
健康を軸に経営陣・従業員と信頼関係を育む。Carely・保健師とゼロから築いた健康管理体制
東京都に本部、長野県長野市に本社を置き、ガレージをはじめ、ホースや太陽光パートナー、ナノバブルを使ったアクアソリューションなど11種類の事業を展開している株式会社カクイチ。創業135年の歴史ある企業でありながら、新しいことへのチャレンジ精神が全社に行き渡り、健康管理においてもユニークな施策を進めています。アナログな業務をDXしながら、専門家とどのような運用を構築しているのか、Carelyの活用状況と合わせて伺いました。
(取材時期:2022年12月)
- 従業員数
- 375名
- 業種業態
- 卸売・小売
- 導入理由
- 業務効率化
- 紙やエクセルでのデータ管理から脱したい
- 健康診断を効率化したい
- 健康経営を推進したい

アナログな管理方法の効率化と専門家の力で従業員フォローを強化
湯本様の健康管理の担当歴を教えてください。
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湯本さん:
私は総務人事部で経理をやっており、健康管理にメインで携わるようになったのが今年で2年目です。私の記憶では、Carely導入当初は本当に全てが初めてで、部長とiCAREさんとの打ち合わせで教えてもらいながら全部やった感じですね。今は健康診断周りなど基本業務は私一人で担当し、休職者の対応や健康施策などは上司である部長と相談しながら進めています。
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Carely編集部(以下、編集部):
導入前はどのように健康診断の管理をされていたのでしょうか。
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湯本さん:
弊社は営業拠点が全国に20拠点あり、人事機能は本社で一括管理しているのですが、1年を通してバラバラに各拠点から本社に紙の健診結果が届きます。以前は、その結果を見てExcelに全部の健診結果を手作業でまとめていたので、とてつもない時間と労力がかかっていました。再検査項目があった際は、上長に紙の案内を出して「再検査を受けさせてください」と連絡していました。
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編集部:
誰がいつ受診して、結果がいつ届くかわからない中で、届いたものから順に対応するという状態だったわけですね。
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湯本さん:
そうですね。営業所によっては大体いつ頃と決まってくる部分はありますが、受診期間は各自の都合で4月1日から翌3月31日までに設定しています。他の新しい業務も増える中で、年中一人で健康診断の対応をするのは業務効率が悪く、課題となっていました。
Carely運用スタートと同時にCarely産業医を選任。どんな狙いがあったのでしょうか。
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湯本さん:
弊社の従業員の平均年齢が47歳ということもあり、対策が必要になってくる年齢です。50名を超える拠点はないものの、再検査受診などのフォローをもっと強化すべく、産業医の選任を検討していました。健診結果や再検査項目について、専門知識のない人事が見るのと、専門家が見るのとでは違い、説得力も変わるはずですから。
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編集部:
確かに健康リスクが顕在化し、個人差も出てくる年齢です。従業員の方はどういった職種の方で、どんな働き方をされているのでしょうか。
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湯本さん:
職種的には営業職がほとんどで、客先に訪問したり工事現場で職人と打ち合わせしたりで事務所にいることが少なく、夜遅くまで現場業務もあるので、長時間労働が懸念されますね。男女比は男性75%、女性25%と男性の方が圧倒的に多いです。
業務工数が1/3に削減。人事・産業医・保健師でスムーズな連携を実現
1年ほど前からCarely専門職サポートもご利用いただいています。貴社担当保健師の立山とともに活用の成果を伺わせてください。
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湯本さん:
Carelyで健診結果をデータ化できたことによって、有所見者をフィルターかければ検索できるようになりました。前任者の情報も参考にすると、健診結果を手作業で管理していた時は1年を通して100時間くらいかかっていたものが、1/3程度に削減されました。Carelyに全て集約されるので、産業医面談前の情報連携や、上長への情報共有などもしやすくなり、少しずつ環境が整ってきています。
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立山:
本当ですね。月次の定例会の開催を提案させてもらったのですが、産業医、保健師一同が会して議題を議論でき、保健師としてできる施策や対応を検討しやすくなりました。
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湯本さん:
産業医と保健師の立山さん、私と上長の4名で行う会議なのですが、産業医が協力的なので快く受け入れていただいています。今までだと人事と立山さん、人事と産業医という連絡だったので、別々に実施すると共有できる情報に限りがありましたが、現在は会議で様々な視点から議論できるのが一番のメリットだと思います。
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立山:
データや社内の状況から気になる社員をキャッチし、産業医がフォローするまでもないが保健師で介入出来そうだといった相談や、就業判定や再検査の結果を最終的に産業医に確認してもらうまでの案内をどうスムーズに進めるか、「この人とは面談を組む、組まない」みたいな判断を一緒に相談しながら連携が取れていて、とても良いと感じています。

Carely保健師とゼロから健康管理体制を整備し、再検査受診率の3割改善を達成。
(Carely)保健師は湯本様や貴社とどんな関わり方をしていますか。
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湯本さん:
立山さんとは毎月の契約時間内の打ち合わせ時に課題に対して何をどういう順番で進めるのが良いか、効果的にするポイントを踏まえて相談にのってもらっています。例えば、再検査受診のフォローの方法などです。
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編集部:
再検査受診についてはどんな課題があったのでしょうか。
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湯本さん:
2020年にCarelyを導入したタイミングで過去2年分の健診結果もデータ化したのですが、全国平均と比べて非常に高い有所見率であることがわかりました。再検査を受けてない人も多かったので、まずは再検査を受けてもらうことをゴールにしました。何もフォローせずにもし倒れたりしてしまったら会社もリスクを負いますし、何より本人がアンハッピーなので。然るべき治療をするためにも、再検査を受けるべき理由を認識してもらえる状態にしたいなと考えていました。
そこから相談に至ったわけですね。再検査は企業ごとに基準がバラバラでどこまでフォローするか、違いがあります。相談した結果、現在どういったフォローの方法をとられていますか。
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湯本さん:
月次の定例会で、立山さんから再検査対象者の確認を経て、対象者に再検査の受診勧奨チャットを送ってもらいます。3回送っても返信がない方に対しては私から対象者の所属長へ連絡し、再検査に行くよう促してもらうまでがまず最初のステップ。定例会で産業医と確認し、必要であれば産業医面談の実施へ移ります。
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編集部:
上長を巻き込む方法も立山と相談して決めた運用なのでしょうか。
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湯本さん:
そうですね。一昨年までは個人情報配慮の観点もあって、所属長を挟まずに受診勧奨していました。紙管理の時代に、所属長経由で本社に紙の結果を送ってもらっていたのですが、特に女性社員から「見られるのが嫌だ」という意見が上がりました。それで立山さんに何かアイディアはないかと相談しました。
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立山:
そうですね。個人情報配慮に関しては「この人にチャットを送っているから声をかけてくださいね」というコミュニケーションであればは、結果を見なくても上長からフォローしやすいかな、と湯本様の話を聞いて提案しました。また会社の安全配慮義務の対応として「この人はどうしようか」と個別性が高い対応が増えると湯本様の手間がかかってしまうため、運用ルールを定めて周知しようと提案しました。それで、3回までは私(保健師)が連絡をして、それ以降は湯本様から上司に声をかけるという流れにしました。
産業医面談も、ハイリスク者※への面談は必ず実施することに決め、面談時に病院の受診情報が必要なので先に受診してもらっておく案内をルール化しました。産業医と湯本様と私とどうやったら対象の従業員の方にアクションしてもらいやすいか、というのを相談してきましたね。
※Carelyで抽出される面談候補者のうち、ハイリスクと判断される方
専門的で的確な答えがもらえる心強い存在。保健師は従業員との信頼関係にも好影響。
策定したルールの運用結果として、目標としていた再検査受診率を250%達成された(2023年1月時点)と伺いました。運用が変わったことにより、従業員側から何か反応はあったのでしょうか。
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湯本さん:
プライベートな情報を見られることへの抵抗は耳にしますが、それ以上に「産業医面談を受けてよかった」とか「相談にのってもらえるのがありがたい」という声があります。なかなか社内で相談できる人はいないですし、相談しにくい内容でもあるので。
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編集部:
湯本様から声をかけにいってらっしゃるのですか。
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湯本さん:
はい。最初のうちは特に気になって「お疲れ様でした」と声をかける時や、「チャット機能があるので相談あれば使ってください」と女性社員に案内していたので、その際に感想が返ってきました。立山さんと実施した健康教室でも、質問時間を用意していたのでそこで悩みを解消し「嬉しかった」という声がありました。
導入前のイメージと比較すると、Carely専門職サポート(による保健師)の評価はいかがでしょうか。
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湯本さん:
期待通り、むしろ期待以上ですね。相談した時に人事に寄り添って的確な解答をもらえるのが嬉しく、心強いですし、こちらがまとまっていないことも一緒に形にしてくださるので。豊富な経験を活かしてあらゆる提案をくださいます。
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編集部:
保健師がおらず、相談環境が全くない中で湯本様お一人で業務を進めなくてはならなかったとしたら、どんな状況になっていたと思いますか。
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湯本さん:
「再検査に行ってください」と言うしかない状況で終わってたと思いますね。そして、「何も知らないあなたから言われても・・・」と言う従業員の反応が予想できます。値についても、自覚症状がない方や結果に関心がない方には保健師の説明があることで説得力が違います。従業員との信頼関係の築き方にも影響したと思います。
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立山:
指摘をする役割って辛いですよね。私が企業内の保健師をしていた時も、立場に悩んだ経験がありました。ある意味第三者的な距離感も大切かなと。
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湯本さん:
上司からもよく言われるのが、「皆さんの健康を見てますよ」というアピールではないですが、その観点は大事にしています。とはいっても、一人で全員の健康状態を把握する孤独感はあって。保健師や産業医に協力してもらい、一緒に従業員の健康をフォローできることが何よりの安心感ですね。

従業員を巻き込んだ情報発信。全社のヘルスリテラシー向上施策を本格化。
湯本様と立山(保健師)の関係性や、相談環境も含めた事後措置の体制づくりができていることがわかりました。企業として他にどんな健康施策に取り組んでいますか。
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湯本さん:
全社でもいくつか施策があります。例えば「タスク」という施策は、3ヶ月に1回程度で30のテーマ・課題が出され、各拠点から1テーマ5人ほどの選出メンバーで目標に向かって取り組むというものです。健康に関するものだけではないものの、ここ数年のテーマには例えば「ダイエット」とか「断食道場」とかありますね。そこで体重が何kg落ちたとか、タバコを止められたとか、食生活が改善したということもあります。
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編集部:
面白い取り組みですね。それらのテーマはどのように決められているのですか。
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湯本さん:
従業員からテーマを募集し、最終的には社長や取締役が“タスク”を決めています。最近だとSlack(全社導入のチャットツール)で社員に向けてテーマの提案を呼びかけています。
そもそも経営陣の健康意識が高いように思うのですが、どんな方々なのでしょうか。貴社が健康経営に取り組むキッカケになったことなどあれば教えてください。例えば商工会議所のセミナーに参加された、など。
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湯本さん:
社長が今年60歳になるのですが、人との繋がりをとても大事にしており、そういった出会いから色々な情報を収集し、社内での試行や行動に繋がっているようです。セミナーなどにも積極的に参加されています。
あとは社長自身が健康意識が高く、体重が気になることでダイエットや身体のデトックスのために断食道場へ参加した経験もあるほどです。面白いことが好きと言いますか、面白く取り組む方ですね。 -
編集部:
伺ったような経営者の個性、楽しげな様子は貴社の採用ページなど見ても印象的でした。
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湯本さん:
以前から総務人事部には情報発信をもっと強化してほしいと要望されています。社長の意識や経営の方針で健康意識を全社であげていきたいというのが背景にあるので、最近はSlack上の工夫や健康教室などを実施しています。

健康教室はどういった経緯で開催が始まったのでしょうか。
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湯本さん:
Slackは経営層の発信だと反応が集まりますが、外回りの多い社員も多い中で、どうやって情報を見てもらうかはなかなか難しいです。産業医によるニュースレターを月1回展開していて、クイズなどを盛り込んで工夫はしていましたが、Slackに貼り付けて終わっていました。何か従業員とコミュニケーションしながらできる企画がないかと考えていた中で、立山さんへ相談しました。
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立山:
従業員参加型にするのはどうかと話をしました。Slackで健康教室を開催しようと思っていますよ、皆さんどんなことが知りたいですか、といったアンケートをとってはどうかと。
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湯本さん:
そうなんです。実際にそのアンケートを元に健康教室の内容を一緒に考えてくれました。健康教室が終わった後にまたアンケートを実施し、要望を次回に活かしています。KAKUICHI健康カフェ(健康教室)という名称で全社に開催を周知しています。
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立山:
テーマ設定の方法はアンケートで次回知りたいテーマを聞く項目を作り、回答者が多かったテーマを選んだり、季節性のトピックをあてて湯本様と相談したり。11月実施分は、冷えやむくみをテーマにしたらどうかと逆に湯本様から提案をもらいました。
あと、ポスターのような周知用の資料を作ってSlackで展開しています。参加できなかった方へは湯本様の方で録画のリンクを共有されてますね。保健だよりのような形で前回の内容を振り返っていて、そこに参加者の声などものせることで、少しでも興味をもってもらえるようにしていますね。 -
湯本さん:
健康教室ですと、Zoom越しではありますがよりリアルなコミュニケーションが取れる点がとても大きな変化です。
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立山:
アンケートでは基本的に「満足した」という回答が多く、「次回も参加したい」「いつも楽しみです」というお声を励みに頑張っています。
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湯本さん:
健康教室に関連して、「社歌体操」も立山さんの提案から実際に作ることになりました。弊社の歌を元にした体操です。社長とお話をする機会があった時に、健康管理の代表として提案をしたら、面白そうと反応をもらい実行へ。
タスクメンバーに選ばれたことをきっかけに、社長や取締役向けのタスクの報告会でオリジナル社歌体操を発表しました。 -
立山:
従業員様と健康教室がきっかけとなってポーズを作るように動けば面白いし、体を動かす時間はないけど月一回でも会社で流れてきたら体を動かすような、コミュニケーションアイテムとしても良さそうだなと。まさか、実際に話が進んで体操ができてしまった・・・というのは嬉しさと驚きがありました。

情報発信や健康施策が充実し始めてきたということで、最後に今後の意気込みをお聞きできますか。
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湯本さん:
目指しているところは変わらずですが、やはり再検査対象者を減らしたいので、面談フォローなどの基本の対応をしっかり行っていきたいです。あとは各健康施策の参加人数が思うように伸びないので、色々な方にもっと参加してもらえるような工夫を続けたいですね。例えば、各拠点に1〜2人の健康アンバサダーを選出し、人事だけでなく従業員を巻き込んで情報発信していけたらと考えています。
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立山:
楽しみな施策ですね。ぜひ実施できるように進めて行きましょう。
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編集部:
従業員の巻き込みや情報発信について悩まれている企業も多いので、ぜひまた成果をお聞かせください。本日はありがとうございました。
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