について、その概念やメリット、実施するためのポイントについてご紹介しました。

冒頭でも伝えたとおり、昨今の社会情勢の中で、従業員の健康は企業に求められる大きな役割となりつつあり、ステークホルダーも健康経営の動きを重視しています。

今回ご紹介した内容を参考に、健康経営推進に向けて動き始めましょう。

また、施策を実行するためにも、社員の健康データを活用することが必要不可欠です。データを一元管理でき、効率的に運用できる健康管理システムを導入するなど、健康経営を推進する体制づくりをすることをおすすめします。

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執筆・監修

  • Carely編集部
    この記事を書いた人
    Carely編集部
    「働くひとの健康を世界中に創る」を存在意義(パーパス)に掲げ、日々企業の現場で従業員の健康を守る担当者向けに、実務ノウハウを伝える。Carely編集部の中の人はマーケティング部所属。